元暗殺者、昼食をとる
少し修正しました!
「ここが食堂よ虚!」
「わぁーっ!」
辿り着いた食堂は広く煌びやかで、まるで別世界のようだった。
目を輝かせながら陽毬達について行き、同じテーブルに座ると、周囲が妙にざわついていることに気がついた。
「キャーッ! Sクラスの方達よ!」
「日乃守様、今日も素敵っ」
「千隼くんかわいー!」
「白羽様、相変わらずお美しいっ……!」
「きゃあっ、朔翔くんと目が合っちゃったあ!」
「南条さん、今日もマジ天使……!」
「ほんっと可愛いよな! ……というか、一緒にいる女子誰だ?」
「わっかんねえ……けど、めっちゃ美少女じゃね?」
「それな! 南条さんと同じくらい……いや、それ以上かもしんねえ!」
「ああ、なんと美しい……あの清らかさ、この手で穢してみたいっ」
……なんか変な声が聞こえたが、気のせいだろう。うん。
「虚ちゃーん。なに食べる?」
「んー……じゃあ、カレーがいいです!」
「了解!朔翔くん、お願いねっ」
「うん? わかった?」
「……一人じゃ無理だろう。俺も手伝うよ」
注文を押し付けられた事に気が付かず、首を傾げながらも引き受ける朔翔。と、それを手伝う燐。朔翔キミちょっと危機感持った方がいいと思うよ……。
そっと保護者を見ると、額に手を当てて深く深くため息をついていた。お疲れ様です……。
「虚、飲み物何がいい?」
「え、ああ……そうですね。何がありますか?」
「紅茶、コーヒー、牛乳、コーラとか……あと、いちごミルクとかもあるよ」
「いちごミルク……」
(飲みたい……!)
甘党の私にはたまらない。
「いちごミルクがいいの?」
燐がにやりとからかうように笑い、私はちょっと赤面した。
「……はい」
「え……虚ちゃん、いちごミルク好きなの?」
なぜか目を丸くして聞いてくる千隼。
「わっ、悪いですかっ……」
「あ、いや……ちょっと驚いて」
(……なんで?)
ちょっと怪訝に思ったそのとき、背後から「ねえ!」と声がかかった。振り返ると、派手な化粧の女子生徒がいた。
「ねえ、アンタ! なんでS席にいるのよ!?」
「え……? えすせき?」
(なにそれ)
何を言っているのだろう彼女は。私それ知らない。
怪訝に思っている間にも、女子生徒は甲高くて耳障りな声でヒステリックに喚き続ける。
「そこはSクラス専用の席よ! 私だって座りたいのに!代わりなさいよ!アンタ、誰が願っても座れないような席に何を平然と__」
「はい、ストップです」
パッと間に誰かが入り込んだ。縁だ。
「虚、こっちよ」
「? はい」
陽毬に呼ばれて駆け寄る。
「陽毬、S席ってなんですか?」
「それを説明しようと思っていたのよ。あのね、」
曰く、S席とは、Sクラス専用の席なのだと。
入学当初、食堂内でSクラスの生徒と同じテーブルに座りたい生徒が殺到。
落ち着いて食べられないということで、こうして専用席ができたのだという……。
(どんだけ人気なんだよSクラス……)
思わず心の中で呟いた。ドン引きである。
もはや怖い。怖すぎる。魅了の魔法でも使ってるの?
というか……。
「あの、私もSクラスですよ?」
先程の女子生徒に向けて言う。
「ハァ? 何言ってんの?」
「彼女は、今日からSクラスの一員なんです。編入生なんですよ」
「…………は」
唖然としている女子生徒。そんなに驚くことかな?
「そーそー! だから絡まないでね、僕らのお姫様なんだからっ」
「な、ぁ……」
何も言えない彼女。グッと唇を噛み締めると、慌てた様子で退いていった。
「たっだいまー! って、ん?なんかあった?」
「いいえ、何もありませんよ」
さらりと笑顔で返す縁。さすがだな……。
「……まあいい。おい虚」
「わあっ、ありがとうございます!」
燐からいちごミルクをもらって、早速一口。
途端にほのかないちごとミルクの香りが広がる。とろりと甘く、喉を滑る。
「んー! とっても美味しいです……っ!」
(さいっこう……!)
頬が緩み、自然と笑みがこぼれた。今までで一番、心から美味しいと感じた瞬間だった。
「久しぶりに飲みました……!」
「好きなのに?」
「時間がなかったんです……というか、ここ一週間まともな食事をしてなかったので……」
「……え? どういうこと?」
「詳しく話してもらいましょうか」
縁の笑顔が怖い。ひぇ……。
「え、えっと……最近ちょっと忙しくて……で、でももう大丈夫です! ちゃんとご飯食べます!」
「……ほんとに?」
ジト目で疑うようにこちらを見る朔翔。ほんとだってば!!
「ほんとです!」
重ねて主張すると、ようやく信じてくれたようで、「……じゃあいいけど」と言いつつ視線を外した。
…………これで実は一週間じゃなくて二週間で、ずっと水と栄養ゼリーだけで済ませてたって言ったらどうなるんだろ。
考えたくもない想像を打ち消すようにカレーを頬張って、今更ながら、こんなに心配してくれる友人たちがいることに、小さく笑みが溢れた。
こんにちは、三時間お昼寝して全く眠くない健康優良児、璃衣奈ちゃんです!
今回はお願いがありましてやってきました。
実は、是非ともご感想をいただきたく思っているのです。ええ。
「仕方ないなあ、やってあげるよ☆」という心優しい方は、是非ともご感想をお願いします!お待ちしてます!
では、またどこかで!