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神秘のメダルと迷宮探索者  作者: 樹瑛斗
第4章 暗躍する影
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第26話 招待状

 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 片道1ヶ月の旅行気分でサウスヴァルトへ旅立ったノルとファノ。

 結局は、獣人族国家サウスヴァルトと普人族国家アラガントの争いにまで発展し、更に魔人なども絡んだ壮大な事件に巻き込まれていた。

 気付けば、獣人族国家ノースグラスを旅立ってから既に半年が経っていた。



「やっと新居で暮らせるな!」

「……半年でこの家に居たの1週間もなかったしね……」

「……なんか、すまん」

「……ノルのせいじゃ、ないから」



 ノースグラスの首都グラスガンの自宅へと帰り着いたノルとファノ。これからは、ゆっくり、まったりと新居暮らしとたまに迷宮探索なんかをして、悠々自適に暮らして行こうかと考えていた。



「次は28階層だったよね?」

「……少し、新居でゆっくりしない?」

「分かったよ。じゃあ、1ヶ月ゆっくりしよう」



 数年前では、その日を過ごすお金も心配なほどに乏しかったのに、いつの間にか1ヶ月も働かずに過ごせるようになったノル。



「……劇場、行ってみたい」

「よし、行こう!俺も行きたい店があるし!」



 それから、ノルとファノは劇場や防具店などを回り、ゆっくりと幸せな日々を過ごした。


 めでたし、めでたし。


 ではなく……



「ちょっと、何でもうお金なくなってるの?」

「姿隠しの外套が予想以上に高くて……」



 爬虫類魔人を倒したノルは、その爬虫類の皮を使って、姿隠しの防具が作れないかと防具店に持ち込んだのだ。予想通りと言うか、予想以上に高品質の外套が手に入ったのだが、それが予想以上に高価であり、あっと言う間に貯蓄を使い果たしてしまったようである。



「もう少し貯蓄があったかなぁ?なんて……」

「……今すぐ、迷宮行くから用意して」



 ファノの凍てつく眼差しに刺し殺されそうになるノルであった。



 ◇◇◇



「……姿隠しの外套って、使ってる?」

「今のところは、まだ」

「いつ使うの?」

「えーと……」



 折角良いものを作ったのだが、今のところは使う機会がない。外套が二つあれば、ノルとファノで使って、姿を隠しながら探索するなどが出来たのだが、外套は一つ。



「そろそろ28階層も探索し尽くしたかな?階層守護者(フロアマスター)倒して地上に戻ろうか?」



 話題を変えるノル。



「そうね、地上で暮らせる程度はお金も稼げそうだし」



 チクリと棘を刺すファノ。



「この階層の守護者は鋼鉄製のゴーレムらしいから、ファノの魔術頼みになるかな。ファノが居ないと攻略出来なかったよ」

「(ふんすっ)まあ、そうかな」



 小鼻を膨らませ、満更でもない顔のファノ。この辺りはノルも慣れてきている。


 28階層の階層守護者(フロアマスター)には悪いが、盛大に散って貰おうと考えるノルであった。



 ◇◇◇



 ノル達が地上に戻り、自宅に帰ると、ポストに郵便物が届けられていた。



「何だろうって、手紙だ」



 部屋に入って手紙を開けようとするノルに、ファノが質問する。



「誰から?」

「えーっと……獣人族国家トワイライトメーアのレパード・パン・メーアだって、トワイライトメーア国の公爵家の方からだよ!大変だ!」

「ちょっと待って、レパードって言わなかった?」

「えっ言った!レパード?レパードって、あのレパードか?」



 ノルとファノが知っているレパードは一人しか居ない。それと、この手紙の主の公爵家の方が同一人物なのだろうか?


 ノルは封をきり、恐る恐る中身の手紙を取り出す。



「……なんて書いてあるの?」

「私の家に遊びに来ないか、だって」



 本当はもっと長々と書いてあるのだが、要約するとノルの言う通りのことが書いてある。



「どうする?」



 ノルがファノに問う。



「……面倒臭そうよね……」



 ファノがあからさまに面倒そうな顔をする。



「……無視、すっかな……」

「……賛成」



 満場一致で賛成となり、この件は解決する。



「まぁ、迷宮に長く潜ってたんで、手紙を読んでなかったと言うことにして」

「……バレないしね」



 地上で少しの休息を取り、探索準備を済ますと、直ぐに迷宮へと潜っていくノルとファノであった。



 ◇◇◇



 あれから、1ヶ月と少し。迷宮の29階層の階層守護者(フロアマスター)との激闘を制したノルとファノ。意気揚々と地上へと帰還する。


 迷宮管理局へ行き、帰還報告を済まし、いよいよ次が人類の最深到達階層である30階層だと意気込んで、次の計画を話しながら管理局内のカフェで軽食を取ろうとしたノルとファノ。



「久し振りだな」

「……」



 一瞬、スルーしそうになるノル。



「レ、レパードか?久し振り!

 こんなところで何してるんだ?」



 動揺を隠そうと必死なノル。ファノは一切をノルに任せ、ノルの背中に回る。



「冷たいじゃないか、手紙を無視するなんて」

「て、手紙?あぁ、俺ら殆ど迷宮で過ごしてるから、気付かなかったのかな?」

「……まぁ、そう言うことにしとこうか」



 実は色々知っているレパード。ノルがそう言うのだから、そうしておこうと大人の対応をする。



「では、用件を。私の家に遊びに来ないか?」



 態々、それを言うために馬車で半月掛けて、ノースグラスまでやってきたのだ。しかも、いつ迷宮から戻って来るのか分からないのに。



「……レパード、お前……」



 ノルとファノは同じことを頭に思い浮かべる。



「暇人なんだな」

「ちげぇーよ!忙しいから!」



 公爵家の長男として、色々と忙しいレパード。今回、ノースグラスに来たのも公用のついでであり、更にノル達がいつ迷宮から戻るのかも事前に調査している。迷宮から戻ってきたとの報告を受けて、迷宮管理局へと来たのであった。



「何で、俺らを家に招待するんだ?」

「あぁー……君らが迷宮探索者と聞いてね。少し探索の話でも聞きたいな、と思って」



 じーっとレパードの目を見つめるノル。



「そ、それと。君らに会いたがってる者も居てね」



 じーっとレパードの目を見つめるノル。



「……分かった。正直に話すよ。私の妹が君らに会いたがっているんだ」

「妹?」



 ノルには、レパードの妹との面識がない、そう思っている。



「私の妹だよ、ココアだ」

「えっ?ココア?妹だったの?」



 言われて見れば、何となく顔立ちが似ているような……

 ちらりとファノを見るノル。



「……あたしは別に……」



 ファノは、どちらでも良いようだ。強いて言うと、レパードの家が公爵家と言うのが面倒臭くて踏み切れない要因である。



「『黄昏の迷宮』って知ってるか?」

「知らないな」



 招待に応じるか迷っているノルに、レパードが話し掛ける。



「トワイライトメーアにも小さいが迷宮があるんだ。ココアはこれから迷宮に挑戦しようとしている。それは、君らに影響を受けてのことだ」



 へぇ~知らなかったなぁ、と相槌を打つノルに、レパードは続ける。



「どうか、先輩探索者として、私の妹に色々と話を聞かせてやってくれないか?」



 ノルの心は決まった。ちらりとファノを見ると、こくりと頷く。



「分かった。レパード、行くよ」



 こうして、ノルとファノは獣人族国家トワイライトメーアへと向かうのであった。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


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