都市の外へ
蛍は太守の館から戻ると、あやに白露から如月に手紙を届けるように言われたことを告げた。
「そう。とうとう蛍も睦月の外へ行くことをお許しになったのね」
「私は嬉しいです。ようやく白露様に認めてもらえた感じがするので」
「ふふ、以前お目にかかった時に、白露様はあなたをずっとここに閉じ込めておくわけにはいかないとおっしゃっていたけれど、きっととても心配なさっているとは思うわ。いい、蛍、いざという時は白露様の庇護下にあることを強調しなさい。白露様は有名な方だから、好んで敵対しようとするモノは少ないわ」
「……万が一、その少数に当たった場合はどうすれば?」
「全力で逃げるしかないわねぇ。もしくは壽々花様のお名前を出すか」
「壽々花様のお名前って出してもいいものですか?」
「まぁ、私たちの長でもあるし」
「……そうですね」
壽々花御前と呼ばれるあやかしは少々特別な方なので、あまり気軽に出せる名前じゃない。
誰もが知っているその名前を出されてもなお手を出してくるモノがいたら、それはこの国全体にケンカを売ったも同然だ。
「何にせよ、今日は帰って旅の支度をしなさい。東地区への配達は別の者にやってもらうから」
「はい。明日の朝一の馬車の予約を取ってくれたそうなので、それで行ってきます」
「えぇ、気を付けて行くのよ。まったく、こんな時に塵はどこへ行ったのかした」
「あの……太守の館に塵さんはいました」
「……そう」
塵の居所を知ったあやの笑みがいっそう深まった。
蛍は、帰ってきた時に彼が無事であることを祈るしかないなかった。




