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竜の刻印 ~異世界武芸帖~  作者: ペリドン
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第1章 第60話 接触


 翌日、アギト達はブルックの家で目を覚ました。

 外を見るアギト。


 「大雨だな」


 リリーナ。


 「そうですね」


 『コン、コン』


 「アギト、起きてる?」


 「起きてるぞ、ミア」


 「入っていい?」


 「どうぞ」


 ジーナとミア、バディがアギトの部屋に入って来た。


 ジーナ。


 「アギト君どうする? 凄い雨よ」


 「でも、行けない事はないだろう。前回はそれで失敗した。だから、危険でないなら行こう」


 アギトは避難を翌日に伸ばした為、多くの危機を招いたコーカス村の事を思い出していた。


 「そうね、コーカス村の悲劇を繰り返したくはないわね」


 ミア。


 「濡れるの嫌だけど仕方ないね」


 リリーナ。


 「この村の人達には迷惑をかけたくありませんから」


 バディ。


 「それに目的地も決まっているしな」


 アギト。


 「そう言う事だ」


 その時ブルックが階段を上がって来た。


 「あら皆さん、お早いですね」


 アギト。


 「ブルック、すまないが俺達はこれからここを立つ」


 「大雨ですよ?」


 「そうだが、先を急ぐからな」


 「でも」


 「悪いな」


 残念な顔をするブルック。


 「……分かりました。でも朝食は食べて行ってください。もう準備しましたので」


 「分かった。朝食はありがたくいただいていくよ」


 「良かった。今朝は私が作ったんです。お口に合うか分かりませんが召し上がってください」


 「もう少ししたら下りるよ」


 「はい! 待ってますね、アギトさん」


 ブルックが1階に下りるのを確認すると、ミアがジーナに話かける。


 「姉さん、大雨でも早くこの村から離れた方が良さそうだね」


 「そうみたいね、ミア」


 バディ。


 「私も賛成だ」


 リリーナ。


 「私もです」


 アギト。


 「……」


荷物を用意し、1階に下りて朝食をいただくアギト達一行。


 アギト。


 「美味しかったよ、ブルック!」


 「ありがとうございます、アギトさん。お世辞でも嬉しいです」


 「お世辞なもんか、なあ、ミア」


 不機嫌な顔になるミア。


 「何でボクに振るの、アギト?」


 「別に他意はないが…」


 リリーナ。


 「でも本当に美味しかったです、ブルックさん」


 「お口にあって良かったです」


 それから少し休憩して、立ち上がるアギト。


 「それじゃ、そろそろ行こうか皆」


 パイロン。


 「もう行くのか?」


 「悪いな、パイロン。村長にはこれから挨拶をして行くよ」


 「そうか」


 パイロンは残念がると、チラっとバディを見る。

 もう少し話がしたかったな。


 ブルック。


 「アギトさん、また寄ってくださいね」


 「あぁ、その時はまたブルックの手料理を御馳走になるよ」


 「はい!」


 ブルックの家を出て村長の家に挨拶に出かけるアギト達。


 バディ。


 「そんなに手料理が食べたいなら、言ってくれればいいじゃないか、アギト!」


 「どうしたんだ、バディ?」


 「今夜、川魚をとって来るから、それで炒め物を作る」


 ミア。


 「じゃ、ボクも野菜スープを作る!」


 「分かった、2人ともありがとうな」


 前回の料理を思い出すアギト。

 久しぶりだから、いいか。毎日だとキツイがな。


 そんな他愛もない話をしていると村長宅に着いた。玄関先で1人の村人が村長と話をしていた。アギト達に気付く村長。


 「これはアギトさん、こんなに早く何かご用で?」


 「いや、これからこの村を出ようと思い挨拶をしに来たんだ」


 「そうですか、わざわざありがとうございます。ですがそれはちょっと無理かもしれませんぞ」


 「何故?」


 「今この者が道の様子を見て来たんですが、土砂崩れで道がふさがれているみたいなんですよ」


 驚くアギト。ジーナが村人に問いかける。


 「私達はこの道を北に行きたいんですが?」


 「残念ですが、この先2キロぐらいの所で道が塞がってるんですよ」


 村人は北の方角に指を指す。


 「前回の雨の時から少々崩れかけていたんです。で、今回の大雨。心配になって様子を見に行ってたんですが、案の定崩れていました」


 リリーナ。


 「村長さん、他に迂回路はないんですか?」


 「ありますが、アギトさん達が来られた道を戻る事になります。そこから大きく迂回する事になりますが」


 「そうですか、兄様?」


 アギト。


 「復旧にかかる日数は?」


 「まだ、雨も降っておりますし、その崩れの度合いも詳しく見なくてはなりません」


 「その迂回路を使い北に向かうには?」


 「そうですな、迂回路を通り、この先の道と合流するには7~8日はかかるでしょうか。ですが、この雨だとその迂回路もかなり悪路となっておりましょう。そうなると、もっとかかるやもしれませんな」


 腕を組むアギト。

 村に迷惑をかけたくないが、むをないな。無理をして風邪を引いたり、怪我をするのは控えたい。

 「村長さん、悪いが道が開通するまで、もう少しこの村に厄介になりたいが?」


 「私共は歓迎しますぞ、アギトさん」


 後ろにいたブルックとパイロンは喜色満面きしょくまんめんあふれていた。

 ブルック。

 

 「そう言う事なら、また私の家に来てください」


 パイロン。


 「さぁ、戻ろうぜ、アギト!」


 パイロンはアギトの名を呼びながら、バディの荷物を持つ。

 

 不愉快な顔をするバディ。

 馴れ馴れしいな、この男。


 こうして再びブルックの家に戻る事となったリリーナ達。

 アギトは部屋の窓から外を眺めながらつぶやく。


 「何も起きなければいいが」


 雨脚は弱まるどころか、更に強まっていた。






     ~接触~


 とある部屋で1組の男女と1人の女がテーブルを挟み向かい合っていた。女の後ろには屈強な男が3人立っていた。


 男。


 「お前は確かアニヤ…」


 女。


 「アニヤ・バーデンだ」


 「そう、そう、久しぶりだな! 前に会ったのは確か……10年ぐらい前だったか?」


 「そうだ」


 「あの時の坊ちゃんは元気か? 以前あった時は皇太子だったよな」


 「今は立派な皇帝陛下になっておられる」


 「隠密裏でスタンリーに行きたいとか言って、道先案内をさせられたな、いや、させていただいたな」


 「そうだ」


 「いいカネになったぜ。おっと、それにしても、よくここが分かったな!」


 「お前達を捜すのに苦労したぞ」


 「そうだろうな、なんせ俺達は根無ねなし草だからな」


 男とアニヤがいる場所は街道筋の宿の一室だった。


 「ところで用は何だ? まさか俺に愛の告白をしに来たのか?」


 ダガーを構えるアニヤ。


 「殺すぞ、お前!」


 別の女。


 「アンタ、いい加減にしな!」


 男の頭を小突く女。


 「いっててて、よせよ、ルナ!」


 ルナ。


 「フン! ところでアニヤがアタイ達に会いに来ると言う事は、かなり面倒な仕事なのかい?」


 「そうだ」


 男。


 「ほうー、で、その中身は?」


 「ある若い女をさらってもらいたい」


 「美人か?」


 「とびきりの美人だ」


 「いいだろう」


 ルナ。


 「アンタ、二つ返事で引き受けるんじゃないよ! まだ話の中身が分かってないじゃないか!」


 「『美人』と言うだけでいいんだよ!」


 「話にならないね。アニヤ、ここからはアタイが話を聞くよ」


 「いいだろう。こちらとしてもその方がやり易い」


 男。


 「モゴモゴ……」


 男はルナに口を塞がれていた。


 「攫てもらいたい女の名は、リリー・ブーリン。ただの村娘だ」


 「何でそんな村娘を?」


 「詳しい事を聞かぬのが、お前達の決まりじゃないのか?」


 「まぁ、いいわ。で、特徴は?」


 「年齢は15才。身長165cm前後で金髪セミロング。いや少し長めだったか。瞳は緑色のやや垂れ目。かなりスタイルが良い」


 男。


 「決まりだな!」


 ルナ。


 「アンタは出てくんな!」


 「モゴモゴ……」


 再びルナに手で口を塞がれる男。


 「他には?」


 「他にも女が3人」


 ジーナ、ミア、バディの特徴を伝えるアニヤ。

 ルナの手を払いのけて質問する男。


 「その女達も美人か?」


 「リリーに負けず劣らず美人だ」


 「そうか、決まりだな!」


 「だからアンタは出てくんな! 話が進まないじゃないか!!」 


 「モゴモゴ……」


  三度口を塞ぐルナ。


 「バディの噂はアタイも聞いた事があるよ。めっぽう剣の腕が立つらしいね」


 「ルナ程ではないがな」


 照れているのか、頭をかくルナ。


 「アンタがお世辞を言うとはね」


 「お世辞など言わん。本当の事だ。この女三人は好きにしていい。殺してもかまわん」


 男。

 そんな美人を殺すなんて、勿体ないだろうが。なら俺のめかけに……。


 「それと厄介な男が1人いる。リリー・ブーリンの付き人だ。出来れば始末して欲しいんだが」


 ルナ。


 「どんな男だい?」


 「お前達と同じ刀を使う男だ」


 一瞬、目の色が変わる男とルナ。それに気付くアニヤ。


 「知っているのか?」


 「いや。それで?」


 「先日のコーカス村での戦いを知っているか?」


 「噂では聞いてるよ。1人とんでもない男がいるとね」


 「その男はたった1人で、スタンリー王国の兵を1000人以上を斬り伏せた」


 驚く男とルナ。


 「アンタもその場にいたのかい?」


 「そうだ」


 男。

 どおりで戦い慣れているはずだ!


 ルナ。

 そりゃ、強いはずだわ!


 アニヤはアギトの特徴を話す。


 アニヤ。


 「最初、あの男の剣技を見た時は忘れていたが、時間が経つうちに何処かで見た事を思い出した」


 「それがアタイ達だったと」


 「そうだ。情けない話だが私の配下では歯が経たない」


 「なるほどね」


 「ならばアイツに対抗できるのは、同じ刀と技を使うお前達しかいない」


 「アタイ達を雇うなら高くつくよ」


 ルナは右手の親指と人差し指で輪っかを作る。


 「承知している」


 そう言うと、アニヤは腰から金貨の詰まった袋をルナの目の前に置く。


 「これは前金だ。成功すればさらに同じ金額の金貨を渡す」


 目の色が変わるルナ。


 「豪勢だね! 前回の皇太子の道案内の時より、かなり多いじゃないか!」


 ここでルナの手を払い除け、男が質問をする。


 「仕事の内容は分かった。で、だ。仕事の内容は2つなのか?」


 「いや、リリー・ブーリンの誘拐だ」


 「なら、その男の始末はしなくていいんだな?」


 「出来れば、殺ってもらいたい」


 「なら、金額は2倍だ」


 苦虫を噛み潰したような顔をするアニヤ。


 「だってそうだろう? お前の言っている事は女の誘拐と付き人の始末の2件だ。違うか?」


 「そうだな、分かった。今の金額の倍だそう」


 「それでいい。ところでその男の名は?」


 「アギト。タツミヤ・アギトだ。異世界から来た男だ」


 男。


 「なに! タツミヤだと!?」


 男の顔を見るルナ。


 「アンタ、タツミヤって!?」


 「その話、お前が知っている全てを話してもらうぞ!」


 「2人とも、突然どうしたんだ?」


 「いいから教えろ!」


 「まぁ、いいだろう」


 アニヤは現在わかっている事を教えた。


 「私が知っている事は以上だ」


 「肝心なところは全然わからないんだな」


 「そうだ」  


 ルナ。

 だから剣技が同じだったんだね!


 アニヤ。


 「知りたいんなら直接本人の口から聞くんだな」


 「この件引き受けよう。いいな、ルナ」


 「アタイはいいよ」


 「ところでアニヤ、本当の事を喋ってもらうぞ!」


 「隠し事はしてないが」


 「俺を甘く見るなよ、アニヤ。そんな男が、ただの村娘の付き人なんかしないだろう? それに村娘にこれほどの金を出すなんて聞いた事がない」


 「仕事の内容を話さなくても引き受けるのが、この世界の決まりじゃないのか?」

 

 「時と場合による。それ程の男と殺り合うんだ、こっちも命がけよ。なら仕事の内容を知っておく必要がある。それにひょっとして俺達が返り討ちになるかもしれねぇ。なら納得して仕事をしねぇと死ぬに死ねねぇ」


 「隠し事はしてない。本当の事だからな」


 「なら、後で本当の事が分かった時、今の10倍はかねをいただくが、いいな!」


 「くっ!」


 本当の事を言うアニヤ。


 「やっぱり裏があったか。リリーと言うのはスタンリーの王様の忘れ形見か」


 「そうだ。本当の名はリリーナ・ドミニク・スタンリーだ」


 「よかったな、アニヤ。ケツの毛までむしり取られなくて」


 「やかましい!」


 男とルナが笑う。


 「「あはははは!!」」


 アニヤ。


 「まぁ、そう言う事だ。アギトの居場所は追って知らせる」


 「俺達の方で探してもいいのか?」


 「かまわん。心当たりでもあるのか?」


 「いや、まぁ、こんな稼業だ。色んな処から噂を聞くもんでね」


 「了解した。私の方でも分かり次第お前に伝える。よろしく頼む」


 「承知した」


 ドアから出て行こうとするアニヤを止める男。


 「ところでザインの皇帝様は、10年前に俺の教えた技を練習しているのか?」


 「そんな事を聞いてどうする?」


 「少しの間とは言え、俺の弟子だったんだ。精進しているかどうか気になるんだよ」


 「あのお方は勤勉なお方だ。今も練習されておられる」


 「剣でか?」


 「そうだ。現在ではお前よりも強いかもな」


 「なら俺達じゃなく、皇帝様に頼んだらいいじゃねぇか?」


 「お前はバカか? たとえお前より強くても、陛下にそんな危険な事させられるか! それにそんな事をすれば、お前達の食い扶持が減るんじゃないのか?」


 「そりゃ、言えてるな」


 「では、頼んだぞ!」


 「任せておけ!」

 それにしても、あの皇帝様は剣でよくタツミヤ流の練習が出来るな。タツミヤ流は刀の技だが。


 部屋を出るアニヤ・バーデンとその配下の男達。それを見届けてから男に話かけるルナ。


 「アンタ!」


 「あぁ、間違いない。タツミヤ・アギト、俺達の血族だ」


 「アタイの名はタツミヤ・ルナ。表向きは万事屋。そして、アンタのもう1つの顔は」


 男は窓に寄りかかると、立ち去って行くアニヤ達をながめながらつぶやく。


 「タツミヤ流抜刀術・19代目当主、タツミヤ・セイジ。人は俺の事をウルフと呼ぶ」




 雨は激しさを増すと、男の声をき消していた。






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