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「真カミサン伝説1」


 生徒は既に時間前から207号室に集まり、各自適当に着席していた。

 時間ちょうどに黒縁眼鏡に黒いワンピースを着たもとめが現れた。

 もとめは、何かノートのようなものを時折見ながら話しを始めた。

 「カミサン伝説はみなさんもご存じのとおり数えきれないほど今は存在しますが、今カミサン伝説についての情報が一番充実しているホームページや後述するハゲタ木太郎教授によりますと、大きく分けると全部で22あると言われています。少し前までは21でしたので、これから増えるかもしれませんが現在はそう言われています。

 しかし、その中でハッピーエンドになる伝説が一つしかないこともみなさんはもうご存じだと思います。

 今各地で論争されているのは、どの伝説が「真カミサン伝説」であるかということです。

 もちろん、そもそも「真カミサン伝説」などないというごく少数の意見もあります。

 しかし、私自身は「真カミサン伝説」は存在すると考えています。

 恐らく今度のコンクールでも「真カミサン伝説」の取り扱いが優勝するためのポイントになると思います。

 これだけ日本中いや世界中にも広まりつつ中、多くの優秀な人間が考えても「真カミサン伝説」の存在及びそれが何かすなわち22のカミサン伝説のうちいずれが「真カミサン伝説」かであるかがいまだ論証できていない今日、23番目のカミサン伝説の発見あるいは創設をした方が優勝に近いというご意見もあるかと思いますが、

 やはり、説得力をもって「真カミサン伝説」はこれなんだという論拠を発表することが高校生レベルでは優勝の近道ではないかと考えています。

 もちろん、私は自分の意見を強要するつもりはありませんが、これから私が述べるカミサン伝説こそが「真カミサン伝説」であることをこれから私なりに証明いやみなさんに納得していただきたいと思います。」

 「では、私が考える「真カミサン伝説」について、お話したいと思います。今22に分類されるカミサン伝説のうち、像が関係する伝説がちょうど半分にあたる11あります。しかし、私は像が関係する11の伝説は「真カミサン伝説」から除外しても良いと考えます。インチキなカミサン像が多数販売されたこともありまして、私の見解はかなり有力ではありますが、正直言いまして圧倒的多数となるには至っておりません。その理由は偽物あるところに本物ありという単純なことで像が登場するカミサン伝説こそが「真カミサン伝説」であると主張されるトンデモ大学のハゲタ木太郎教授の論文にも記されていることです。

 しかし、像が関与する伝説の中に「真カミサン伝説」が存在するという説には致命的な欠点があると私は考えます。すなわち、その像の色はもとより姿形がまったくわからないということが致命的欠点だと思うのです。もし、本当にカミサンの像が存在するのなら、少なくとも色や大体の姿形が伝えられてもいいはずですが、どの伝説でも具体的なことは伝えられていません。ですから、私は先ほどのハゲタ木太郎教授とは反対の見解をとることに致しました。失礼」とひとこと言うと

 もとめは予め用意した水を一口飲んだ。

 このとき、生徒10人の思いはいろいろだった。熱心に聞くものもいればそれは違うぞと反抗的になるものもいれば、眠そうにノートに落書きをするものもいれば、もとめの容姿だけ眺めているものなどいろいろだ。

 もとめは話しを続ける。

 「では、残りの11のカミサン伝説についてお話しします。まず、この11のうちの1つがみなさんもご存じのハッピーエンドとなるカミサン伝説です。しかし、この伝説が真カミサン伝説ではないことに現在は異論がありませんので、残りの10のカミサン伝説の中に真カミサン伝説があるということを前提にお話ししたいと思います。この10の伝説のうち、みなさんもご存じで現在一番有力なのがアヤメ編です。このアヤメ編は、別名完全体編とも言われ、亜種だけでも10以上はあると言われてます。これをアレンジされたものが映画化されたり、都市伝説の一つとされて、その多くがDVD化されていますので、みなさんも映像を見られたことはあるでしょう。このアヤメ編が真カミサン伝説であることの有力な根拠は多数の美男美女が行方不明になっていることです。主観的な評価も入るかと思いますがアヤメ伝説が真カミサン伝説であると主張されるケイメイ大の山田久素太教授の研究によりますと、過去20年間で毎年行方不明者は1割前後づつ増え続け、行方不明者の約75%が美男美女と評価されているとのことです。一般的には美男美女と評価されるのがせいぜい15%前後であることからすると、行方不明者に占める美男美女が占める割合がいくら美という基準に主観的評価が入るとはいえ一般的評価に比べ圧倒的に多いのは事実です。しかも、このアヤメ編を信じて殺人を犯して逮捕された人間が皆無だというのもこの伝説が有力視される理由です。ただ、久素太教授も自認されていますように、アヤメ編についてはこれ以外の有力な論拠がないことが欠点です。

 が、このアヤメ編を真カミサン伝説だと支持する方々はこれだけで充分だというのが多数を占めています。ただ、この伝説に関しては像がからむ伝説とリンクする部分もあるので私自身は支持しておりません。失礼」と、

 もとめはまた水を飲む。

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