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『鑑定が遅い』と追放された見積士、寿命と原価が見えるので要塞を最強にする  作者: 霧原なぎ
要塞建国編

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23/42

第23話:ミラによる「魔潮(ストーム)」再鑑定

今日から毎日22時30分頃に更新します。

主様マスター。王都を覆う魔潮ストームの濃度が、当初の見積もりを20%上回りました」


要塞の司令室。ミラ・アストレイが映し出すホログラムには、王都ブランシェットを飲み込もうとする、巨大な漆黒の渦が映っていた。隣では、魔導主任のリンが精鋭の魔導師たちを統率し、観測データのノイズを削ぎ落としている。


「……王都に残された4万2千人の『生命活動』が、魔潮ストームをより強固に引き寄せています。このままでは、あと72時間で王都は物理的に消失。……そして、その余波バックドラッシュは、我が要塞の防壁をも削り取るでしょう」


ミラの鑑定は冷徹だった。

王都が崩壊すれば、そこに残された4万人の命が「魔力の残滓」となり、魔潮をさらに巨大化させてしまう。それは要塞にとっても最大の不利益だった。


主様マスター。……見捨てますか?」


リンが、静かに、だがどこか期待を込めたような瞳でアルスを見た。彼女はかつて自分を切り捨てた王都に未練はない。

だが、アルスは手帳を開き、ペンを走らせる速度を上げた。


「……ミラ。4万人全員を要塞に入れる『コスト』を計算しろ」


「え……? ですが、現在の最大収容人数は5,500。物理的に不可能です」


「『入れる』のではなく、『維持する』コストだ。……カイル、聞こえるか」


通信機から、土木魔導師カイルの返声が届く。


「おう! 聞こえてるぜ、アルス様。……まさか、あの4万人を引っ張ってくる気か?」


「カイル。お前が王都の地下に引いた『旧式の下水道』と『補強壁』、まだ操作権ルートは生きているか?」


「……! ああ、俺が作ったもんだ。バルガスの間抜けたちが弄ってなけりゃ、バックアップ回路から強制起動できるぜ」


アルスの見積もりが、一つの巨大な「救済計画」を描き出す。


「ミラ、リン。要塞の魔力を王都の旧回路へ『逆流』させろ。王都を救うためじゃない。王都を『要塞の外郭(防波堤)』として再定義する」


広場の中心に立つアルスは、手帳に記された数字を市民たちへ、そして通信を通じて王都へも響かせた。


「これより、王都の4万2千人を『一時避難資産』として計上する。要塞への入国は認めない。だが、王都の地下に残るカイルの防壁を、我が要塞の魔力で遠隔起動させる」


それは、アルスにしかできない「命の見積もり」だった。

要塞の豊かな魔力を、カイルの残した遺産を通じて王都へ送り込み、王都そのものを巨大なシェルターに変える。


「……ただし、タダではない。王都の住人には『負債の支払い』を命じる。魔潮が去った後、生き残った4万人は、全員が我が要塞の『下請け労働力』として、この荒野の開拓に従事してもらう」


【判定:王都全域の「外部委託アウトソーシング化」】

【定義:4万2千人の命を、将来の労働力として前借り(ローン)で救済する】


「……ふふ、やっぱり主様マスターは、ただの冷血漢じゃないわね」


ミラが口角を上げ、超高速で魔力分配の数式を書き換えていく。


「リン! 結界の出力、王都の地下回路へ同期開始! 1ミリの誤差も出すなよ、4万人の『資産』が溶けるわ!」


「了解です、ミラ様……! 全魔導班、同調開始!」


要塞から放たれた青い閃光が、闇に包まれた王都の地下へと潜り込んでいく。

アルスは、冷徹に数字を見つめていた。

彼は、命を捨てない。

それが、どんなに絶望的な状況であっても、利用価値がある限り。


「見積士」アルス・ロベントにとって、4万の命を救うことは、未来という巨大な利益を掴み取るための、当然の投資だった。

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