魔法国貴族院統括部からの呼び出しとか面倒くさ〜い
「面倒くさい〜帰りたい〜」
セティア、お前またそんなワガママ言って! 大人らしく、もっとしゃきっとしなさい!
「何でぇ〜......せっかく気持ち良く寝てたところを邪魔するようなヤツらを守らなきゃいけないんだよ〜」
もう、駄目でしょう? 魔法国の皆さんを守るのが、ボクたちのーーー勇者パーティの役割なんだからっ!
「でもアタシたち二人だけで、魔王軍相手に何ができるんだよ〜......前回はギリギリ誤魔化せたけどさぁ? 今回は無理だよぉ〜」
きっと大丈夫。ボクたちなら、今回だってどうにかなるさ! この嘘のマジシャンこと山田 勇がいるんだから!
「......お前さぁ。その話し方なに?」
「え? ああこれ? もちろん、今から魔王軍と戦闘になるかもって状況に備えて、マジの勇者っぽい言葉使いを練習してたんだよ。もしかしたら、言い回しだけでどうにか魔王軍を誤魔化せるかもしれないだろ」
「お前は無意識のなかでは、自身がマジの勇者ではないということを認めてしまっているんだな。かわいそうに」
「じゃあそのマジの勇者じゃないかわいそうな俺に弟子入り志願してきたセティアさんは何なの? っていうか、さっきはよくもあれだけ暴れてくれたね。お前自分が居候ってこと分かってる? 宿代全然払わないしさぁ」
「うるさい」
ーーー魔法国の政治、国防(主に魔王軍から)など、国に必要な機能を一手に担う人口五千万人の都市。またの名を、王都。
国の中央区たる王都のさらに中央部で、息を潜めるように活動する貴族院統括部ーーー国防担当の業務を主立って担当しているらしいが、アンマリその内容は知らないーーーに、俺とセティアは重い足取りで向かっていた。
向かう道中、周囲には色とりどりの服にお高そうなダイヤやらルビーやらの装飾品を身につけた紳士にご婦人が、石畳の地面の上を俺たちとは逆方向へ歩いている。
俺とセティアが王都へ行くのは今回で二度目だ。つまり、この群衆の流れに対して『すみません通ります! すみません通ります!』とぺこぺこしながら逆走するのも二度目。
最初、王都に来た時はこうして人々が一定の方向へと向かって歩いている様子に大きな違和感を感じたものだ。だって変でしょ。何かの祭り? ......にしてはみんなアンマリ楽しそうに見えないし、当時の俺は、この異様な状況にただただ『変なの〜』とか思いながら、呼び出された貴族院統括部へと向かうしかなかったわけだ。
ーーーしかし今の俺には、こうして大量の富豪たちの隙間を縫うように歩く羽目になっている理由が分かる。
その理由と、つい一時間ほど前に王都から《勇者パーティ殿! 魔王軍が襲来!》みたいなお呼び出しを食らったことは、決して無関係ではない。簡単に言えば、この宝石類を全身へ所狭しとくっつけているお金持ちの面々は、王都へとまもなく到着するであろう魔王軍から逃げているわけだ。
王都の国民たちが、魔王軍の侵攻という危機に際しているにもかかわらず、彼らの足取りが意外とフワフワしていて『今日の夕飯は何にしようか』とか話せちゃうのは、日本で地震が起きすぎてみんなの脳内警戒アラートが、ぶっ壊れてしまっているのと似ているのかもしれない。
「もぉ〜......何でこんな狭いところ通らないといけないんだよ〜。アタシの魔法使えば空飛べるじゃん」
「空飛ぶ魔法はスキル練度がめちゃくちゃ高くないと使えないだろ? 街中でそんなの使ったら、俺たちが勇者パーティだってバレちゃうぞ」
「えぇ。もう良くね?」
「いや駄目だ」
「だるぅい......早く帰って煙草吸わせろよオラ」
「痛! 蹴るな!」
勇者パーティこと俺たちはちょっと不機嫌であった。
俺に関しては、ここで勇者たる地位をいつまで誤魔化せるか、という不安に苛まれているから。
セティアは、眠りを間接的にではあるが魔王軍に邪魔されたから......
俺たち二人は、一時間ほど前まで王都郊外の宿屋にいた。そこで、三週間ほどぐうたら生活を送っていたわけだが、恐れていた二回目の《魔王軍襲来による勇者パーティ呼び出し》が発せられてしまったので、仕方なく王都へ来た......
前回の呼び出し時は、俺がこの異世界に転移してきてすぐだったこともあって、お手並み拝見みたいな雰囲気の弱いモンスターの群れが王都へ来襲しただけのいわばボーナスタイムだった。
弱いとはいっても、普通に魔法とか使えない俺じゃ囲まれたら終わるので、その辺はセティアに任せてどうにかしてもらった。でも、今回はちょっと話が違うのだ。
ーーー貴族院統括部の情報によると、今回派遣された魔王軍は《ルミナスヴィーレン・ドラグニール》とかいう言いづらい名前の、なんか強いドラゴンらしい。
セティアいわく『お前の少ない体力ゲージじゃ、戦闘開始三秒でお前の名前はなんか書店の絵本とかで、永遠に語り継がれることになるだろう』ということらしい。それ死んでるよね俺。しかも営利目的で使われてるし。
体長は直立状態で百五十メートルーーーそれを聞いた俺の『本当にメートル? センチの間違いじゃ?』という返答を聞いたセティアは『いや女の子の身長か』とついツッコミを入れたーーーという、もはや小細工じゃどうにもならないレベルのでかさ。
しかも火は吹くし氷で固めてくるし毒で動けなくしてくるしで、過去戦った王都直属の軍隊ではまるでどうにもならなかったらしい。
なので、勇者たる俺が呼ばれたわけだ。
うん無理。はい無理!




