表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『鑑定が遅い』と追放された見積士、寿命と原価が見えるので要塞を最強にする  作者: 霧原なぎ
要塞建国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/41

第20話:金融センターの確立

「……サインしろ。それで、あんたたちの孤児院にパンが届く」


アルスが差し出したのは、羊皮紙一枚に収められた、あまりにも簡潔で残酷な「資産譲渡契約書」だった。

そこには、聖教会が数百年かけて信徒から吸い上げた王都の一等地、および分教会の敷地すべてを「グラナード要塞」の所有に帰属させると記されている。


「これを書けば……教会は、神の家ではなくなるわ……」


震える手でペンを握るセリアの背後から、冷徹な声が追い打ちをかける。


「神の家であっても、冬の寒さと空腹は凌げません。……今のあなた方に必要なのは『祈り』ではなく、アルス様が保証する『熱源』と『食糧』のはずですが?」


財務長官のエレーナだ。彼女はかつての主計官としての知識を総動員し、教会の隠し資産までもすべて暴き立てていた。


「くっ……。……わかったわよ。サインすればいいんでしょ、すれば!」


セリアが涙を浮かべながら署名を書き終えた瞬間、アルスはそれを無造作に回収し、背後のセドリックへ投げた。


「セドリック、手続きを開始しろ。今日から王都の教会跡地は、我が方の『物資集積拠点』として再編する。……ミラ、リン。王都へ行き拠点の周囲に、王宮の干渉を遮断する結界を張れ」


「了解しました、主様マスター。……王都の心臓部に、我々のくさびが打ち込まれましたね」


これにより、王都のど真ん中に「要塞の飛び地」が完成した。もはやバルガスの兵ですら、許可なく教会へは立ち入れない。

このニュースは、周辺諸国や大陸全土の商会を震撼させた。

「あの聖教会が、土地を売ってまでグラナ(白い石)を求めた」という事実は、どの外交文書よりも重い「信用の移転」を意味していた。


数日後。

要塞の門前には、王都の亡命者だけでなく、豪華な商船旗を掲げた馬車が列をなした。


「アルス・ロベント卿! 我が『金銀貿易商会』の全資産、金貨五百万枚を……いや、その素材価値分の『グラナ』として預かっていただきたい!」


「我が都市の予備費もだ! 王都の銀行(金庫)はもう信用できん。グラナードの金庫に置かせてくれ!」


【判定:大陸金融センターへの昇格】

【現状:預金総額 8,000万グラナ相当突破】

【信用:不変の物価指標、および教会の土地を飲み込んだ圧倒的資本力】


執務室の窓から、増設される巨大な地下金庫を眺めながら、アルスは手帳に新たな数値を刻んでいた。


「……セドリック。預かった資産を遊ばせておくな。……カイルとベックを呼べ」


「ククク、次は何を建てるおつもりで?」


「『信用』を積み上げたなら、次はそれを『物理的な壁』に変える。……人口5,000人突破に備え、第二外郭の建設を開始する」


アルスの視線の先。

カイルが設計図を広げ、ベックが精鋭たちを率いて、没収した金貨から鋳造された「魔導補強材」を運び込んでいく。

もはやここはただの要塞ではない。世界の富が集まり、新たな秩序が産み出される「金融の城塞」となっていた。


一方、空っぽの馬車で王都へ戻るセリアは、握りしめた一握りのグラナを見つめ、虚脱したように呟いた。


「……私たちは、神ではなく……あの男を信仰することになるのね……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ