「ネネVSひさめと永久」
最後に勘違い編と山手線編のショートバージョンを資料においておきますので、ご参考まで。
「じゃあ、
俺が司会をする。
補欠の3人も含んで、
過半数がいいと思った方が勝ち、
同点なら引き分けでいいね」
ふうたが偉そうにしきる。
「じゃあ、じゃんけんして」
「私でいい!」
ひさめが積極的にそう言うと、
永久は黙って頷く。
「じゃんけんぽん!」
「勝っちゃった!」
ひさめが嬉しそうに永久に抱きつく。
「やってくれるね。ひさめも」
みはるがキミカの耳元でつぶやく。
キミカは黙って笑ってる。
「じゃあ、
ひさめちゃんと永久組から、
話しを選んで」
「いーい、永久くん」
「任せるよ」
「じゃあ、私たちは、勘違編」
ひさめは自信ありげに言う。
「やるだすなあ」
たまおがケンタの耳元で囁くが、
「俺にはよくわからねえ」
ケンタは首を傾げる。
ネネは少し考えたが、
「じゃあ、私は山手線編で勝負よ」
と言った。
結構、ネネの目は本気だった。
「どっちもやるだすなあ」
たまおはしきりに感心している。
「おい、たまお」
「みはる、
あのーたまおくんでしょう」
「悪い!
たまおくーん、
ちょっとだけ教えてちょうだーい!」
「なんか、気持ち悪いだすなあ」
たまおはそう言いつつも、
みはるとキミカに
そっと両方の欠点を簡単に説明した。
*カミサン伝説12勘違編
「あおー、あおー、あおー、カミサン、カミサン、カミサン」
「あおー、あおー、あおー、カミサン、カミサン、カミサン」
あおむは必死に声を上げる。
「自分の名前の先頭二文字を伸ばして三回復唱し、
続けてカミサンを三回復唱せよ。
これを2度行った後心の中で願い事を一度だけ念じ、
再度、
自分の名前の先頭二文字を伸ばして、カミサンを三回復唱し、
最後に天に向かって手のひらを三度叩け、
さすれば願い事は一度だけ成就するであろう」
あおむは真カミサン伝説を信じ、
「妻が死にますように」と心に念じると、
「あおー、あおー、あおー、カミサン、カミサン、カミサン」
パチパチパチ。
最後に手を3度叩いた。
「これで完璧だ」
ふーとため息をつくと一服し、
あとは彼女が死ぬのを待っていた。
うさんくさい、
インチキだ
と言われていたカミサン伝説の中で唯一真実の真カミサン伝説を、
あおむは昨日同伝説研究の第一人者である某教授から
ある手段を使って教えてもらったばかりであった。
携帯が鳴る。自分の母親からだ。
チウメが今さっき交通事故に遭い、危篤だという。
確信したとおりだ。
それにしてもこんなに早く願いが叶うなんて。
あおむはタクシーに乗り母親に教えて貰った病院に駆けつけた。
病院に行ったときにはすでに妻は息絶えていた。
妻には5000万円の生命保険金が掛けられていた。
彼の狙いはその保険金だった。
あおむは妻の葬儀等を終え保険金を受け取ると、
例の某教授のところへ挨拶に行った。
もちろん何を願ったかは秘密にして。
某教授はあおむの顔を見るなり、
すまなさそうにいきなり頭を下げた。
「クリュウくん申し訳ない。
君に教えた伝説をわしは勘違いしていた。
そのせいで奥さんがあんなことになるとは。
そんな怖い顔しないで許してくれ」
あおむは驚きで怖い顔になっていただけなのだが、
教授はあおむが文句を言いにきた
と勘違いしてひたすら頭を下げると、
あおむが話を聞きだすためにプレゼントした
ブレゲ製の某アンティーク時計を
おそるおそる手渡す
と最後は土下座して、
このことは絶対に秘密にしてくれと、
涙ながらにあおむの許しを乞うた。
あおむは
「わかりました。教授。もう頭を上げてください。
ただ、その勘違いを教えてください」
と、
土下座したままうつむく教授に訊いた。
「実はわしは名前といったが氏の間違いじゃったのだ。
それと間違って復唱すると災いが起こる
ということを言い忘れてしまったのじゃ、
本当に申し訳ない」
「そうですか。これも運命だす。
もうこのことは完全に忘れてください」
粟生あおむはそう優しく言う
と教授室を後にした。
(終)
カミサン伝説「山手線編」
山手線にはカミサン
という天使か悪魔かわからない生き物が潜んでいて、
時に人間の姿で現れて何かをするという伝説がある。
ある日、水商売風の女の隣にそれらしい男が隣に座ってきた。
何故、それらしいかと言うと座った瞬間悪臭がして
頭は河童のそれで顔はありくいのようだったからだ。
その男はずっと黙って座っていた。
カミサン伝説によると運良くカミサンに出会ったら
無視することが必要だと言う。
そして、カミサンから声をかけられて
上手く対応すれば良いことが起きるという。
逆に、心の中で願い事をしたり、
自ら話しかけてカミサンですかと訊いてはいけない
という。
最悪の場合、死ぬこともあるという。
というわけで、伝説を知っていた女は臭いのを
ずっと我慢して座っていた。
すると、その男が座ってから半周近くして、
男は「その時計はフランスだすか」と訊いてきた。
女は最初何のことだかわからなかったが、
逆隣の男が「フランクと間違えているんだよ」
と小声で言ったので、
女は笑って「ええ」と答えた。
男は「すんばらしいだすなあ。僕にも見せてくれだす」
と言った。
女はイヤだったがカミサンだと我慢して
「少しだけなら」
と言って時計をその男に渡した。
男は「高いんだすよなあ。僕も欲しいだすなあ」
とぶつぶつ呟きながら時計を触りまくった。
女はイヤでしょうがなかったが、
今度は「これいくらだすか」
と値段を訊いてきた。
「実は貰い物です」
と答えると、
男は
「要するにただだすな」
と呟くと自分がしている
ぼろぼろの黒皮ベルトの古くさい時計をとりはずして
「ただなら交換してくれだす」
とずうずうしいことを言いだした。
女が迷っているとさっきの男が
「チャンスだよ。交換しな」
と小声でアドバイスしたが、
定価で100万は越える時計なので女は躊躇した。
すると
「ただでもいい時計だすからなあ」
と男は残念そうな声で言うと
女に時計を返し寂しそうに席を離れて行った。
「あー、せっかくのチャンスを。
時計を交換して宝くじでも買えば大金持ちになれたのに」
と隣の男は呆れた顔でつぶやくとどこかへ行ってしまった。
女はしばらくショックで眠れなかった。
そのせいかその時計をうっかり落として壊してしまった。
修理代を訊いたらびっくりするくらいの値段だったので
そのまま放置した。
数年後、山手線で座っていたらまたあの男が隣に座ってきた。
男は女を覚えていないらしく、
しばらくすると女ではなく反対側の隣に座っている男に
あのときとまったく同じにように
「その時計はフランスだすか」と声をかけた。
後のやりとりはまったく同じで、
違うのは二人が時計を交換したことだけだ。
例の男が去ると女が
「今の男がカミサンですか」
と訊くと
「はあ?」
とその男は不思議そうな顔をしたので
「何故、時計を交換したんですか」
と訊くと
「この時計はベルトはぼろだが凄く高い時計だよ」
と男は答えた。
女はその時計のブランド名を聞いたが
ブレゲとかいう知らない名であった。
(終)




