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セティアさんは二十六歳独身(笑)

おもしろかったら☆☆☆☆☆で評価お願い♡

「はっはっ......く、くそ......まだ追ってくる......」

「当たり前だろうが! だからやめようぜってあれだけ言ったのにぃぃぃ!」


小柄こがらな少女は、逃げる。

となりを走る少年も、少女にやや遅れをとりながらも、逃げる。


「何なんだよ、別に一個貰ったっていいじゃないかぁ!」

「何だそのザコ敵が死ぬ時みたいなセリフ」

「おいザコってのは、魔法の一つも使えないお前のことか? 勇者様」


翡翠ひすい色の揃えられた髪をなびかせた少女は、ただひたすらに逃げる。文句もんくを垂れているのは、このモンスターだらけの森の最奥部まで突き進むことになったのが、彼女のせいではないからだ。


なので、彼女が今こうして愚痴ぐちを垂れ続けているのも至極しごく真っ当なことであると言える。

 

屈指くっしのレアアイテムと名高い《ミルフィーユ・ラビットの卵》をその華奢な身体で抱きしめ、決して取りこぼさないように軽やかに走るその人物と、もう一つの人影はーーー


「あああやめろ! お前に『ざぁこ♡』とか言われても寒気がするだけだ! おぇぇっ!」


一応は、この世界の勇者様と言われる存在であった。


「はぁーっ!? ♡なんか付けてないわ! アンタの元いた世界の伝統をこっちの世界に持ち込まないでもらえるかなぁ!?」

「うるせー二十六歳独身! 俺たちの伝統を馬鹿にするな! いい歳して恋人できたことない自称魔王軍幹部(笑)」

「お、お前ぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

「ま、待てセティアやめろ! 指先に魔法使用時エフェクトを発生させるな!」


突如、卵を抱えてどたばた走り続けたままのセティアの右手人差し指が、黒っぽい閃光を放ち始める。はじめは小さな光の粒だったのが、少しずつ大きくなりーーー


「ぎゃあああ眩しい! そ、それやめろ二十六歳独身!」

「アタシだってな......い、いつかいい男見つけてーーーそれから......それからーーー!」


ま、まずい。

セティアは涙目になりながら暗黒属性の魔法で俺を消そうとしている。さすがにイジりすぎた。さっきも《マット・フロッグ》の粘液ねんえきでぬるぬるになってぶっ転んで涙目になってたコイツを刺激しすぎてしまった。死にたくなければ、謝れ。マジで謝るんだ俺。


「わ、分かったマジでごめん! マジでごめん! そ、そうだ今日のディナーは俺が作るから! お前が一番好きな《バルバルビル牛のステーキ》にしようそうしようだからその緑色の閃光をしまってもらってもいいかな」

「じゃあ聞くが、一ヶ月前に決めたよな!? 夕飯は交代で作ると! それでは、今日の夕飯担当者は誰だ?」

「俺です!」

「その通り、お前だ! じゃあ、昨日じゃんけん負けて牛を買ってきたのは?」

「俺です!」

「そうだ。司祭しさいに見栄張って『ミルフィーユ・ラビットの卵なんざ、余裕でドロップさせて来ますよ楽しみにしててください』と、出来もしないことをつらつらと豪語したのは?」

「俺ですぅ......」

「今日一番頑張ったのは?」

「お、俺ですぅ......」

「違うアタシだぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「いやそれずるいから......あっあっっああああああ!!!」


結局、五時間以上かけて踏破したあんまり難しくないダンジョン《ミルフィーユ・ラビットの神殿》。

その最奥部から持って来た卵は、二十六歳独身元魔王軍幹部セティア嬢によってぐちょぐちょに破壊されてしまった。


ーーー日本にいた時も、あったなぁ。せっかく買った卵を帰宅中に落として......みたいなこと。


ああ、司祭のおっさんになんて言い訳しよう。

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