硝子に恋した。
真っ直ぐな恋愛物は書けません。
私は恋をしました。
スタイルが良くて、顔も良くて、オシャレな彼に。
恥ずかしながら一目惚れでした。
彼の隣には、いつも彼と同じくスタイルも顔もセンスも良い女性がいます。
ガラスケースの中の、私の手の届かぬ世界で、彼らはいつも一緒に寄り添います。
私は彼女になれません。
少しでも彼に近づきたいと、私は美しくなる努力をしました。
なんでもしました。
美しくなるまでは彼に会うのも我慢しました。
何年か時が経ち、私は彼の元へ向かいました。
そこに彼はいませんでした。
彼の隣の彼のような彼女は、表情一つ変えずに新しい男と腕を組んでいます。
私は失恋しました。
「ねぇ、ちょっとちょっと!」
途方に暮れた私は、知らない男に着いて行きました。
私は、服を着て本に載るというだけの、
モデルというつまらないことをしてお金を貰うようになりました。
沢山の男の人が私に良くしてくれたけど、
彼は現れませんでした。
自分にも他人にも興味はありませんでした。
ああ、無機質な王子様。
あの光りのない瞳!どこまでも無な佇まい!
私はまだ、恋が出来ない。
ある日、また彼がいるのではないかとガラスケースを覗きました。
息を呑む音が聞こえました。
なんて美しいのでしょう!
私は、ガラスに写る美しい美しい女性を見つめました。
すると向こうもこちらを見てきたので、私は走って逃げました。
私はあの、無機質な王子様を一瞬で忘れることができました。
私はあの女性に恋をしました。
私は一生、あの人以外を愛することは無いでしょう。
ショーウインドウの恋。
読んで下さってありがとうございました。
彼はマネキン、女性は美しくなった自分です。
現代版ナルシストですね。