元暗殺者、閃いた
「なんであいつらはボクを狙ったのか、ちょっと心当たりがあるんだよね」
「って言うと?」
「神楽坂光貴の暗殺に失敗してから、今まで以上に刺客が送られて来ててさ」
なるほど、と深く納得して、口の中のチョコレートケーキを飲み込んだ。
「つまり、神楽坂光貴の暗殺を依頼した人物が、口封じに千隼、というか狂愛を狙っている、てこと?」
「まあ、それしか考えられないし」
肩をすくめた千隼は、その顔に似合わないブラックコーヒーを啜る。あんなの飲んでどこがいいんだろ。
口封じのための暗殺なんて、こっち側じゃ日常茶飯事。なんにも特別じゃない。
「ってことは、放置しかないカンジ?」
「だねぇ」
千隼と目を合わせて、はあああっと大きくため息をつく。
でもまあそれが最善だよねー……と思いかけて、気付いた。
千隼を狙ったことから、敵ボスはよほど神楽坂光貴の暗殺が重要と見る。
千隼は暗殺に失敗。となると敵ボスが次に取る行動は……次なる暗殺者を送り込むこと。
あれこれヤバイのでは?? 神楽坂光貴死ぬ???
それは困るぞ私のオモチャ‼︎ と内心で叫んだすぐに対策を考え始めた。そして。
提案:私が近くで守れば良いのでは?
修正点:学年違うしどうやるの?
改善案:おんなじ暴走族グループ入っちゃえば?
結論:それだ‼︎
となった。我ながら完璧だと自負している。〈現在虚は、ストレスと怒りで情緒が安定しておりません。ご了承下さい。by作者〉
で、ここで出てくる問題は二つ。
どうやっておんなじ暴走族グループこと【Minuit】に入るかと、女子の私が入って大丈夫なのかということだ。
今はなんともありがたいことにラック調べで【Minuit】の幹部だと発覚している水戸千隼様がいるので、直球で訊いてみた。
「ボクが紹介すればいけると思うよ? でも性別が女子となると……うーん」
とのことだった。
だがそれはつまり、女子でなければいけるということである。実はさっきもう対策は考えてあった。
ニヤァと笑って千隼を見やる。ここまでの一連の流れを見ていた彼は、「なんでそうなったの? 頭大丈夫……?」という視線をもらっていたが、これで手打ちにしてやるつもりだ。
「ねぇ千隼。【Minuit】の総長さんに紹介して欲しいなあ」
「え、いやだから、女子だと厳しいって……」
「女子じゃなきゃいいんじゃない?」
「…………ん? んん?? んんんんん???」
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「………へえ、小柄なやつだな。でも実力があるならいいよ、うちは」
「実力は確かですよー。ボクより強いので!」
「千隼より⁉︎ 相当だな。えっと、君は」
千隼から視線を移した紫苑悠喜は、私を見て微笑んだ。イケメンの微笑みプライスレス。
それに応えるように、私もにっこりと笑いかけた。
「はい。ぼくは、氷高琉稀です」
蒼銀色の短い髪を揺らし、同じ色の瞳を細めながら。
虚が思いついた秘策。
それは、男装して潜り込むことだった。
…………いや、なぜ??




