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三話

この話でストック切れ起こしました。

金髪少年は彼女の反応に満足気に、今度は私に振り向いた。正直此方を見るのはやめて欲しい。人差し指を向けるのもやめて欲しい。


私の怯えが伝わったのか、銀之丞が彼に向かって低く唸る。元々大型犬で、その中でも銀之丞は大きく育ってくれたからその迫力は生半可なものじゃ無い。

案の定、金髪少年はビクリと身を震わせて驚いた。周りが急に剣呑な雰囲気に変わる。いかん、偉い人に文字通り牙を向ければ殺されかねない。少し移動して銀之丞を目の前から抱き締める。これで少なからずこの少年による攻撃は私に当たるはずだ。銀之丞を傷付けることは誰にも許さん。


そんな私を見て哀れに思ってくれたらしい大男は少年を後ろに退かし、私の真後ろに、多分目線が合うようにしゃがみ込んだ。金属の揺れてぶつかり合う音がしたから多分ローブの中は鎧か何かだろう。映画で聞いたことのある効果音だ。秘密結社の親玉かと思っていたらまさか鎧男だったとは。

大男改め鎧男はバリトンボイスで私と銀之丞に話し掛ける。まるで駄々を捏ねる子供に言い聞かせるように。


「大丈夫だ、危害を加えるつもりはない。と言っても分からないとは思うが…。」


うん、そういう事にしておいてくれればいい。ワタシワカラナイヨー。銀之丞は犬の中でも歳のせいか随分と人の機微に鋭い。すぐに鎧男に対して、少しだけ警戒を解いたようだ。銀之丞愛してる。

するとこの男、金髪少年がやったように人差し指を此方に向けてきた。反射的に自分でも驚きの速さで後ろに後退る(あとずさる)と背中に衝撃が走る。すぐ後ろが壁だったとは。不覚。


結局肩を掴まれてしまった私はゴツゴツとして革の手袋に包まれた大きな手を視界に入れないべくぎゅっと目を瞑る。初対面の大男におでこを指で突かれるというのは実に恐ろしい。嫌な汗が吹き出して、体の芯から冷えた様な感覚に襲われる。美少女を見ていた時とは比べ物にならない程の時間が流れた気がした。

永遠に続くかとも思えたその時だったが、突然右肩と額に掛かっていた重圧から開放される。その瞬間目をかっ開いて隣に寄り添ってくれた銀之丞を今度は抱っこすると、お腹に顔を埋めた。愛の前に体重など存在しない。今なら銀之丞担いでフルマラソン完走出来る気がする。出来ないけど。


「…? おい、」

「全員早急にこの部屋の魔法陣の消去に取り掛かれ!この二人と、その、獣を部屋から出す!」

金髪少年が命令を下した。一斉に周りが蜘蛛の子を散らすように動き出す。鎧男が何か私に言おうとしたけれど、無視しておく。今聞いたら何かややこしい事になりそうだと直感が告げている。生まれてこの方この手の直感に外れはなかった。


然し、思ったよりこの金髪少年はさして悪い奴でもないようだ。自分に向かって不敬を働いた ― 大変不本意な言い方ではあるが ― 畜生も共に此処から出してくれるらしい。まあ暴れられるのが怖いだけかもしれないが。


ふと思い立ち、銀之丞の黒い首輪からリードを外す。けして人間と対等の扱いがされるわけがないが、銀之丞が人間に脅かされる存在ではない事と、彼は私に従っている訳ではない事を示すためだ。あとリードの金具の部分をうまく使えばちょっとした武器にもなるかもしれないし。

パーカーのポケットとダボついたカーゴパンツのポケットとでどちらに入れておくか迷ったが手の届きやすいパーカーの方に入れることにした。


そういえば、彼女は何枚も重ね着されたお洒落な服装ではあったが下が短めのフリルキュロットに膝下までのロングブーツだったので石畳は痛くなかったのだろうか。聞く機会があれば聞いてみよう。


なんで今さらリードや服装の話をするかなんてちょっとした現実逃避がしたかったからに他ならない。

金髪少年の落としていった爆弾を回収したくない。然し回収しないとこの先良くない気がする。よし、聞こう。たった一言じゃないか。頑張れ私。でもまずは予行演習してから。


魔法陣って何で御座いましょうか?


うん、立派な敬語だ。

意を決して早速近い所にいる誰かに聞こうとすると、腕を引っ張られ無理矢理立たされた。地味に痛い。

さして細くもない腕を一周して余りあるほど大きな手の持ち主はやはり彼の鎧男だった。余りあるほどどころか後もう一本位入るんじゃないだろうか。

ビクビクして顔を伺うと、何処か心配しているような表情が見えた。身長差が5,60cm以上あるだろう彼の顔を見上げるのは大変首に負担がかかるがフードの中を除くのには最適だ。

顔を見て思った。


……このお兄さん目が発光してね?


暗くて分かり難いが、目元にうっすら皺が刻まれていることから私の見立ては間違えていなかったことが伺える。やはり二十代後半だったか。精悍な顔立ちではあるが、目つきが余りよろしくないのでちょっと、いやかなり強面だ。髪の色はよく分からないが黒か深めの色だと推測。肝心の目はどうやら青と緑を混ぜて透明度を上げたような色で、碧色と言うのだろうか。


腕を掴んだのがこの人で、若い人達との接し方が分からない私にとっては好都合だ。気の使い方とどんな話題を振ればいいのかがどうもわからないので初対面の若者にはつい対応が悪くなってしまう。

その点、結構歳の離れた方と言うのはいい。此方が下なのだから対応の仕方や接し方が分かりやすい。お年を召した方なら尚楽だ。


そんな訳で一先ず色とりどりの毛髪軍団に腕を引かれなくて良かったと安堵すると、鎧男に魔法陣について聞く。


「あの、魔法陣とは何で御座いましょうか?」


多分、ちゃんと発音できたと思う。我ながら上出来だ。

鎧男は少し思案すると、口を開いてくれた。


「魔法陣とは、魔術を発動する際、補助として用いられる円や多角形、文字で構成された陣だ。基本的に使われることはないが、大掛かりな術、魔力を大量消費する場合には術者の血液、またはこの白墨はくぼくえがかれる。」


彼は手品師のようにパッとチョークを私を掴んでいる方の逆の手から取り出した。手先が器用な人だ。

ああ、これはあれだ。小説や漫画とかでよく見かけたことがある。ファンタジー物が大好きな私にとっては馴染みの深い言葉だ。


まさか魔法があるような異世界に足を踏み入れていたとは。


文字がつらつら流れて読み難くすみません。 11月25日・改行、余白をとりました。

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