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神秘のメダルと迷宮探索者  作者: 樹瑛斗
第4章 暗躍する影
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第29話 急転再び

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 黄昏迷宮20階層を攻略したノル、ファノ、ココア、ネロの四人は悩んでいた。


 おそらく、この迷宮には続きがあるのではないか。ただ、ノル達の能力では、その続きが見つけられない。


 黄昏迷宮を攻略し始めてから既に一年が経過している。ノルとファノはそろそろノースグラスの神造迷宮攻略に戻りたい気持ちもある。


 ココア、ネロは11階層以降、殆どノル達に頼りきりだったことも気にしている。



「俺らは、ここで引き上げることにするよ」

「はい。私達ももっと技能を磨いて、自分達の力でもう一度20階層を目指してみようと思います」



 両者の意見は一致している。残る問題は……



「迷宮管理局に報告するかどうかだな……」



 ココア、ネロだけで探索し、20階層へ辿り着いたとしても、その下へは進めない。であれば、ここで迷宮管理局に報告するのも手ではないか。



「私達が隠していても、遅からずこの情報が漏れる可能性もありますし……」



 ココアとしても、報告することに前向きである。


 と言うことで、レパードを伴い、迷宮管理局のお偉いさんと会うことになったノル達。



「それは真か?」

「信じられなければ、直ぐに調査隊を組んで確認してくれ」



 迷宮管理局の局長へ強く出るレパード。ノル達だけでは、こうはいかない。連れてきて良かったと心底思うのであった。


 その後、1週間で確認が取られ、局長との話し合いの結果、更に1週間後に11階層が発見されたと公表することとなった。


 そして、それは、レパード、ココア、ネロの三人が見つけたことにする。報酬はノルとファノも貰うが、新発見の名誉は黒豹系獣人族の公爵家に譲ることにした。公爵家が絡んでいれば、誰も文句が言えないからだ。


 そのまま、ノルとファノは立ち去ろうとしたのだが、そこへ事件が飛び込んできた。



 ◇◇◇



「レパード、もう一回言ってくれ」



 ノルは、思わず聞き返す。



「普人族国家アラガントの都市デキャミラが滅んだ」



 レパードは、静かな口調でその事実を繰り返す。ノルは数秒掛けてレパードの言葉を理解する。俄には信じられないことである。領主である英雄グリードとともに命を賭して守り抜いた都市デキャミラが……



「……妖魔軍か何かなのか?」

「分からない。女王からはデキャミラが滅んでいたと聞かされた」



 そして、再び、レパードの元へ女王ビアンカ・ラパン・サウスヴァルトから調査の指揮を取って欲しいと依頼が舞い込んだのだ。


 迷宮管理局の件でレパードに借りが出来たノルは、レパードとともに再び、サウスヴァルトへと赴くこととなった。



「はぁ……また暫く、新居での新婚生活はお預けね……」



 ファノがため息とともに呟く。ノルはそれを聞いて、いつまで新居と呼べるのだろうと疑問に思うが口には出さない。


 そして、直ぐに高速馬車でレパードとともに隣国サウスヴァルトへ向かうノルとファノ。



 ◇◇◇



 サウスヴァルトの謁見の間にて、ノル達は女王ビアンカ・ラパン・サウスヴァルトと再会する。



「再びお力を貸していただきたいのです」



 女王ビアンカ・ラパン・サウスヴァルトの話では、デキャミラとの連絡が途絶え、様子を見に行かせた者からの報告で、デキャミラが滅んでいたと聞かされたようだ。

 女王の願いとしては、デキャミラの現状をもっと詳しく調査して欲しいということ。そして、出来れば滅んだ理由も突き止めて欲しいということ。



「デキャミラを救った英雄である、このレイラさんと一緒に行けば、ぞんざいな扱いは受けないでしょう、と思っていたのですが、ノルさんとファノさんが居ればその問題はなさそうですね」



 そして女王からは、黒犬系獣人族のレイラを紹介される。


 おそらく、女王はレパードだけでなく、他の者へも調査を指示している筈である。隣国の公爵家の長男であるレパードに依頼するのは、もしかするとその能力をかっているだけではないのかもしれない。


 女王と話し、レパード、ノル、ファノとレイラを加えた四人でデキャミラへと向かうこととなった。



 ◇◇◇



 デキャミラへと辿り着くノル一行。



「滅んだと言う割りには、見た目はそのままだな」



 デキャミラの西門から近付くノル達。レパードの感想通り、見た目はそのままであり、とても滅んでいるようには見えなかった。



「レパード……見た目に騙されるなよ」



 そこで、ノルが忠告する。



「生者の気配は感じられないが……何者かがうようよいるぜ」



 ノルの言葉をそのまま受けとれば、生者ではない何かが居る、と言うことである。



「……つまり?」

「腐敗臭がすげぇよ。おそらく、不死者(アンデッド)



 デキャミラに近付くにつれ、不死者の濃厚な臭いが漂ってくる。それは、直ぐにレパードにも感じられるようになる。



「あれは、オーク、ホブゴブリン、ゴブリン……それと、街の住人か……」



 レパードの発言は一部間違っている。どれも()がつくのだ。


 オークなどの妖魔は、殆ど原型をとどめておらず、腐り崩れた容姿をしている。

 街の住人についても、何処かに怪我を負っていて、虚ろな目をし、目的もなく彷徨いている。とても生者には見えない。



食屍鬼(グール)だな……」



 レパードは悔しそうに、それらをそう判断する。

 デキャミラは滅んだだけでなく、死者の街へと変わり果てていたのだ。


 その後、ノル達は、南、東、北と街と距離を開けてぐるりと回る。


 何処から見ても死者の街であることは変わらなかった。しかし、北門が崩れていたので、妖魔どもがそこから侵入したのか、食屍鬼(グール)と成り果てた妖魔どもが侵入したのか……どちらかであろうと推測する。



「原因調査は後回しだ。おそらく、他の者からも同様の報告がなされていると思うが。まずは報告し、今後の方針を女王に伺おう」



 レパードやノル達は、直ぐに獣人国家サウスヴァルトへと引き返すのであった。



 ◇◇◇



「やはり……死者の街に変わり果てているのですね……」



 女王ビアンカ・ラパン・サウスヴァルトは、レパードからの報告に静かに呟く。



「今後、どうすれば……」



 思案する女王。



「女王陛下、私から具申させていただきとうございます」

「レパード様、どうぞ、おっしゃってください」



 レパードが女王へ進言した内容は……


 死者の街と化した都市デキャミラが普人族国家アラガントの領地であること。


 これ以上の調査は普人族国家との関係を悪化させる可能性もあること。


 しかし、ここサウスヴァルトに近い都市での出来事であり、原因も不明。もしかすると、サウスヴァルトへも影響が出る可能性もあること。



「……ですので、アラガントへ使者を送り、現状を伝えるとともに、協力を申し出てはいかがでしょうか」

「確かに、レパード様のおっしゃる通りでございますね」



 そして、女王は普人族国家アラガントへと使者を送ることとした。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


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