表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元暗殺者、血の匂いがする恋を始めます。  作者: 璃衣奈
第一章 ゆーびきーりげんまん
3/26

元暗殺者、自己紹介する

少し修正しました!

 あれからこの学園についての説明を受けて、理事長を後にした。

 その時、ふと気になってたことを思い出して神楽坂光貴に聞いた。


「神楽坂さん、その匂い、香水ですか?」

「ん? ああ……ここに来る途中で、女に抱きつかれたんだよ」


 そっけない言い方。ちょっとイラッとした。

 ので、少し揶揄うことにした。


「なんで神楽坂さんは私を避けるんですか? そんなに私が嫌いなんですか?」


 憐情を誘うように潤んだ上目遣いで神楽坂光貴を見上げる。視界の端で紫苑悠喜が顔を赤らめたが、お前はターゲットじゃない。


「ちげえ」


 すぐに否定された。

 神楽坂光貴は、何かつらいものを飲み込むような、そんな顔をしていた。


「嫌ってるのは、お前だろ」

「え?」


 意味がわからなかった。神楽坂光貴は、「まずい」というような顔をする。


(どういう意味?)


 少し気まずい空気が流れる。それを打ち破ったのは紫苑悠喜。


「まあ、二人は初対面だろう?これからお互いを知ればいい」

「……はい、そうですね」

(助かった……)


 ……にしても、女の子か。

 さっきはさらりと返したが、今更になって何か違和感を感じた。


(何かが、おかしい)


 でも、一体何が。


「じゃあ、三年生は三階だから。あ、連絡先交換しておこうか」

「はいっ」

「……俺も」

「え、光貴が女子と連絡先を交換するなんて……」

「ふふふ(いい傾向、かも?)」


 そのままそこでぱぱっと連絡先交換して、二階にあるという職員室に向かった。




「ああ、あなたが鳳凰さんですか。話は理事長から聞いています」


 出迎えてくれたのは、三十代後半の男性教師だった。


「担任の榎本です。よろしくお願いしますね」

「よろしくお願いします」

「はい。えっと、ですね。鳳凰さんのクラスはSクラスなんですが……その、何というか、個性の強いクラスなので……学園一」

「こせいがつよい」

「そうです」


 …………待って。


(私の平穏ライフが崩れかけてる音がする!)


 私がわざわざこの“普通の学校”を選んだのは、平穏に、静かに過ごすためである。

 な の に。


(学園一の個性派クラスって何!?!?)


 この学園確か三十以上クラスあるよね⁉︎ ねぇ!?

「そうなんですね。でもまあ大丈夫です」

「そうですか。よかったです。では、行きましょうか」

「はい」


 内心吹き荒れているが表情には決して出さない。ポーカーフェイスはお手のものです。


(でもできれば別のクラスがいいですセンセー!!)


 アーメン。




 ハイやって来ましたSクラス。目の前にはでっかい扉。なんか既視感デジャヴ

 私は今までにないほど緊張している。何故って? ここでビシッと決めなければならないという重荷からだよッ!

 担任?ここに着くなり「じゃあ呼んだら入ってきて下さいねー」とさっさと入っていきましたとも。ええ。

 ……というか、このクラス、なんか人数少ない気がする。多分、十人未満。

 暗殺者をやめてから、もう必要ないと思って少し精度の落ちた暗殺技術。しかしできないとは言っていない。


(まあ私元世界最強ですから!)

「はい、じゃあ入って来て下さーい」

(ギャァーーーッ!!)


 現実逃避終了。心の準備があぁー…………。


「……はぃ」


 声が震えた。この常に冷静沈着な私が……。

 ガラリと扉を開けて中に入る。同時に、甘い花のような香水の香りが漂ってきた。思った通り、ほんの五人分の視線が注がれた。


(……なんでこんなに少ないの?)


 この時私は知らなかった。

 神楽坂学園のSクラスは偏差値70以上かつ運動神経抜群の生徒のみが選ばれるエリートであり、一年に三人入れるかどうかな超絶難度なクラスだとラックから知らされ、「私の平穏平凡ライフウゥゥッ!」と叫ぶことになることを…………。


「はい、鳳凰さん、自己紹介を」

「はぃ」

(うぅ……自己紹介自己紹介……ん?)


 ……待って。


(自己紹介って何するの!?)


 まともな自己紹介など人生で一度もしていない……と思う。たぶん。暗殺者時代には、自己紹介が不要だったから。みんな私のこと知ってたし。

 自己紹介って、何を話せばいいのか……?

心の中で何を言えば良いか考えたが、焦りすぎて言葉が出てこない。


(あわ、あわわわわ)


 混乱。失敗したくない……。


「……鳳凰虚です。よろしくお願いします」

「えっそれだけ?」

(ダメだった!?)


 早速やらかした。普通とはなんぞや……。


「……すみません。何を言えばいいのかと思って」


 微笑みを浮かべて突っ込んできた生徒に答える。


「へえ……」


 ショートの赤い髪、オレンジの瞳。男なのにかなりの美人さんだ。

 口角を上げて笑うその姿は、人を狂わせる甘さと色気を含み、多くの異性を惑わせてきたとわかる。


「こらこらりんくん。そんなこと言っちゃダメだよー」


 そんな彼に苦言を呈したのは、ハニーレモンカラーの髪をハーフアップにした、桃色の瞳の、実に可愛らしい男の子。

 ……いやほんとに可愛いな。滅多にお目にかかれないほどの美少女ぶりだぞ。これはアレだな、男も女も惑わすタイプの子だ。私にはわかる。

 教室に入った時に香った香水は、この子のものだった。


(んー……彼、どこかで見た気がする)


どこだっけ、と思いながら、自己紹介は終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ