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神秘のメダルと迷宮探索者  作者: 樹瑛斗
第4章 暗躍する影
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第27話 黄昏迷宮

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 アルフ大陸西部のテイーア地方。その最も西に位置する獣人族国家トワイライトメーア。ノルとファノは高速馬車で半月をかけて、その国へと遊びに行く。

 レパードと別れ、目的の人を訪ねるノル達。



「お久し振りです」

「お待ちしてました」



 ノル達を待ち受けていたのはよく知る二人。



「ココアにネロ!君らも関係者だったのか?」



 ノル達を待って居たのは、黒豹系獣人族の少女ココアと黒猫系獣人族の少年ネロであった。



「私はレパード兄様の妹です」

「僕はレパード様の従兄弟ですよ」



 二人は従兄弟であり、メーア公爵家の関係者であった。



「二人とも迷宮探索を?」

「はい。私の我儘にネロも付き合ってくれるそうで」



 ノルの問いに申し訳なさそうな顔をして答えるココア。



「そうじゃないって。僕もノルのように成りたかったから」



 中々に恥ずかしいことを堂々と宣言するネロ。



「ま、まぁ、レパードにも頼まれたし、ちょっくら付き合うよ」



 離れていた期間のお互いの話をしながら迷宮管理局へと向かう。



「ところで、二人は迷宮に潜るのは初めて?」

「いえ、1階層だけ二人で探索しました」

「そうか。じゃあまずは計画書だな。書いてみて」



 ノルは迷宮探索計画書をココアに書かせ、それをチェックする。



「探索階層は1階層のみ。期間は1日か。探索に必要なものは準備出来てる?」

「はい。一応、確認して貰っても宜しいですか?」



 ココアは準備した物をしまっている次元鞄をノルに渡す。まだ、迷宮1階層しか潜ってない者が持つには高価な次元鞄である。



「転移石は例え1階層だけの探索だとしても持っていた方が良いな。何があるか分からないし」

「はい、準備します」



 ノルの助言に素直を頷くココア。



「水は魔道具があるから良いとして、食料は、倍の量を用意しよう。それと、薬関連だけど、もっと安いのも用意しよう。一々高価な薬を使ってたら、探索する度に赤字になるから」

「はい」



 ココアはノルの言う通りに準備を済ませる。ネロは、経験豊富なノルの助言に大きく頷き、メモを取る。



「他に何かアドバイスはありますか?」

「他は……潜ってから教えるよ」

「えっ、一緒に潜って貰えるんですか?」

「うん。ここの迷宮に興味あるしね」

「ありがとうございます!」



 目を輝かせて喜ぶココア。ネロも同様に目を輝かせている。



 そして黄昏迷宮の1階層へと踏み入る……



「まずは索敵。周囲を確認すること。あと、二人の役割分担も。一人が地図を見ている時は、もう一人は周囲の警戒を怠らないこと」

「「はい!」」



 元々、ココアもネロも索敵や隠密行動の技能はそこそこあるので、この辺りは役割分担さえはっきりさせておけば心配ない。



「次に地図だけど……折角だから、自作しようか?」

「「えっ?!」」



 ココア、ネロは既に迷宮管理局で全10階層分の地図を購入済みである。それを使わずに自作すると言っているノルの真意が分からない。



「黄昏迷宮って、全10階層で、全ての階層が探索済みなんだよね?」

「そうです」

「じゃあ、君らの目標は10階層なの?」

「はい……」



 ノルの問いに答えるココアは少し不安になってくる。



「将来、もしかしたら、他の迷宮に挑戦するかもしれない。しかも、人類が誰も足を踏み入れたことのない階層に行くかもしれないよね?」

「もしかしたら、そうなるかも知れません……」

「その時、地図が作れなかったらどうするんだい?」

「……確かに」



 ノルの説明を受け、ココアとネロは、新しい紙に1階層の地図を描いていく。


 黄昏迷宮の1階層は、平凡な平原構造であった。短めの草、長めの草、疎らな木、なだらかな高低のある地面、ぽつんと聳える岩。目印となるのは木や岩であるが、似たものが多く、地図作成に難儀する二人。


 ノルは、地図を描くコツを二人に教えながら、半日かけて迷宮入口の周辺を回る。


 たまに鼠や兎の迷宮守護兵(ガーディアン)と遭遇するが、戦闘は全く問題がなかった。



「ココア、そろそろ潜って半日になる。真っ直ぐ迷宮の入口に向かえば2、3時間で着くけど、どうする?」



 ココアとしては、この辺りは既に探索したことのある場所なので、少々物足りない。このまま帰還するよりも、もっと探索を続けたい気持ちが強かった。



「もう少し……探索を続けたいです」

「それなら、休息を取ろうか。流石に野営はしなくて良いけど、腰をおろして体を休めよう。食事や水も今のうちに取ろう」

「わかりました」



 ココアは、ここまで歩きっぱなしだったのを思い出す。まだ疲れは感じていないが、更に半日探索するとなると、休みを取っておいた方が良いことに気付く。



「もう少し長い期間の探索なら、3、4時間置きには長めの休息を取るようにしようか。疲れて注意不足で奇襲を受けることもあるから。疲れを残さないように」

「「はい!」」



 ココアとネロは今回の迷宮探索がとても素晴らしく感じていた。知らないことが多く、とても新鮮であった。


 休息後、少し範囲を広げて探索を進める。地図を描きながらなので、思うほど探索範囲は広がらない。



「ここまでで、この1階層の20分の1程度かな?」



 丸1日の探索を終え、迷宮管理局へと戻ってきたココアとネロへ、ノルが話す。



「大体それぐらいだと思います」



 ネロが答え、それにココアも頷く。



「もう少し効率的に探索範囲を広げる方法もあるけど、入口に近い所から地図を埋めていくのは基本だから。とりあえず1階層はこの方法で地図を作りきろう」

「「はい!」」



 ココアもネロも元気に返事をする。



「今日の探索で感じたこととか、二人で振り返ってみて。あと、地上で何日過ごして迷宮に何日潜るかとかは……ココア、君が考えてみようか」



 ノルとファノはココア達を残して立ち去る。今回の探索を終えて、ココアとネロはお互いに話したいことがあるだろう。そういった話し合いの機会を与えたところで、老兵はさるのだ。などと、格好をつけるノルだった。



「私、老兵になった覚えはないけど?」



 ファノが怒り気味に突っ込む。



「あれ?声に出てた?」

「出てたし!」



 ◇◇◇



 ココア達は探索に費やす日数を徐々に増やしていく。だいたい2週間迷宮に潜って、1週間を地上で過ごす。そのようなサイクルで探索を続けていく。

 約2週間で各階層を踏破できるので、各階層撃破と休息を交互に入れているのだ。


 そして、迷宮を探索し始めてから約半年。遂に、最深層である10階層へと到達した。


 10階層では、ノルは口を出さず、ココアとネロが主導で探索をする。


 10階層を隈無く探索し終え、怪しい地点も全て再調査し、いよいよ迷宮守護者(ガーディアンマスター)へと挑戦することとなった。



「俺も迷宮管理者(ガーディアンマスター)との戦闘は初めてだから、気を引き締めていこう」

「「はい!」」



 前衛をノルとネロ、中衛をココア、後衛をファノという布陣で臨む。


 迷宮守護者(ガーディアンマスター)は、階層守護者(フロアマスター)の上位に位置する存在だ。9階層までの階層守護者(フロアマスター)とは比べ物にならない強さであるはず。

 相手は身の丈3メートルもある牛頭大鬼(ミノタウロス)系の造魔。身体はおそらく鋼鉄。武器は2メートルを超える巨大な斧。


 ノルは初手から全力で行く。


『銀狼の覇気』と『闇金円舞』を発動する。その身を白銀と闇が包み、怪しく光る。


 鋭い踏み込みから、得意の中段突きを放つ。


 一筋の閃光となったノルは、迷宮守護者(ガーディアンマスター)を突き抜けていく。


 巨大な鋼鉄の牛頭大鬼(ミノタウロス)は、腹部に大きな穴を開けられ、ゆっくりと仰向けに倒れた。



「……」

「……」

「……」

「……」



 静寂がこの場を包む。誰もが言葉を発さず、状況を見守る。



「……?」

「……?」

「これ、動きませんよ?」

「凄いです!ノルさん、一撃です!」



 あれ、手応え無さすぎじゃないか?と疑問を浮かべるノルとファノ。ノルが凄すぎると浮かれるネロとココア。



「これで終わりなのか?」



 ノルの心配をよそに、鋼鉄の牛頭大鬼(ミノタウロス)は動くことはなかった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


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