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一話

大型犬好きです。でも小型犬も中型犬も可愛いです。

事の始まりはけして当たり前のことでしかなかった。


いつもの様に愛犬、銀之丞の散歩に出かけて


いつもの様に銀之丞と散歩道を眺めて


いつもの様に信号に差し掛かって


いつもの様に横断歩道を渡ろうとした


横断歩道の途中で急に視界が真っ白になっていき、あまりの白さに目をきつく瞑った。

そして今、私と銀之丞はここに居る。なぜか絶世の美女といっても過言ではないほどの美女もプラスされているが ― 多分彼女も同じ様なものだろう ― 取り敢えず、訳の分からない状況に立たされたことは間違いない。


正直、大迷惑だと喚いて、帰らせろと怒鳴る事も考えた。しかし多勢に無勢、あちら様にキレられたとしたら帰して貰えなくなるかもしれない。それだけは、何としてでも阻止したい。長いものには巻かれろ根性だ。


私、賀山かやま いちは人生初の瞬間移動を成し遂げた。


何処までも平凡、無個性が個性、恋人居ない歴=年齢の女子学生(といっても18歳だからまだ大丈夫なはず。)、母は蒸発、父は他界。祖父母に育てられ今では立派な真人間。そんな私にこんな事が起こるとは一体誰が想像したか。じいちゃんとばあちゃんには散歩行ってきますとしか言ってないから、これ以上此処で居るとなると捜索願いが出されそうだがまあ連れてきた奴らが責任持って帰してくれるはずだろう。異論なんて認めたくない認めない。


かれこれ8年間、共に過ごした銀之丞が側に居るのがせめてもの救いどころか大いなる救いだ。帰ったらご飯をちょっと豪勢にしてあげよう。勿論自腹で。


ちらりと隣の美少女の横顔を伺う。戸惑ってはいるがさして怯えはないように見える。恐怖というより困惑の方が強い、と言ったところか。頑丈な神経ですね。

私の視線に気づいたのか彼女は此方を見た。真正面から見ると本当に美人だ。モデルさんとかだろうか。こんな美人なのにテレビでお目にかかったことがないなんてありえないな。じゃああれか、スカウトとか片っ端から断っちゃうのか。勝気そうな見た目からも押しに強いタイプとみた。


「貴方も、瞬間移動してきたの?」


先程よりは幾分しっかりした声音で彼女が声を掛けてきた。どうやら彼女も同じ結論に至ったようだ。声を出すほどの気力はなかったので頷いておく。


「そう。…ところで、さっきからあの変質者達は何を言ってるの?何処の国の言葉よ。」


少女の独り言のような呟きに、回想に思いを馳せていた私は日本語じゃないのかと愕然としつつも周りに耳を澄ましてみる。国まで違うとは思ってもみなかった。然し騒がしいには騒がしいが、既に声のトーンを落としてボソボソと話すものだから全く聞き取れない。いや待てよ? 変質者って当てはまり過ぎて寧ろ笑いがこみ上げてきたんだが……いやいやそうじゃない、この目の前にいる大男だ。こいつが問題だ。さっき喋ったろうお前。ちゃんと意味が分かったのと混乱していたのとでうっかり聞き落としていたが、この男は聞いたことのない言葉を口にした。これでも英語は得意な方だし、フランス語やスワヒリ語とかにも興味があったからネットで聞いたことがある。然しどうもこの男の発する言葉は妙だ。よく空耳で日本語に聞こえるというものがあるが、それがない。音の発音からして違うといえばいいのだろうか。音を言葉にして表すのは難しいが、そんな感じだと思う。漫画とかで使われる効果音も実際の音とは結構異なるものだ。

つまり、この男の発した言葉は耳では聞き取れるが文字に表すことができないのだ。多分、喋ろうと思えば出来るが言葉では表せない。


ここは、どこだ?


ふいに漠然とした不安が一気に襲いかかって来た。言葉の意味は分かる。けれど、言葉を知らない。此処が何処かも全く分からない。まるで、世界が違うようだ。

不安で青ざめていると銀之丞がぽふ、と私の太ももに顎を乗っけてきた。くそ、可愛いな。シベリアン・ハスキーで大型犬の癖にその愛くるしさは反則だと常々思う。


単純な私は銀之丞に元気づけられ、もう一度辺りを見渡してみた。いつの間にかあの大男が居なくなっていたので視界は良好。此方に向けられる視線は美少女へと向かっているので気にすることもない。


さて。


見渡して見ると、全員既にフードを外し、黒の結社から色とりどりの毛髪軍団へと早変わりしていた。色とりどり過ぎて若干引く。然し巧く染めている、地毛じゃないかと疑うほどだ。けれど黒髪もちゃんといたので一安心。ヨカッタ。

敵、とはまだ決まっていないが取り敢えず相手はこの場に8人、さっきの大男で9人。赤青黄緑桃黒紫橙、本当に色とりどりだ。大男はフードを脱いでいるところを見ていないから分からない。然し全員若い。リーダー格の大男は声からして二十代後半か三十代かと思っているがこいつらが若々しいのでもしかしたら違うかもしれない。


どうも、表情を見る限りサクッと殺してしまおうという感じではない。大男が失敗したように言うのだからちょっと心配だったのだがまあ、一先ずもう一安心。


その時だった。




私は猫派と言い張ります。11月25日・改行、余白をとりました。

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