第24話:勇者レオンの空虚な演説
しばらく22時30分に1話ずつ更新しますね。
王都ブランシェットの地下から、突如として青い光が溢れ出した。
カイルがかつて築いた旧式の防壁が、アルスの要塞から送り込まれた莫大な魔力によって強制起動したのだ。闇を切り裂くその光に、絶望していた4万の民衆は、救いを求めるように空を仰いだ。
だが、その「光の正体」を見誤った男が一人いた。
「見たか、民よ! 我ら王国の正義は、未だ神に見捨てられてはいない!」
王宮のバルコニーに現れたのは、黄金の甲冑を纏った勇者レオンだった。
彼の背後には、やつれながらも権威を繕おうとする聖女セリアと、冷笑を浮かべる国防卿バルガスが控えている。
「この光こそ、我ら選ばれし者が放つ希望の証! 魔潮など恐れるに足らん! 私が、この聖剣レヴァーテインを振るう限り、王都は不滅だ!」
レオンの演説は、広場を埋め尽くす民衆へと響き渡る。
だが、その言葉はあまりにも「空虚」だった。
民衆が求めているのは、勇ましい精神論ではない。渇きを癒やす水であり、胃を充たすパンであり、明日を保証する「数字」だ。
【判定:勇者の演説、市場価値ゼロ】
【現状:民衆の視線はレオンではなく、その背後の「青い光」の出所――要塞グラナードの方角へ向けられている】
「……笑わせてくれるな。自分の剣のリーチさえ、見積もれない男が」
要塞の司令室で、ミラが映し出す王都の映像を見て、アルスが吐き捨てた。
「主様。王都の民衆、レオンの言葉への反応速度が当初の30%以下に低下しています。……一方で、私たちの魔力供給に対する『感謝の熱量』が、無意識のうちに数値化され始めていますね」
ミラの横で、魔導主任のリンが冷ややかな笑みを浮かべる。
「当然です。彼らを温めているのは、レオンの正義ではなく、私たちが送り込んでいる『熱』なのですから」
実際、広場の民衆はレオンの演説を聞きながら、その手には「グラナ」を握りしめていた。
セドリックが流布し、エレーナが管理し、アルスが命名した、唯一の信頼の証。
「レオン様、万歳……」
民衆の誰かが、力なく呟く。それは賞賛ではなく、これ以上演説を聞かされることへの「義務感」に近い。
彼らが本当に見ているのは、勇者の甲冑ではなく、王都の地下水路を再び満たした「透明な水」だった。
「主様。王都内の『グラナ』の流通価格が、演説の最中にさらに15%跳ね上がりました」
エレーナが報告する。
「人々は、勇者の言葉よりも、自分たちの命を繋いでいるのが『誰の魔力か』を、本能で察し始めています」
アルスは手帳にレオンの名前を書き込み、その横に大きく「×」印を引いた。
「レオン。あんたの演説は、ただの『損失』だ。……エネルギーの無駄遣いに過ぎない」
アルスが合図を送ると、要塞からの魔力供給がわずかに「脈動」した。
一瞬、王都の青い光が揺らぎ、消えかける。
「ひいっ!? 光が、消える!?」
「レオン様! まだ魔物が残っています! お助けを!」
怯える民衆。レオンは慌てて剣を振り回すが、消えかけた光を繋ぎ止める術など彼は持ち合わせていない。
アルスが指先一つで魔力を戻すと、再び光は安定した。
「……ミラ。王都の連中に、真実を叩き込め。……勇者に命を預けることが、どれほどの『赤字』であるかを」
「了解しました、主様。……『グラナード通信』、王都全域に強制介入します」
レオンの演説を遮るように、王都中の魔導投影機が、要塞のロゴと「現在の物価指数」を映し出し始めた。
それは、勇者の時代の終わりを告げる、非情なカウントダウンだった。
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