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ほのか  作者: ゆき
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芋焼酎

五月二五日、すっかり桜も散り、その木には緑が生い茂っていた。ソメイヨシノの踊りを見れるのも、

また一年後。まるで、その様は旅芸人とでも例えようか。

その最中、久し振りの連絡に心躍っていた。彼女の言葉からは、嘘でもなんでも優しく温かさを感じた。私の枯れた心は、腫れた惚れたの恋心と云おう。

彼女を一言で称するのであれば、悪魔だ。悪魔的女子。

そんな悪魔的女子は口癖で「いーこだね。」と云うのだが、私自身を飼いならしてるような感じが凄く伝わる。実際は、そんなこと彼女は微塵も考えてないのかもしれないが

、そう仮定しても私自身嫌いじゃない。

色恋沙汰というものは、こうも人を狂わせる。飼われていることに、幸せを感じている私はどうしたものか。

そもそも、何故に私は彼女に恋をしたのか。知らず知らずのうちに芽生えるのが恋というのは、よく云ったものだ。

思い出したくもない過去だが、それは何年か前の冬だ。私と彼女が芋の焼酎をお湯で割ったものを呑んでいた時のこと。

冷えた身体に、暖かいアルコールは気持ちが良く、二人して結構な量を飲み酔いに浸っていた。

当時、私には彼女がいたのだが、どうもチグハグと此処の所は、仲が良ろしくない倦怠期というものに陥っていたのだ。

彼女がいる最中に、他の女性と会い、ましてや酒を飲むなんて愚か者極まりないのだが、私は決して酔ったからといって手を出すような人間じゃない。

たまたま会う機会が在ったので、ついでに話を聞いて頂いたまでのこと。

本当に付き合っていた彼女を、愛していた。故に、心が焼けるように苦しかった。

如何せん、恥ずかしながら友達がいない為に、相談する人がいない。

唯一の友は仕事に追われ、話を聞く時間がないものばかり。

私の心は奈落へと落ちていく一方、だがしかし、その道中に一人の悪魔がいた。

一筋の光も蜘蛛の糸も、まさかこの悪魔から差し伸べられるものとは思いもしない、私はその悪魔を神の使いだと、天使だと懸けた。

神に従えるものであれば、懺悔しようではないかと、藁にもすがる思いで天使に話した。

酒のせいか、感情の起伏があり、私は溜めに溜めたものを全て、天使に告げた。

これまでに無い程に、溢れる涙は異常な量で、苦しみの鎖を解かれる様だった。

そして気付けば、私は誰かの膝の上で嗚咽し優しく、頭を撫でられ「いーこだね。」と宥められていた。

マリアにでも抱かれているのか、母親の様な温かさに身を委ね、心行くまで泣いた。

そして枯れる頃に、ふと我に返り飛び起きると、そこには悪魔的女子と称した彼女がいたのだ。

突然咽び泣くわ飛び起きるわの私に、何の動揺もせずに彼女は一言「大丈夫ー?」と優しい声で言った。

私は、直ぐにも彼女に謝罪をし、その後少しばかり話をして帰ることにした。

彼女とは、途中までは帰る方向が一緒なのだが、電車の中は、気まずさか一言も喋れなかった。

彼女の下車する駅に着き扉が開く。

彼女は「今日はありがとうね。また何かあったら相談して構わないのよ、それとさっきのは二人だけの秘密だね」と言いすぐさま下車した。

取り残された私は、電車の揺れに身を任せ暫く考えていた。

そのうちにも、それは確信へと変わった。

私は、あの悪魔的女子に恋をした。

こうして私の片思いは何年も続いているのだ。

あれからというもの、私は床に就き天井を眺めシミを数えるばかりです。

あっという間の幸せは、一時一切の夢で悲しことに現実であり、悪い夢だったと終わらせることさえ出来なかった。そして明日になれば、また同じ様に一日を迎える。

そんな当たり前のことを不幸せだと思っている、自業自得なのだが不幸なものは、不幸で不幸に変わらない。幸せだとは思えないだろう。

明日にでも死ぬであろう命は、今日も平和に怠惰で堕落し生きている。

労を味わずにして、その対価を得るなんていうのは、傲慢そのものである。

好きなことだけをし、やりたいようやれる人生というのは、快楽そのものであるが到底無理だ。

何を云いたいかというと、私は彼女に会いたい。ただそれだけだ。


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