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神秘のメダルと迷宮探索者  作者: 樹瑛斗
第5章 神秘の迷宮
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第35話 隠者の館

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 アルフ大陸の北部、中央からやや東に進んだところに広い森が広がっている。青々とした葉が生い茂った美しい森は緑葉の森と呼ばれ、その中には長耳系妖精族(エルフ)の里ラスガレンがある。

 更に東に進むと、年中霧が立ち込めている濃霧の森と呼ばれる地域がある。


 ラスガレンを出立したノルとファノ。濃霧の森を目の前に躊躇していた。



「数メートル先が見えないな」

「何も対策しないで進むのは危険ね」

「よし、戻ろう!」

「……戻って準備ね」



 ノル達は早々に決断する。ラスガレンを出立して3日後には、再びラスガレンを訪れるのであった。



「エレノアさん、こんにちは」

「あら?お早いお戻りね」



 そんなノル達を笑顔で迎えてくれるエレノアはまるで太陽のように暖かい。



「濃霧の森を見てきました。あれは、もう少し準備が必要かなと思って」

「無理せず、ゆっくりと行けば宜しいと思いますわ」



 と言う訳で、更に数日、エレノアの家にお世話になるノルとファノ。


 ラスガレン中を回って、『灯火の石』とロープを買い集めた。


 灯火の石は、ほんのりと辺りを照らす灯りがつく石である。これを一定距離に設置して行けば目印になるだろう。


 更にロープは迷い防止である。入口からロープを張って行けば、もし迷ったとしても直ぐに戻れるだろう。



「エレノアさん、今度こそ旅立ちますが……また、戻ってくるかもしれません」

「うふふ、いつでもお待ちしてますわね」



 こうして、更に3日後に再びラスガレンを出立するノルとファノ。



 ◇◇◇



「迷ったのかな……」

「……迷ってるっぽいね……」



 万全の準備をした筈のノル達であったが、いくら進んでも『隠者の館』に辿り着けない。そもそも、この濃霧の森の何処に『隠者の館』があるのか分からないのだ。



「ファノ、もう一回やってくれ」

「分かったわ」



 ファノは風の魔術を発動させる。攻撃的な魔術ではなく、広範囲に強い風を起こす魔術である。

 これによって、一時的に霧が吹き飛ばされ、周囲の視界が確保されるのだが……



「何も見えないな」

「……寒いし、体力が厳しいかも」



 濃霧の森は、気温が低い。常に霧が覆っており、徐々に体温が奪われてしまう。それによって、体力の減少も早くなるのだ。



「一旦、引き返すか」

「じゃあ、設置するから少し待って」



 そうして、ファノは転移陣を設置する。転移石は豊富に持っているので、いつでも帰還できる。


 そして、帰還先として設定しているのは……



「あら?ノルさん、ファノさん。お久しぶりね」

「一週間ぶりですね、エレノアさん。また戻ってきちゃいました」



 エレノアの家である。そこに帰還先の魔方陣を設置したのだから、当初から戻る気満々なのだ。



「……また、お世話になります」

「ファノさん、いつでも歓迎するわよ。今日も二人で温泉に入りましょ♪」



 そう。ラスガレンには温泉があるのだ。温泉を気に入ってしまったノルとファノ。特にファノはかなり気に入ってしまったため、いつでも戻れるようにしたのである。



(はぁ……混浴だったら、尚、良かったのに……)



「ノル、何か言った?」

「い、言ってないよ?気のせいじゃないか?」



 おそらく、ノルもファノも本気で『隠者の館』を目指していない。温泉に飽きるまでは、『隠者の館』が見付からなくても良いかなぁ、と心の何処かで思っているのであった。



 ◇◇◇



「……これは?」

「隠者の館なのかな?」



 本気で目指していなかったのに、目の前に『隠者の館』がある。偶然にも発見出来たのに、全く喜ばない二人。言葉には出さないが、これで温泉も終わりか、と考えているのであった。



「とりあえず、館の主に会いに行こうか」

「はぁ……そうね」



 乗り気ではない二人が館の外門をくぐり抜け玄関へとやってくる。



「誰の気配も感じないな」

「もしかして、留守?」



 とりあえず、玄関の呼鈴を鳴らしてみるノル。



「おぉぉ!ぞわぞわする!」

「ちょっ、これ!」

『どちら様でしょうか?』



 玄関をすり抜けて、ノルとファノを出迎えたのは、若いメイドの女性。おそらく、長耳系妖精族(エルフ)の血が入っていると思われる美しさ。黒を基調としたメイド服に白いエプロンをしている。のだが……その姿は透けていて、宙に浮いている。



「え、えっと、闇長耳系妖精族(ダークエルフ)のノルとファノと言います。

 こちらは、隠者の館で合ってますか?」

『はい、こちらが隠者の館でございます』



 良く聞けば、そのメイドの声に音はなく、直接頭に響いている。



(どどど、どうしよう?)

(どうするの?どうするの?)



 ノルもファノも普段は使えないテレパシーで、お互いに相談していた。



「ご、ご主人様はご在宅でしょうか?」

『あいにく、ご主人様はご不在ですが……どのようなご用件なのでしょう?』



 普通にコミュニケーションが取れていることに焦るノル。何故だか、ここで驚いては負けな気がして、なに食わぬ顔で接することを心掛ける。



「えっと、ご主人に用事というか……ここに普人族のダイジという者が訪ねて来なかったか知りたくて……」

『普人族!』



 途端にメイドの表情が険しくなる。



『失礼ですが、普人族とはどのようなご関係なのでしょうか?』



 有無をも言わせぬほどに、厳しい態度になるメイド。



「その普人族のダイジとは、因縁がありまして、その行方を追っています」



 ここで、返答を誤ればどうなるのかと恐怖にかられながらノルは応える。



『そうですか……私が知っている普人族と貴方の探している普人族が同じ人物なのか分かりませんが……』



 と、メイドは語り出す。


 数年前、突然やって来た普人族。何かの魔道具を使ってご主人である隠者と呼ばれる魔術師の魔術を封じ込めると、一方的に地属性の魔術で攻撃をしてきたのだ。

 隠者とメイドは抗うことも出来ずに殺された。そして、隠者の持っていたメダルを奪うと、その普人族は何処かへと去って行った。



『強襲を受けたのは館の東側からでございます。どうか、私どもの無念を晴らして頂けないでしょうか』



 そう、メイドは締め括った。それを聞いていたノルとファノは、胸が苦しくなる。メダル欲しさに罪もない人々を殺すような普人族。おそらく、ダイジなのであろう。やはり、許すまじき相手なのだろうか。



「情報、ありがとうございました。もし、貴女方を殺した犯人が、俺らの追うダイジなのだとすれば、貴女方の無念を晴らしてみせましょう」



 少し気が緩んでいたノルとファノは、ここで、メイドの無念を聞かされ、再び気を引き締めるのであった。


 ノル達は、館を出て東側を確認すると、なんと硬い土で舗装された道が遥か彼方まで延びているのを発見する。


 おそらく、その普人族の何者かは、この迷いの森である濃霧の森を真っ直ぐに突っ切ってきたのであろう。少々、強引なやり方だが、目的地が、分かっていれば、合理的な方法である。


 ノルとファノは覚悟を決めて、その土の道を辿るのであった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


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