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竜の刻印 ~異世界武芸帖~  作者: ペリドン
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第1章 第36話 コーカス村攻防戦 第2幕 疑心


      ~ダレン少佐の疑心~



 ダレン少佐。


 中佐は何を隠しているんだ? それがハッキリするまで攻撃は出来ない。しかも、リリーナ姫がいるだと? 確かに噂は耳にしていたがもし本当ならば、村に攻撃を加えるという事はスタンリー王家に弓を引いているのと同じ事になる。あの矢文がなければ攻撃していた処だ。


 村の中にクレア近衛副長がいたな。直接会って確認する必要があるが、中佐のあの様子ではとても無理だな。ならばタイミングを見計らって会うか。運よく私のいる場所は中佐からは正反対の東だ。私の方から出向くか。そうなるとあの女が邪魔だな、まるで監視役みたいだ。一体何者だ、あの女は? それもクレアさんに会えば分かるかもしれんな。



 北・南・西では既に攻撃をしていた為、ダレンは担当している東の壁からも矢を放つ。しかし、その中には矢文が数本混じっていた。既にアギトは出撃しておりクレアに文が届けられた。



 『矢文を拝見しました。今回の命令に不振を抱く者です。私はダレン・オスター少佐、早い段階での面会を希望します。私1人でそちらに伺います。念のため中佐に怪しまれない様にする為、攻撃を行いますが許されたし。


                          ダレン・オスター 』



 目を通すと笑いが漏れるクレア。『アギト君の撒いた仕掛けに1人乗ってきたわね。どうやら敵は一枚岩じゃないみたい。いいわ会いましょう。上手くいくと犠牲が最小限で済むかも』クレアは返事を書くとダレン少佐のいる方向に矢文を放つ。そして、返事を受け取るダレン。



 『承りました。ダレン少佐の都合の良い時にお越し下さい。


                         クレア』



 返事を受け取るダレン。『これで繋ぎが出来たな。あとはどのタイミングで接触するかだ。この東に張り付いている女は確かアメリアとか言ったか? 何か策をこうじないと不味いな』そして、ダレンはルード宮殿に2名の部下を向かわせた。


 



     ~東のアメリア~


 現在コーカス村の壁に小悪魔4人衆と女詐欺師1人が張り付いている。

東・アメリア(本名ミリア・18才・棒術使い)。

西・シーラ(本名ラーラ・20才・ダブルダガー使い)・ハンナ(本名エルザ・20才・剣使い)。

南・レオナ(本名カーラ・22才・レイピア使い)この中ではリーダー格。

北・レナーナ(本名レナ・19才・ムチ使い)。


 ここでは偽名で統一する。


 東のアメリアがここでの攻防戦を観戦していて、ある事に気がついた。

 壁に向かって矢を放ってはいるが数が少ないわね? ダレン少佐はオークス中佐に反抗的だったけど、まさか裏切るつもり? 探りを入れてみる必要があるわね!


 ダレンは前線の壁の近くに陣取っていた。アメリアは近づくとダレンに水筒を差し出す。


 「お疲れ様でございます、ダレン少佐。喉が乾いておりませんか? よろしければこの甘い水でもいかがでしょう?」


 アメリアは水筒を差し出し、砂糖を解かしてある水を差し出す。


 「気を使わせて悪いな、アメリアさん。しかし、先程喉を潤したばかりなんで、その気持ちだけいただいておくよ、ありがとう」


 「出しゃばった真似をしてしまい申し訳ございませんでした。失礼ついでに少し質問をしてよろしいでしょうか?」


 「何かな?」


 「少し攻撃が手緩い様な気がいたしますが?」


 「そうですか? これでも頑張って攻撃しておりますが、中々敵の抵抗も強くて大変なのです」


 改めてこの東の攻城戦を見てみると、どうしても手を抜いているようにしか見えない。


 「しかし、これは」


 「すまないが、ここは危険なので下がっていてもらえませんか?」


 「わ、分かりました」


 アメリアはダレンに背を向けると、そのまま西に向かいこの事をハンナに報告をした。ハンナからオークスに話が伝わると、厳しい顔をするオークス。

 何か手を打たないと不味いと思いつつ、西の壁で暴れているアギトに視線を向ける。そして、ハンナに話しかけるオークス。


 「今はあのアギトに集中する。ダレン少佐には部下を行かせ注意を促す。それでいいなハンナ」

 

 「はい、かまいません。宜しくお願いしますオークス様」


 ハンナは一度オークスから離れレオナ達が集まっている場所に移動した。そして、舞台は西の壁へと移る。



 アギトは西の壁を乗り越えると弓矢隊に斬りかかっていた。弓矢隊は穂先を平行にしてアギトを狙うが彼の動きが速すぎて捉え切れない。弓矢隊の陣形が崩れると、その後ろの歩兵部隊にまで動揺が広がる。歩兵は塀を埋める準備をしていた為、まだ戦闘隊形になっていなかった。そこを狙うアギト。



 スタンリー王国の軍が、同じスタンリー王国の村を襲うとは、本末転倒だな! バカなのか? だからザイン帝国やコンベール大王国に狙われるんだ!


 アギトは心の中で毒突きながら弓矢隊を斬り刻んでいく。今回は前回と違い全ての敵兵の命を奪っていった。手加減して怪我人を増やしていくには余りにも敵兵が多く余裕がない為だ。

 今回この西の壁から少し離れた場所に、全ての小悪魔が集まっていた。そして、前回アギトの強さを見ていなかったレナーナ、アメリア、シーラ、ハンナが驚嘆の声をあげる。レオナも改めて驚いた。


 彼女達の視線の先には、多くの屍が散在していた。アメリアが驚く。


 「な、何、この強さは?」


 シーラ。


 「以前アニヤ様が言っておられたけど、聞くと見るとでは大違いね。作戦をアギト獲得に変えた意味が分かったわ」


 ハンナ。


 「軍を動員していて良かったわ。けどこれ程とは!」


 前方のアギトを見ながら声を出すレオナ。


 「昨夜、大道芸人で潜りこんだ時、素早く撤退して正解だったみたいね。これでは私達が束になってかかっても勝てやしない!」


 小悪魔達が驚いていると、それを目ざとく見つけるアギト。


 「見つけたぞ、お前等!!」


 凄い速度で接近するアギト。慌てて逃げる小悪魔達。レオナが皆に指示を出す。


 「み、皆持ち場に戻れ! この場所は不味い!!」


 散開する小悪魔達。アメリアが東の壁に戻ると、そこにはダレンの姿がなかった。代わりにオークスの命令で来ていた使者が帰る処だった。アメリアが使者に訊ねる。


 「いかがされました?」


 「いや中佐からの命令で少佐に注意をしにきたのだが、いないのだよ」


 「どう言う事です?」


 「何やら腹痛で前線を一時的に離れているみたいだ。食い物が悪かったのかな?」


 「分かりました、私が探しておきます」


 「あぁ、宜しく頼む」


 私が目を離した隙に何をしてるの? 

 しばらく探すも見つからない。そこに少尉がいたのでアメリアは尋ねた。


 「すみません、少尉。少佐は何処におられるかご存知ないですか?」


 「何か用か?」

 

 「はい、中佐から伝言を頼まれまして」


 少尉もアギトの矢文を読んでいたので、この女性達には警戒をしていた。

 何故こんな小娘を戦場に連れて来ているのか訳が分からん。それに少佐を監視する様な言動に腹が立つ。これはダレン少佐の判断が正しそうだな。


 「すまんなアメリアさん、わざわざ中佐の伝令を頼まれて。少佐なら今腹が痛いと言って、用を足しに行ってるところだ」


 「まぁ、それはいけませんわ。丁度腹痛に効く薬を持っております。それに私、初級の回復魔法も使えますのでお役に立てるかも知れません。是非少佐に会って……」


 少尉は、アメリアの心遣いを強制的に断った。


 「その気持ちだけ頂いておく。軍には軍のやり方があるのでな」


 「では中佐のご命令なら……」


 「いちいち出しゃばるな小娘! 我々はダレン少佐の命令のもと行動しておる。たとえ中佐のご命令であっても我々の直接の上官はダレン少佐だ。その少佐の命令がなければ我々は動かない。それに東の壁にはキチンと攻撃を行っておる。これ以上の口出しは控えてもらおう!」


 たじろぐアメリア。


 「わ、分かりました。後でオークス中佐からお叱りの言葉を受けても、私は知りませんので」


 「かまわん」


 一旦引き下がるアメリア。そして、そのまま東の壁を監視する。その頃ダレンは壁の中でクレアと面会をしていた。





 

    ~コーカス村の中~


 その頃クレアはある男性と握手を交わしていた。その男性は30才手前で、茶色の短髪に茶色の目をした体格のいい男性だった。


 「これはダレン少佐、お早い御越しで!」


 「すみません急に。オークス中佐からのお目付け役がいたんですが、今はいなかったので急いで来ました」


 「どのようなお目付け役で?」


 「若い女性で名前はアメリアと申しておりました」


 「そうですか。あの女ですか」


 「ご存じで?」


 クレアはダレンにここ2~3日の出来事を話した。


 「その様な事が!」


 「えぇ、ではダレン少佐、立ち話もなんですので寄合所までお越し願えます?」


 「分かりました。それと私の剣をお預けします」


 「ありがとうございます」


 2人は寄合所に入ると、そこは怪我人が運び込まれてもいい様にマットが敷き詰められていた。


 「ごめんなさいね、狭くて」


 「いえ、おかまいなく」


 ダレンは村長と顔を合わせ小さいテーブルに着くと、ダレンの反対側に村長とクレアが席に着いた。

ダレンはそこでリリーの今までの生い立ち、そしてクラーク王子、カーシー王子、その背後でうごめく帝国と大王国の陰謀を聞く事となった。アギトに関しては差し支えないところまで話す。


 「それでは、今回のこの村を狙ったのは中佐の独断だと?」


 「えぇ、うちの作戦参謀はそう推察しているわ」


 「うちの作戦参謀?」


 「アギト君の事よ。今回を含め全ての難局を乗り越えてこられたのは彼の力があってこそ。その智謀と戦闘能力は計り知れないわ」


 「そこまでの人物ですか?」


 「えぇ、彼がいなければこのスタンリー王国にはもうリリーナ姫様はいないわ」


 

 クレアの後ろのドアが開かれると、そこに1人の美少女、いや美女が現れた。その女性は金髪のセミロングに緑の目。白いドレスを着ていても隠し切れない見事なプロポーションの持ち主が、ダレン少佐に話しかける。


 「初めましてダレン少佐。私が先程話題に上っていた、リリーナ・ドミニク・スタンリーです」


 リリーはドレスの裾を指で摘まんで、少し膝を曲げ軽く会釈をした。


 「こ、これはお美しい!」


 見惚れるダレン。クレアはリリーから預かっていた、王家の者だけが許されるミスリルの短剣をダレンに渡す。


 「これは、リリーナ姫様の?」


 「えぇ、これはリリーナ姫様が持っておられる短剣です。王家の者だけが持つ事を許されるミスリルの短剣」


 手に取り鷹の紋章を確認する。


 「確かに本物」


 リリーナがダレンに話しかける。


 「疑いは晴れましたか?」


 「これより私ダレン・オスターは裏切り者オークス・マキロイ中佐の下を離れ、リリーナ・ドミニク・スタンリー姫様の傘下に入ります」


 ダレンはリリーの前にひざまずき、その右手の甲にキスをする。


 「私リリーナはダレン・オスター少佐の忠誠を心に深く刻みこみました。この難局を無事に切り抜ける事が出来たなら、フレイザー将軍とコネリー政務大臣にこの事を伝え、貴方の忠誠心に報いる事を約束いたします」


 「有り難きお言葉、光栄でございます」


 その時、部屋に血まみれの男が入って来た。


 「ここに向こうの少佐が……」


 アギトはひざまずく1人の男がリリーの手の甲にキスをするのを見て理解した。彼もリリーの前でひざまずき空いた左手の甲にキスをする。


 「申し訳ありませんリリーナ姫様。大事なお客様がおられるとは知らずに失礼を致しました。どうぞお許しを」


 「に、兄様。その、これは……」


 顔を紅く染め上げ、テンパるリリーナ。クスクス笑うクレア。ダレンはひざまずいた状態でアギトに話かけてきた。


 「キミがこの村の作戦参謀アギト殿か?」


 「作戦参謀?」


 クレア。


 「私が少佐にそう説明したのよ。ところでアギト君少し時間もらえる?」


 「勿論だ、作戦を練り直さなくてはならない。それとさっきは悪かったなリリー、悪ふざけが過ぎた」


 膨れ面したリリーがアギトに怒る。


 「兄様の意地悪。私をイジメて楽しいですか?」


 「あぁ、スゴク楽しい!」


 さらに膨れ面になるリリー。


 「ふん、まぁいいです。それより大事な作戦会議の邪魔になりそうなので、私はこれで失礼を致します」


 ダレンは立ち去るリリーに声をかけた。


 「リリーナ姫様、私ダレンは貴女様を必ずお助けします!」


 「宜しくお願い致します、ダレン少佐。全ては貴方の双肩にかかっております」


 リリーナはダレンの右手を両手で包み込み、軽い会釈をすると退出した。ダレンはリリーのその行為に感涙した。

 ダレンは心の中で再び誓う。

 良き姫様に成長されましたな。これは何としてもリリーナ姫様を救出せなば!

 

 アギトはダレン少佐に軽い質問をした。


 「ダレン少佐、よくこの村に侵入出来ましたね?」


 「あぁ、お目付け役のアメリアが私の傍を離れたからな」


 「アメリアが監視役ですか?」


 「あぁ」


 「何故、監視役がいるのです?」


 「我々はリリーナ姫様の顔を知らないので、もし逃亡した時に顔を知っている者がいないと話にならない。あと私みたいなオークス中佐に批判的な部下の監視役だな。なんせ私は中佐が胡散臭いと思っていたので、ルード宮殿に確認する為に使者を出したぐらいだ」


 アギトは難しい顔になる。


 「何か不味かったのか?」


 「いえ、分かりました少佐。では作戦会議に入りましょう」


 こうして、作戦を練り直す事となった。



 お待たせしました。色々と用事が片付きましたので再開します。

次は30日に投稿します。しばらく3~4日のペースで投稿します。宜しくお願い致します。

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