「サヤの信じる真カミサン伝説3「人首酒」編」
サヤは
「えー、みなさん、ご一読いただけましたようですね。
では、
22番「人首酒」編をお話しします。 あるところに、
ジュウロウという天才だか、
奇人だか、
わからない二十歳過ぎの青年がいました。
彼は小説家志望でした。
彼の目指す小説はホラー探偵小説でした。
しかし、
彼の作品を読んだ友人・知人のほとんどが
彼の希望する感想とは違い、
「奇想天外なコミカルで面白かったよ」
と
彼の作品を褒めたつもりで読書後の感想を彼に言うのでした。
実際、
友人の中には出版社に持っていけ
と
薦めるものもいるくらい面白い小説ではあったのです。
しかし、
あまりにも発想がとっぴ過ぎて、
面白くても、
決して怖くはなかったのです。
タイトルも
「けけけけけ男」とか
「ふふふふふ女」とか、
書いた本人は真面目につけたつもりでも、
はたから見れば、
どう見てもふざけてつけたタイトルにしか思えず、
実際読んでも完全に恐怖を超越した作品なので、
奇想天外で面白かった
という感想しかいいようがなかったのです。
ちょっとはしたないですが、
自称本人の代表作、
「トイレ女」は、
書いた本人にとっては凄く怖い探偵小説のつもりだったようですが、
読む方からすればあまりにも幼稚でくだらないタイトルと、
その下品な内容からコメディー作品としか評価しませんでした。
彼自身はそういう評価を下した友人・知人たちについて、
読んだ人間にセンスがないとか、
本当は読んでいないのではないかと、 本気で思っていたのでした。
そして、
彼が自分より低く見ていた友人が某雑誌のホラー新人賞を
とってしまったことをネットで知ってしまったものですから、
彼自身、
その友人の作品を読むこともなく
「世の中読む目がない奴らばかりだから、
生まれた時代が悪い」
とひとりよがりに嘆いて、
出筆活動をやめようと決意するところまで彼は落ち込んだのでした。
そして、
彼がやけになって久しぶりに町の本屋に出かけて、
その友人の本を立ち読みしようとした時、
隣のカップルがホラー小説家としては
有名なコワコワクエーの新書を手にとり、
「彼の作品読んでごらん。
本の厚さはけっこうあるけど、
半分近く不気味な絵ばかりで、
話し自体は短く凄く怖いんだ。
多分、
一気に最後まで読めると思うけど、
読み終わった瞬間身体が冷えた感じになって、
一人だとしばらく怖くて眠れないよ」と言っているのを聞いて、
ジュウロウは世間ではどういう作品を怖いと思うのだろう
と真面目に考えて、
その本を買って読んでみることにしたのでした」
サヤはここでハンカチで口を拭った。




