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神秘のメダルと迷宮探索者  作者: 樹瑛斗
第5章 神秘の迷宮
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第33話 岩陸亀の縁

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 ノル達は、獣人族国家ノースグラスの首都グラスガンから東に向かって旅立った。途中までは馬車を乗り継ぎ2週間。


 相変わらず、小鬼(ゴブリン)の小集団やら盗賊が出てくるのだが、問題なく追い払い、無事に進んでいた。


 馬車の終着となる村からは歩きとなる。北に海岸線を眺めながらひたすら東に向かう。


 南北に伸びるドラゴシュヴァンツ山脈の北側の切れ端を徒歩で乗り越えることになる。

 稀に中位の魔獣である岩大猪(ロックボア)岩大蜥蜴(ロックリザード)が出現する地域であり、一般的な旅人は徒歩では行かない道のりである。北の海からの航路もあるのだが、そちらの方が時間が掛かるために、今回は徒歩を選んだのだ。



「この岩大猪(ロックボア)の肉、かなり旨いな!」

「うん、上等な牛肉にも劣らない」



 そろそろ干した肉にも飽きていたノルとファノにとっては、岩大猪(ロックボア)は良い獲物であった。


 皮は岩のように硬いのだが、皮を剥いだ中身は、臭みがなく、ほどよく脂がのり、ほどよく噛み応えのある肉である。その肉を、塩と胡椒を振り掛けて鉄串に刺して焼いただけ。


 料理とも呼べない、焼いただけの肉なのだが、干した肉とは格別な美味しさであった。


 二人では食べきれる量ではなかったため、残りは燻して燻製にする。


 山岳地帯を乗り越えると、妖精族の領土であるネライダ地方に入る。


 小さな森や湿地帯を乗り越えて平野に出ると街道が現れる。


 この辺りでは小鬼(ゴブリン)の姿もあまり見かけない。代わりに、低位の小魔獣が多くなってくる。

 角を持った兎、剃刀のような飛膜の蝙蝠、草に擬態して近寄る山猫などなどである。


 たまに見掛ける不自然な岩も要注意である。中位の魔獣である岩陸亀(ロックトータス)なのだ。近付いた小魔獣を捕食したり、旅人を襲ったりするのだ。


 そして、その平原でノル達は久し振りに人の姿を見掛ける。



「ノル、何してるか分かる?」

「おそらく、狩りなんじゃないかと思うが……」



 人影は二人。一匹の岩陸亀(ロックトータス)を狙っているのだが……



「あれ、石を投げてるのかしら?」

「間違いないよ。小石を投げてる。もう片方は長くて太い棒を突いてるね」



 ノル達は、岩陸亀(ロックトータス)の正しい狩り方を知らないが、小石や棒でどうにかなる相手ではないのではないかと思っている。


 すると、長くて太い棒を持っていた男が岩陸亀(ロックトータス)の腹の下に棒を突き入れる。


 石を投げていた女性も加勢して、棒の下に肩を当て、掛け声とともに岩陸亀(ロックトータス)をひっくり返したのだ。



「おおっ!」

「……やるわね」



 そんな倒し方もあるのか!と二人は感動していた。


 ところが、そこからがあまり良くない。


 ひっくり返した岩陸亀(ロックトータス)の腹を太くて長い棒で何度も叩くのだが、止めを刺しきれず、亀が暴れて再びひっくり返る。


 岩陸亀(ロックトータス)は、大きく口を開くと拳大の石を吐き飛ばす。


 石が当たってしまった男性はよろよろと倒れてしまう。女性は必死に男性を抱き起こして逃げようとするのだが、亀が猛烈に接近する。鈍足だが。



「不味いな、ファノ頼む」

「分かったわ」



 ファノが素早く組んだ氷の矢の魔術を放つ。岩陸亀(ロックトータス)には大して効かないが、牽制にはなる。



「おぅらぁっ!」



 素早く駆け寄ったノル。飛び上がり、落下の勢いを乗せて棍を甲羅に突き込む。


 岩の甲羅が砕け、ノルの棍が岩陸亀(ロックトータス)に突き刺さる。更に、亀の頭の周りに霜が降り、急激に熱を奪うと、亀頭が凍る。

 凍った亀頭をノルが飛び降りながら蹴飛ばすと粉々に砕け散った。


 着地したノルは女性を振り返り言葉を掛ける。



「大丈夫かい?」

「ありがと、何とか無事よ……って、闇長耳系妖精族(ダークエルフ)!」



 助けた女性は、おそらく生粋の長耳系妖精族(エルフ)。この種族は、闇長耳系妖精族(ダークエルフ)を極端に嫌う傾向がある。



「……助けなければ、良かったのかな?」



 ノルは困惑して、女性に問う。



「いや、助かったわ。本当にありがとう。それと、種族で呼んでしまって、ご免なさい」



 女性は、お礼を述べ、種族で呼んだことを謝罪する。素晴らしい心の持ち主なのだろう。とノルは思ったのだが……



「ノル、行きましょう」



 明らかに機嫌の悪いファノがノルの腕を引く。



「あぁ、そうだな。悪い、俺ら急いでるから、じゃ!」



 ノルはファノの心を読み取り、直ぐに立ち去ることにする。



「あぁ、ちょっと待って!本当に申し訳ないのですけど……」



 長耳系妖精族(エルフ)の女性はノル達を呼び止める。



「この岩陸亀(ロックトータス)は貰っても良いのですか?」



 なんだ、そんなことかとノルは答える。



「元々、君らの獲物だったのだし、俺らは要らないから」



 だが、長耳系妖精族(エルフ)の女性は、まだ、もじもじと言いたそうなことがあるようだった。



「このゴンジなんですけど……」



 女性は傍らで気絶している男を指し示す。男はノルと同じくらいの背丈であるが、少々横幅がある。それと比べて女性はファノよりも小柄で細身であった。



「死んではないよな。気絶しているだけなら、もうじき起きるんじゃないか?」

「そうかも……しれないですが……」



 ノルはファノを見る。ファノは、仕方ないわね、という仕草で頷く。



「この男を運ぶのは困難だから、起きるまで一緒にいようか?」

「助かります、本当に申し訳ないです」



 頭を下げる女性。そこには、闇長耳系妖精族(ダークエルフ)への忌避感はないようであった。



「俺はノル。こっちはファノだ。よろしく」

「よろしくです。私はララノア、こっちは大地系妖精族(ノーム)のゴンジ。二人とも駆け出し冒険者です」



 こうして、ノル達は新たに二人を加えて旅をするのであった。



 ◇◇◇



 岩陸亀(ロックトータス)を仕留めた場所から徒歩で半日進んだところに、大きな都市が見えてくる。妖精族国家の中で唯一、多種の妖精族が暮らすオーフェンという国である。



「本当にお世話になりました」

「お世話になりますた」



 解体した岩陸亀(ロックトータス)を大きな木艝(きぞり)に乗せて運んでいたララノアとゴンジは、ノルとファノに頭を下げる。



「気にしなくて良いよ。俺らも仲間が増えて楽しかったよ」

「……うん、気にしなくて良い」



 次元鞄にいくらか余裕があるノルが、亀を鞄に入れて運ぼうかと提案したのを断った二人は、根っからの真面目で誠実な人間なのだ。

 四人となった道中も楽しく話をし、ファノもいくらか打ち解けたようであった。



「オラ達は、こいつを冒険者協会(ギルド)に届げるから、ここでお別れだども」

「お礼をしたいので、その後にでもお食事しませんか?」



 ノルとファノは顔を見合わせる。



「お礼はしなくて良いけど、食事はしようか。何処かお薦めの店はある?」

「はい!えーと、大通りを進んで右手にある……」



 ララノアは嬉しそうに店の場所を説明すると、また後でと元気よく手を振って冒険者協会(ギルド)へ向かうのであった。



「素直で元気で……羨ましいな」

「……それに若いしね」



 そろそろ20代の後半も終わりが見えてきたノルとファノにとっては、まだ10代の彼女らは眩しく見える。



「俺らも食料調達して店に向かうか」

「そうね」



 二人は、どこかグラスガンに似た雰囲気のオーフェンの街を手を繋いで歩いていく。



 ◇◇◇



 ノルとファノは、このオーフェンの街で情報を集めながら、2週間を過ごす。その間、ララノアとゴンジの冒険者活動にも少し付き合いつつ、久し振りの都市での生活を満喫していた。


 そして集まった情報は……


 ダイジの情報は、3~5年くらい前に、それらしき普人族の男を見たとの情報あり。ただし、かなり前であり、あやふやな情報であった。


 緑葉の森についての情報は、長耳系妖精族(エルフ)の里であり、道案内がなければ辿り着くのが困難だという情報があった。


『隠者のメダル』についての情報は、特になかった。代わりに北の海を渡ったヴァルファノス国の北に現れた幻獣がどうやらメダルを持っているのではないかという噂を聞いた。



「と言うことなんだが、道案内を頼めないかな?勿論、冒険者協会(ギルド)を通して君らへの指名依頼にさせて貰おうと思っている」

「もちろん!案内するわ!私の故郷ですもの!」



 ノルは、緑葉の森の長耳系妖精族(エルフ)の里までの道案内をララノアとゴンジに頼んだのだ。ララノアは飛び上がる勢いで承諾する。


 ララノアにとっては、ノルとファノは命の恩人であり、何とかお礼をしたいと考えていたのだ。


 しかし、もうすぐ出立すると聞いていたので、沈んでいたところ。そこに、道案内の依頼なのだ。本当に飛び上がって喜んでしまう。



「徒歩で1ヶ月も掛かると聞いたが、大丈夫かい?」

「大丈夫です!冒険者協会(ギルド)で指名依頼にしてくれれば、ちゃんと貢献ポイントも入りますし!」

「んだ。問題なすだ!」



 こうして、ノル達は、再び四人での旅に出るのであった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


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