元暗殺者、罠に嵌められる
「おい女、さっさと答えろ。なんでここにいる」
Q.この問いに私が最初に思ったことを答えなさい
A.レディへの口の利き方がなってねえぞゴラ
あらまあどうしたもんかねと思いつつ、目つき(と口の利き方)が悪い銀髪を見据える。
(うーん、顔立ちは整ってるし、声も低くて甘い。派手な色の髪なのに、不思議と似合う。イケメンだね)
「おい聞いてんのか。答えろ女」
(ただし典型的な俺様男子。若干の不良っ気もある)
「答えろっつってんだろ女。てめえの耳は飾りか」
(でもそこがまたいい、って言う人もいるんだろうな。私は好みじゃないけど)
「いい加減にしろやクソ女!」
あ、怒鳴られた。
ことごとく無視してはいたが、限界だったらしい。とりあえず困ったように笑っておく。
「すみません、間違えて入ってしまって……」
「……間違えて、ね。……本当に?」
その瞬間、どこか嘲笑うように笑った俺様男子こと逢魔銀河。嘲笑が似合う。
(__まさかとは思っていたけれど、)
気付けば、いつの間にか瞳を細めていた。
それ部屋に入ってすぐに気づいて、でもそのままにしていた。
(彼の反応を見る限り)
「俺はこの部屋に他人が勝手に出入りされるのが嫌いだ」
(この部屋には)
「だから、」
「「部屋中に簡易トラップが仕掛けてある」」
彼は驚いたように目を見張った。
「気づいていたのか」
「当然です」
言葉通りだった。
一目で全て把握した。ドアに挟まれた髪の毛。意図的に置かれたホコリ。その数およそ二十。
侵入者用のトラップくらい、私の部屋にもある。もちろん、この部屋のものよりも何倍も高度だが。
ドアノブには即効性の猛毒。一歩踏み込めばワイヤーがその足を絡め取り、天井裏から無数の銃口が火を吹く。
その様子をお茶請けに何人もの侵入者を葬ってきたことか。いやあ懐かしい。
まあそんなわけで、そんな数多の高度なトラップを見てきた私が、この程度のトラップを見抜けないはずがないのだ。
「こんなレベルの低いトラップ」
「……あ゛?」
あやっべ地雷踏んだ。
一瞬でわかった。だってさっき以上に声が低くなって青筋が浮かんでるもん。
「喧嘩売ってんのか?」
「まさか!」
もうどうにでもなーれとヤケクソ気味に笑顔を返す。
「こんなちっぽけなモノを作る人間に喧嘩を売って、何になるって言うんですか?」
ぷちっ。
あ、なんか切れたなと思って、すぐにその正体に気づいた。
「……そうか、ちっぽけ、ね……そうかそうか」
ぎろり、と吊り目気味の目がこちらを射抜く。
「えっと、あの、素材は良かったと思いますよ? ただ作り手の腕が悪かっただけで」
「煽りにしか聞こえないわボケナスがああああ‼︎」
言葉選び失敗。
今後は言葉遣いには気をつけようと思いつつ、私は『第二回!チキチキ⭐︎大逃走』を全力疾走でスタートしたのだった。
その後逃げ切ったひと
「ふっ、乗り切った……! ん? あそこに見えるのは……あれSクラス!?」
『第三回!チキチキ⭐︎大逃走』開始。
逃げ切られたひと
「くっそあの女腹立つ……!! ……ん、待てよ。ドアのトラップは作動していなかったよな。じゃああいつどっから……?」
おおっと虚ピーンチ!




