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元暗殺者、血の匂いがする恋を始めます。  作者: 璃衣奈
第一章 ゆーびきーりげんまん
13/26

元暗殺者、デートの予行練習したら頭打つハメになった

「幸、私アクセサリー欲しい」

「おっけ。じゃああそこ入ろ」


 日が暮れてきた。そろそろデートも終盤だ。なかなか面白い体験だっだ。

 それにしても……。


「幸って彼氏力高すぎない?」

「いきなりどうしたっ?」


 いや実際そうなのだ。

 歩道を歩けば流れるように車道側に移動し、買い物をすれば当然のように「持つよ」と取り上げる。これを彼氏力が強いと言わずになんという。


 ついでに顔がいいため時折周囲の女性から鋭い視線が飛んでくるのだが、それも「僕、他人を睨むような人って嫌いなんだよね」と言って爽やかにかわしていた。

 また、こんなことがあった。ついさっき私が一人でお手洗いに行っていたとき……。









 トイレから戻ってくると、幸がいた。いたのだが……。


「ねぇ、お兄さんかっこいいねー!二対一だけどぉ、すぐそこのホテルに行かなぁい?わたしたちぃ、彼氏に振られて傷心中なのぉ」

「すみません。人を待っているので……」


 逆ナンされていた。ちなみにすぐそこのホテルとはラブホテルである。


 二人組のお姉さん方。顔はまあまあいいけど、派手な化粧と胸元が大胆に開いた丈が短くて体のラインがハッキリわかる服で台無し。加えて甘ったるい香水の匂いを撒き散らしていて不快。


 一人は幸の腕を無視やり抱きしめて、豊満な胸を触ってほしいとばかりに押し付けている。時折胸で挟んだ腕に擦り付けるように体を捩っているのがなんとも言えない。


 もう一人は幸の掌を掴んで胸と胸の間に沈めようとしながら、幸のうなじを指の腹で撫でている。心なしか息が荒い。


(幸って無駄に顔いいもんねー。中身はともかくとして)


 実に、実に面倒だが、このままだと無理矢理連れて行かれて既成事実を……なんてことになりかねない。ので、助けようと思う。


「ええーっ! そうなんだぁ。じゃあわたしたちとおんなじ人数じゃん!」

「ウチらスタイルには自信あるんだよ?きっとその子のことも満足させられるからさあ」

「いえ、彼女は女です。デート中で……」

(よく言った幸!)


 内心で拍手喝采。フリーならつけ入る隙があっただろうが、彼女持ちなら話は別。これで彼女達も引いてくれる__。


「えー彼女さんいるのぉ? でもでもぉ、ウチらの方が絶ぜったい可愛いしぃ、胸も大きいよぉ?」

「そうそう! だから彼女さん放ってわたしたちと遊ぼ?」


 ことはなかった。実にしつこい。


(実物を知らないとはいえ、ひどい言われようだなあ)


 流石にちょっぴり傷ついた。私可愛いもん。スタイルも悪くないもん。Eはあるもん。

 ……よし、ちょっと仕返ししてやろう。


「お待たせっ、幸!」


 ぎゅうっと背中に抱きつく。それからお姉さん方を見上げて、可愛く見える角度で小首を傾げる。


「幸の知り合い……?」

「いや、知らない人だよ」


 即座に私の演技に乗ってきた幸は甘い笑顔で腰を引き寄せる。ついでにお姉さん方から腕を抜き取る。


「すみません。彼女とデートの続きがあるので、失礼します」


 にっこり爽やかな笑顔で通りすぎようとする。


「ま、待ってよ! おねがい、お金ならあげるから!」

「そんな子ほっといていいじゃん!」

「僕は彼女にしか興味ありません。触らないでください」


 私の肩を抱き寄せてからのこのセリフ。イケメンが言うと実に様になる。不覚にもドキッとしてしまった。不覚にも。(二回目)









 ……うん。


「やっぱり幸って彼氏力高い。ムカつく」

「ひど⁉︎」


 入ったアクセサリーショップは、ブレスレットやネックレスを中心に売っているお店だった。

 大人っぽいのから可愛いのまで、幅広く。見ているだけでわくわくする。


「虚、どれがいい? 買ってあげるよ」


 今日一日で呼び方が『虚ちゃん』から『虚』に変わった。まあいいけどね。


「……じゃあ、これがいい!」


 指差したのは、真っ白な百合が映える薄桃色と赤のブレスレット。


「あと、こっちは自分で買う」

「? 誰にあげるの?」

「陽毬」


 緑と爽やかな青を基調とした向日葵のブレスレット。是非ともお揃いでつけたい。

 ウキウキ会計していると、幸がじぃっとこっちを見てくる。どこか暖かい視線だ。


「……どうしたの?」

「んーん。友達できてよかったね。僕も転校しよっかなあ」

「あはは、いいんじゃない?」


 そこで、今日のデートはお開きになった。






 __そして、翌週の月曜日の朝。


「新しいクラスメイトです」

「柊木幸です! よろしくねっ!」

(まさか本当に来るとは思わないじゃんっ⁉︎)


 私は机に頭を思い切り打ちつけた。

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