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竜の刻印 ~異世界武芸帖~  作者: ペリドン
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第1章 第29話 大道芸 その1

 

 リリーナが倒れて10日。現在は容態も良くなり、普通の生活に戻っている。近いうちにアギトはリリーナ、ジーナを連れ旅に出る。


 アギト。

 この3人は胸の刻印の件もあるので外す事が出来ないな。しかも、リリーの背中にはこの旅の目的である地図が記されている。残りは誰を連れて行くかだな。まず参加表明しているのは、ミアとバディだ。

 確認の為、バディにカーシーへの復讐の事を聞くか。


「バディ、カーシーへの復讐なら手を貸すぞ?」


「今はもう少し心と身体を休めたい。時々だが、あの兵達の視線が私に絡み付いている様な錯覚に陥るんだ。この村の男性が私を見る時の目が、あいつ等に重なってしまって……その……すまない」


 自分自身の肩を抱き、少し震えるバディ。


 「そうか、無理に急ぐ必要はない。バディの心が落ち着いた時でいい。それにしても、この村の男達には迷惑な話だな」


 「分かってる、あいつ等と違うというのは分かってる。この村の男性は優しい。私に気を使いながら親切にしてくれる。でも……」


 さらにバディの身体は震える。肩に置いてある彼女の手に、アギトは自らの手を重ね落ち着かせた。


 「無理をしなくていい。それなら、カーシーの件は後回しでいいな?」


 「かまわない、アギトが手を貸してくれるなら。いずれこの手で必ず復讐をする!」


 「そうだな。あと旅の件だが、俺はバディにはルード宮殿にいるコネリーさんの護衛を頼みたい」


 「そ、それはアギトと離ればなれになるという事か?」


 「そうだ」


 アギトの顔をじっと見つめるバディ。


 「わ、私はお前と離れたくない。少なくても、この心が癒えるまで傍にいて欲しい」


 「お前も物好きだな、こんな男のどこがいいんだ?」


 「アギト、本気でそう思ってるのか?」


 「あぁ、本気だ! 俺が女なら、こんな無愛想な男は嫌だ!」


 「お前、知らないうちに随分女を泣かせてきたみたいだな」


 「何でそうなる? 話がそれた、元に戻す。出来れば護衛を頼みたい」


 「そうだな、出来ればな。でも私の心を癒してくれるのはお前だけだぞアギト? こんな状態で私をルード宮殿に送っても役に立つと思うか?」


 頭を抱えるアギト。


 「そうだな」


 

 アギトはミアにもルード宮殿の話を持ちかけた。


 「な、何でボクだけ除け者なんだよ、何でバディがよくてボクがダメなんだよ!! 2人とも参加でいいじゃないか!」


 再び頭を抱えるアギト。

 強引に押し切られそうだが、ここは俺としても譲れない。これからの戦いはきっとリリーを中心とした探索組と、コネリーさんを中心としたルード宮殿の2局面の戦いが予想される。多分コネリーさんの場合は政治論争だと思うが、この間のメイドの件もある。油断は出来ない。本来なら力を二つに分けるのは良くないが、この場合はどうしても避けて通れない。


 だからこの2人にはコネリーさんの方を受け持ってもらいたい。特にバディは剣の達人だ。クレア夫婦も四六時中コネリーさんの護衛をするのは難しいはずだ。彼女達も仕事を抱えて忙しいはずだから。バディならメイド兼護衛として申し分ないし、むしろ適役だ。クレアさんもこの数日バディの性格、行動見る限り大丈夫との信頼を得ている。


 何故コネリーさんにこだわるのか? それは彼が宮殿で頑張っているから今のリリーがいる。だからリリーとコネリーさんは何としても死守する必要がある。あとミアとバデイにこだわるのは、男だと警戒されても女性だと警戒されにくい。何かと動きやすいからだ。だから何とか2人を説得したい。


 そしてこの旅には腕のたつ男性を警備隊から選びたい。しかし、クレアさん言い分だと、警備隊は軍の管轄下になり、クレアさんの近衛隊とは違うみたいだ。今は緊急という事でクレアさんに協力をしている、と言うのが現状らしい。中々上手くいかないもんだ。


 

 そんな事を考えていると、この村に大道芸の御一行がやって来た。

 ジーナに質問をするアギト。


 「大道芸か、アルの記憶にはないな。毎年来るのか?」


 「そうね、2年に1回は来るわね。でも今年はメンバーが全員違うわね、どうしたのかしら? 少し聞いてくるわ」



 大道芸一行を観察するアギト。

 メンバー構成は若い女性4人、若い男性9人、中年の男性2人の計15人。馬車4台での訪問か。それにしても、男性も女性も美男美女で、特に女性は皆素晴らしいプロポーションだ! だがリリー、ジーナ、ミア、バディには顔もプロポーションも少し劣るかな? 


 村の男性陣が色めき立ってるな、この村の男達は飢えてるのか? いや女性陣もか? アイドルみたいなもんかな? 



 ジーナと村長が大道芸の中年の男性と話をする。

 話をすませ戻って来たジーナ。


 「彼らは本来別の所を回ってたみたいだけど、ここに来てた人達と地域を替えたみたい。毎回同じ人だと飽きるという意見が別の村であったみたいね。私は個人的に親しくなった人がいたから、今回会えないのは寂しいわ。でも、人が変わると新しい出し物があるかも!」



 その日から、彼等は寄合所で泊まる事になる。この村での興行は3日間。


 それにしてもカーシーにクラークの奴等、この数日間やけに静かだな。何か大きな事を仕掛けてくる為の準備期間なのか? そんな事を考えながら納屋へと向かうと、今度はどうやってミアとバディを説得するか考えた。



 翌日、夕方から大道芸が始まったのだが、俺の考えていたのと少し違った。目隠しをした女性が十字に張り付けられた男性に向けナイフを投げたり、パントマイムやアクロバティックな動きしたりするのは予想していたが最後に劇があった。場所は寄合所の前の少し開けた所だ。


 愛しあった女性と男性が親によって別れさせられ、最後は2人で死んであの世で結ばれる内容らしい。このての劇は嫌なので途中で出て行くと、バディも付いて来た。バディも興味がないみたいだ。リリーやミア達は舞台の近くまで寄って行き、終わるまで見ていたらしく涙を浮かべていた。


 明日も別の劇があるそうだが、もう勘弁して欲しい。だがそれ以外は面白かった。劇が終わると大道芸の女性達が村の男性達に愛想を振りまいていた。そして俺にも愛想よく挨拶をしてきた。

 その中から1人の女性が俺に近づいて来た。歳は20才前半で165㎝ぐらいか? ロングの赤い髪で緑の瞳。中々のバストだな。


 「如何でしたか、私達の劇は?」


 「観させてもらったけど、面白かったよ」


 「ウソでしょ? 貴方様はアクビをされてましたわよ! しかも途中で出て行かれたじゃないですか!」


 「み、見てたのか、それは失礼した。しかし俺みたいな男をあの観客の中からよく見つけたな?」


 「綺麗な女性に囲まれながら、嫌々観ておられる方などそういませんわ。イヤでも目立ちますわ」


 「まいったな、ところでアンタの名前は? 俺は龍宮アギトだ」


 「これはご挨拶が遅れました、私この座長をさせてもらっているレオナと申します。そして、こちらからシーラ、レナーナ、アミリアと申します。貴女達もご挨拶をしなさい」



 「シーラと申します! こちらに滞在できる時間は多くはありませんが、よろしければ気軽にお声をかけてくださると嬉しいです」

 20才かな? 165㎝ぐらいで水色のロングヘアに水色の瞳か。この4人の中でもダントツのバストだな。90㎝位か?



 「私はレナーナと申します。以後お見知りおきを!」

 彼女も20才かな? 165㎝ぐらいで金髪のセミロングに青い瞳。ややスレンダーだ。



 「私の名はアメリアです、アギト様! この村の案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」


 「喜んで」


 「ありがとうございます!」


 元気よく頭を下げるアミリア。この娘は20才前かな? 160㎝ちょっとで、金髪のショートカットで緑の瞳か。この娘もバストが凄いな。バディの年齢を大きく外したんで、最近自信がない。

 女性陣の紹介が終わるとレオナが言葉をつなげる。



 「アギト様よろしければ男性陣も呼びましょうか?」

 

 「あぁ、頼む」


 男性陣も自己紹介が終わると、やっと解放された。俺はレオナに少しお願いをした。


 「レオナさん、少し馬車を見てもいいかな?」


 「ど、どうしたんです? 商売道具なのであまり見られると、ちょっと…」


 少し困惑するレオナ。


 「分かった、じゃぁ、少しでいいから見ていいかな? 初めて大道芸を見たから興味が湧いてきたんだ」


 「分かりました。でも明日以降の出し物もあるので、あまり見られたくないんです。ではアメリアをお付けしますが、よろしいですか?」


 「それでかまわない。じゃアメリアさん宜しく頼む」


 「分かりました。それでは行きましょう、アギト様」


 「『様』はよしてくれ、アメリアさん」


 「では何とお呼びすればいいですか?」


 「アギトでいい」


 「では『アギトさん』でいいですか?」


 「それでいい」


 「分かりました。それじゃ行きましょう、アギトさん」


 「あぁ」


 アメリアはアギトの腕に自分の腕を絡めると、はち切れんばかりの笑顔で馬車まで案内をする。残されたジーナやミアは不機嫌になっていた。馬車まで行くとアメリアの指示の元、触っていい物といけない物を聞きながら手で触れるアギト。アメリアは自然に振る舞っているが、何故か額から汗が流れていた。


 そんな彼女を横目で観察しながら、思わず声が漏れるアギト。


 「やはりな」


 「どうかされました?」


 「いや、何でもない。それにしても色んな道具があるな!」


 「えぇ、まだ明日、明後日も出し物が違います。そのため小道具が増えてしまって困ってるんです。もちろん劇も変わりますので、今度はアクビをしないで観てくださいね♡」


 「あぁ、残りの劇はキチンと観るよ。じゃあ、帰ろうか。ありがとうな、無理を言って」


 「いえ、私もアギトさんと一緒にいられて、楽しかったです! また、ご一緒させてくださいね♡」


 「あぁ」



 アギトはアメリアと別れた後、ある事に気付く。


 「何だ、これは?」


 わだちの溝が深いな……何か重いモノを積んでいる。いったい何を積んでるんだ? これ以上触れないからあきらめるしかないな。

 俺はもう一つ気になる事があるので、彼女達がいた舞台に立つ。そこである確認をして家に戻る。帰ると直ぐにリリー、ジーナ、ミア、バディ、クレア、ノエル、ユアンを呼び会議を開いた。

 ミアとバディは俺がアメリアと仲良くしていたので、ヘソを曲げていたが、話を進めるうちに真剣な顔になっていった。


 「最初に結論を言うが、レオナ達はコンベールかザインのスパイの可能性がある」


 「「「 !!!! 」」」


 一同驚く中、クレアが質問を投げかけてきた。


 「根拠は?」


 「今回なぜこのタイミングで大道芸のメンバーが全員入れ替わったのか? この答えはジーナさんから聴いているから別にいいんだが、妙に引っかかるんだ。だから少し調べてみた。すると綺麗なんだ、いや綺麗過ぎるんだ!」


 ミアが水を差す。


 「皆美人だからね! 誰かさんは鼻の下を長~くしてたもの」


 「最後まで話を聴けミア! 小道具なんかが凄く綺麗なんだ。何年も使っていると道具も古くなってくるもんだ。たまに新しいのに替えても全て替えるなんて普通考えにくい」


 ジーナ。


 「でも今日の出し物を見る限り、彼女達の動きは本物よ」


 「そうだ! そして、今日の出し物は何かの武術を心得ている者なら出来る内容が多かった。決めつけるのは良くないが説明は出来る。あと、俺を案内してくれたアメリアだが、それとなく観察してみた。馬車の中を覗いている時、俺を見る目がかなり険しかったんだ。顔は笑っていたけどな」


 ノエルが遠慮がちに聞いてくる。


 「新参者の私が質問してもいいですか?」


 「勿論だ」


 「アギトさんは、さっき舞台に立って何かされてましたよね? あれも関係あるんですか?」


 「ノエルはよく見てるな! あれは舞台の上から俺のいた場所が、どれくらい見てとれたかの確認だ」


 今度はノエルの兄ユアンが質問してきた。


 「それが、何故気になるんです?」


 「レオナは俺が舞台をあまり見ずにアクビをしているのを知っていた。あの舞台から俺のいた場所は約60mで、家と家の間の道から見てたんだ。見づらいからリリーとミアは前に移動したんだろ?」


 リリーナ。


 「はい、あそこは遠いのでミアさんと移動しました」


 「それが普通だ。そんな遠い観客よりも近くの観客に気を使うし愛想を振りまくはずだ。それに舞台に立っている時は演技に集中するはず。


 そんな遠い場所の客を気にするとなると、その客は舞台俳優にとって特別な存在のはずだ。スポンサーだったり、一国の王や大臣だったりだ。身近な存在なら友達、家族、恋人などだ。俺は初めに彼女達と挨拶を交わしてないので面識はない。挨拶を交わしたのは全ての出し物がすんだ後だ。


 そして俺がリリーやジーナさん達美人に囲まれて目立つにしても、アクビとか途中で抜け出すとか事細かに観察しないはずだ。なら俺という存在をあらかじめ知っていた事になる。


 俺は知らないが相手は知っているとなると、それは俺という存在を特別視している個人か組織だと思う。個人は心当たりがないが組織、もしくは国を思い浮かべると心当たりがある。その国名はザイン、もしくはコンベール。そしてその支援を受けているクラーク第1王子かカーシー第2王子辺りになる。俺としてはそう考えるのが自然だと思うが、皆はどう思う?」


 唖然となる一同。特に今回初めてアギトの推理に立ち会ったバディ、クレア、ノエル、ユアンは驚いている。

 クレアが口を開く。


 「噂には聞いていたけど、凄いわね! 何なのこの洞察力と思考能力は!」


 バディ。


 「一つ聞きたい事がある、いいか?」


 「あぁ」


 「お師様を斬った時、もしかしてお師様の合図を見破ったのか?」


 「あぁ、右足のつま先の合図だろう? 見抜いたから勝てたんだ。そうでないと難しかった」


 驚愕するバディ


 「あ、あの合図を見破るとは…」


 リリーナ。


 「なら兄様は今まで来ていた大道芸の皆さんはどうなったと思うんです?」


 「金で丸め込まれたか、殺されたかのどちらかだろうな。しかし、これはあくまでも俺の推測であって、確証はないんだ。だから必要以上に警戒しなくてもいいが、用心はして欲しい。


 あと向こうからのアプローチもあるから、俺は彼女達とデートをする。そこで誘導尋問を仕掛けるつもりだ。だから、バディとミアはいちいち怒るな」


 名指しされた2人は一瞬驚く。


 「「なっ!」」


 クレア。


 「誘導尋問て難しいわよ。でもアギト君なら出来そうね」


 「言っておくが俺は素人だ。だから彼女達がプロなら俺の誘導尋問に引っかからないと思う。だが、プロでも疲れている時とか、朝の起き抜けの時は意外と引っかかるもんだ。まぁ、ダメ元でやってみるさ」


 ミア。


 「ア、アギトまさか彼女達の誰かと朝まで過ごすつもりなのか?」


 「そんなはずないだろう? ミアはやっぱり……」


 詰め寄るミア。


 「アギト最後言葉を濁したけど、ボクでも分かるぞ! バカだと言いたいんだろう!」


 そう言うとアギトの唇を上下に思い切り引っ張るミア。アヒルの口みたいになるアギト。周りから笑い声が漏れる。


 「もう一度言うが俺の推測であって、全然関係がないかもしれない。だが、少しでも疑わしいなら警戒を怠らず、それなりの準備をしておくべきだ。それが生き延びる条件だと思う。何もなければそれが一番良い」



 一度解散すると、今度はリリーナとバディを除いたメンバーで再び会議を行う。このメンバーにある事を頼むアギト。そこにいる全員が驚く。


 クレア。


 「本当にアナタ凄いわね! それを何で彼女達にも使えないの? 何度も言うけど、残念で仕方がないわ」


 メンバーの協力を得る事が出来たので、本当の意味で解散となる。


 それからアギトは毎日大道芸の女性達の誰かとデートをする。しかし、なかなか尻尾をださない。


 アギト。

 やはりプロだな、俺では無理か? それとも俺の取り越し苦労なのか? それならそれが一番良い。だがそんな俺の行動を見ていた村人は俺に新しいあだ名を付けた。 『女たらし』 『プレイボーイ』などなど。時期がきたらキチンと説明しないとダメだな。



 最終日が訪れ、翌日レオナ達は帰る事となる。そんな彼女達を村長が労をねぎらいたいと、寄合所でささやかな宴を開く。静まり返った深夜、ついにその時が訪れた。


 

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