表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

別れ、そして集結

真っ白な光に呑み込まれる感覚が体を襲う。

一瞬とも思える時間の間に、VRMMOの世界『アームド・ワールド』の地面に降り立っていた。

「やっぱ今思うと不思議なんだよなぁ」

現実に似すぎ、いや現実より高性能で本当にこれがゲーム?と疑いたくなる。

歩いている(AI)も、レンガ造りの家も、売っている食べ物も。全てを。

「んなこと考えたって何にもなんねぇしなぁ」

このゲームのマスターキーとか、システム操作権限がないので何を言ってもしょうがない。

俺がダイブしたのは現実世界で二時と十分ほど。

なぜ『現実世界で』と言う言葉が必要なのかと言うと、この世界は一日は十二時間。

ちょっと言い方がおかしかったな。十二時間で一日経つ設定になっている。

だから今はこの世界だと四時に当たる。だから辺りはやや暗い。お日様がひょこっと顔を出しているだけだ。

「やあ、もう来たのかい?征哉」

「おお、少し待たせちゃったみたいだな」

「気にすること無いって。速くて二時って言っていたのに十分しか遅れていないんだからね」

といってさわやかな笑みを浮かべる希。

「そうだ、今日は日曜日だから藤山家だけでの特訓だよね。どんなことをやったんだい?」

と質問してくる希に対して。声音を変えずに答えた。

「準備運動でフルセット千回だろ―――」

「人間とは思えない特訓量だね。もういいよ」

「そうか?」

ちなみにフルセットとは、腕立て伏せ、腹筋、背筋、スクワット。そしてその派生系(例で言うと、腕立て伏せ人差し指だけとか)のことだ。

「そうだ、これを征哉に」

希はステータスウインドウを開き、何かを実体化。光の粒子のようなものが一点に収束し始め、姿をかたどってくる。やや小さめだが、なじみのある、やや弧を描く、鈍いねずみ色のような光沢を放つ、鋼鉄の塊。

「この時間じゃこれが限界だった。大体刃渡りは六十くらい。小太刀さ」

「サンキュー。さすがだな、俺の幼馴染みは一味違う」

どうやら俺が帰った後に希が特別に作ってもらうためにせっせと働いていたらしい。

「すまねぇな。こんなことまでしてもらっちまって。そういやログアウトしたのか?」

女子特有の甘い香りに、戦場特有の硝煙の匂いが混じっていた。

ログアウトするといろいろな状態はリセットされるらしいし。

というかここまでする硝煙のにおいはついさっきまで銃をバチコン撃ってた感じの匂いなんだが。

「ログアウトしなくても空腹感はこっちの世界で誤魔化せるし。それとこのにおいは気にしないで。ちょっと前にクリアタウン(ここ)でちょっとしたイベントがあってね。まあ、私のレベルじゃ対した退屈しのぎにすらならなかったけど」

「そのイベントっつーのは?」

「傭兵団と暗殺者の二十人組みが押しかけてきたって話」

「へぇ、それ面白そうな話なのになぁ。ああ、俺も人型の敵と闘いてぇ」

「じゃあ、闘う?」

「え?」

素っ頓狂な返答。

面白かったのか希は俺を見てクスリと笑って、説明してくれた。

「この先にある街があるんだけど、その町だと会ったらすぐに喧嘩バトル吹っかけていいことになってるんだ。もちろん両方の同意が必要だけど」

「へぇ、面白そうじゃん。早く行こうぜ」

「ほんとだったらもっとついていきたいんだけどね」

希が残念そうに話す。

「これでも私《先行攻略隊》の一員なんだ」

「《先行攻略隊》?」

「そう。このゲームの最前線にいる人たちのことを指す言葉なんだけどさ。私は《五帝》たちや《必殺の魔弾タスラム使い》、《銀麗の魔銃士ロングシルバー・エクステイント》、《竜王殺し(ドラゴンキラー)》とかと比べるとマイナーだからね。ちなみに私のLVは68。二つ名は《魔技の女王クイーン・オブ・インヴィジット》。あのとき見せた『瞬く間の銃撃(インスタンティング)』。あれを見るのはいつぐらいになるかな。少なくとも一ヶ月はかかるね。まあ」

無防備な後ろ姿を俺に向け、手を振ってこう言う。

「征哉が、60以上になれば変わるだろうけど。あ、次の街はそこの森『ミストガーデン』―――通称、霧隠れの箱庭を抜けた先にあるよ」

そして、

転移結晶ワープオーブ発動アウェイク門展開ゲートオープン悪魔の洞窟(ヘル・ゲート)

そう呟いた希は攻略が終わったら、と呟き現れた光の門をくぐると

その姿はまるで嘘だったかのように掻き消えていた。




「さーてと」

ザッ

地面に生えた膝くらいまである草を踏みしめる。

今は頼りになる幼馴染みの姿は無い。

元々二ヶ月くらい前くらいに発売したゲームだ。アイツとかなりのレベル差が合ってもおかしくない。

その差六十以上。そのうえあの銃撃は見えなかった。おそらく抜いて、撃って、ホルスターにしまう。この単純な抜き打ちと言う動作でも、極めれば恐ろしい攻撃になる。

抜刀術の銃撃版とでも言うのだろうか。抜刀術のスキルがあるからだろうか?その能力は計り知れない。

同等、もしくはそれ以上と本人が言うくらいなのだから、あいつよりも強い奴はもっと凄いはず。

俺を置いていくのにも正当な理由だ。レベルが違うのに、ついていけるわけがない。

まず目指すのは、なんか不気味なオーラ漂う魔の森ことミスト・ガーデン。

とあるモンスターを除けばリザードマンより弱いらしいから特に問題ない。

「伏兵なし、いくか」


「おーい、そこの大きなお兄さん!」


おっとアブねぇ。急に声をかけられてこけるかと思ったぜ。

「ん?アンタ誰だ?」

身長は160くらいで、たぶん年上。

カールのかかった長い茶髪の女プレイヤーだ。

「私はルナ。唯一の鍛冶師をクリアタウンでやってたんだけど、大したアイテムが手に入らないわけよ。だからここを抜けようと思ったんだけどさ、あいにく私の腕前は焼付け刃ぐらいだしここを抜けられないからいっしょにどうかなって?いいかな?」

「ああ。いいけど」

俺は二つ返事で返答する。

「ありがとう。えーと、お兄さん名前は?それとソロプレイやってるの?」

「俺は藤山征哉だ。レベルは6。さっきソロプレイを始めた」

「あまりフルネームで言わない方がいいわよ」

「そうなのか?じゃあありがとうだな」

指摘されたので、俺は気をつける。

『間違ったことはすぐ直せ』これも俺んちの家訓だ。

「さっき?それってどういうこと?」

「まあ簡単に言えば・・・レベル差。実力の違いだ」

「どのくらいなの」

「約60」

「ろ、ろ、ろろろろ、ろくじゅう!?それって《先行攻略隊》じゃないの!もしかしてあののぞむって人ですか!?」

「お前と会ってたんだ、あいつが。幼馴染みなんだ。そういやあいつからこれ作ってくれとか言われなかったか?」

といって先ほどもらった(?)小太刀を取り出す

「あー、それそれ。それって征哉のなの。どういう闘い方してるわけ」

ややお調子気味にけらけらと笑うルナを半眼で睨み

「ふざけたまねしってっと驚く羽目になるぜ」

といって抜刀術奥義(小太刀は鞘付きだった)の『菊一文字』を放つ。

正面の草が鎌で刈り取られたかのようにスパッと切れていた。いや『斬れていた』。

ちなみにルナは口を開けポカンとしていた。

「っ!確かに君の執念だけは分かった。その一太刀だけにかなりの時間を費やしたんだね」

「いや、今さっきが練習であり本番だったんだけども」

「うんうん、その極めるってことは理解でき―――ってえぇぇッ!?」

「なんだうるさいな」

「あ、ごめんうるさくしってってちがぁぁぁぁう!!」

「静かにしろ来るぞ」

「来るって何が・・・?」

すぐ側の草むらから狐型モンスターが出てきた。黄色い体毛のモンスターだ。

「ちなみに参考で聞いておくけど、なんで分かったの?」

「気配」

「訊いた私が馬鹿だった見たいじゃない」

「そんなことよりも戦いに集中しろ」

「はいはい」

やや呆れ気味のような感じでホルスターから拳銃を抜く。

何処に呆れる要素があったのだろう。そう訊きたくなった。

「シィッ!」

ただ突っ込むと言う単純な攻撃を左手の『断罪』で迎撃。

まあいいか。見たって言わなきゃわかんねえだろ。

これが藤山式剣闘術とその裏を交えてるなんてな。

つか今思っても遅いし、第一『菊一文字』も使っている。

「何、今の攻撃!?」

「ただの拳打だが」

「嘘よ、殴ったところでこんなっことができるはずが」

「例えば、俺が空手とか習ってれば話は別じゃないのか」

「仕方ないわ。征哉くんがきちがいなでたらめ拳法使いってことにしておくよ」

「まあ、それでいい」

俺のストレートに吹っ飛ばされた狐は再び突進してくる。

俺は受け流すような体制で、身体を斬る。

相手のHPバーが五割以上削られ、多大のダメージをたたき出す。

残りは風前の灯。俺は

独自の構えを取り

餓者髑髏がしゃどくろ

握った拳を突き出す―――

絶妙な捻りの入ったコークスクリューが炸裂。俺の手に嫌な感触を残し、吹き飛ばされた狐はピクッとわざとらしい痙攣を起こしパタッと倒れた。

「ふっ、つまんな」

「これじゃああたしの出番無いかも」

何か硬い意思を持ったかのように絶対的強さがある。

そう思っても違う。俺は最強と言うわけではない。なぜなら


この世界は現実ではなく仮想現実。レベルがものをいう世界。





今の俺では闘う以前の問題もあるってことを忘れていたからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ