待ち合わせは いつもの場所で
ぼくの さんぽ道は
まいにち 同じ。
でも
すこしだけ
気になる 場所が ある。
それは
大きな 家の
まどの そば。
ぼくは
においを かぐ ふりをして、
ちらっと
まどを 見た。
まどの むこうに
大きな ソファーが あって、
なにかが
そこに いた。
べつの 日。
それは
ワンコだと わかった。
いつも
同じ 場所で、
同じ かっこうで
ねていた。
いつも ここに いる。
どうしてだろう。
だから ぼくは
いってみた。
「ワン!」
ソファーの ワンコが
クッっと
首を うごかした。
あれ?
いま……?
それから ぼくは
まいにち
いってみた。
「ワン!」
ある
あたたかい 日。
庭で
その ワンコは
ねそべって
ひなたぼっこを していた。
近い。
ぼくは また
いってみた。
「ワン!」
すると
人が
こっちへ きた。
「この子はね、
もう 動けないの。
でも
あたたかい日は
こうして
ひなたぼっこを
するのが 好きなのよ」
「あなたね、
いつも
お話し してくれてるの」
「お庭に
はいってみる?」
ぼくは
もっと もっと
近くへ いって、
ドキドキ
あいさつを した。
その ワンコは
ゆっくり
目を あけて、
ぼくを 見てくれた。
うれしくて、
ぼくは
この子の よこに
ずっと いたいと 思った。
それから ぼくたちは
なん日も
いっしょに すごした。
雨の日は
会えなかった。
心が
すこし
しずんだ。
でも
会える日を
ちゃんと
知っていた。
そんな
ある 日。
ぼくは
あの子の
おたんじょうびに
よばれた。
かのじょは
パーティ帽を かぶって、
ソファーに
横に なっていた。
ぼくは
「おめでとう」の キスを した。
かのじょは
ニコッと わらった
気がした。
その日は
とても たのしくて、
かのじょも
うれしそうに 見えた。
おたんじょうびの あとは、
また
いつもの まいにち。
いっしょに
ひなたぼっこを して、
いっしょに
季節を 感じた。
そんな
ある 日。
くも ひとつない
青空の 下、
かのじょの
すがたが 見えなかった。
きのうまで
ここに いたのに。
ぼくは
いつもの 場所で
待っていた。
でも
だれも
こなかった。
すると
あの人が でてきた。
「あの子はね、
きのうの 夜、
そっと
ねむるように
いったの」
ぼくは
なにも 言えなかった。
「ありがとう」
あの人は
そう言って、
ぼくの あたまを
やさしく なでた。
「あの子の
さいごの
お友だちに なってくれて
ありがとう」
今日も ぼくは
あの まどの 前を とおる。
だれも いなくても、
ちゃんと
おぼえてる。
——おしまい。
お読みいただきありがとうございます。
この物語は、先代犬との思い出から生まれました。
亡くなる前の日、散歩の途中でお友達犬に「こんにちは」と挨拶をしました。
それが、あの子の最後のごあいさつになりました。
何気ない一瞬が、あとから宝物になることもある。
そんな想いを込めて書きました。




