「怖いみはると、賢明か永久か」
「あまり意地悪しない方が」
ひさめがそう言ったとほぼ同時くらいに、
すでに、
みはるが、
ふうたとたまおのスネを蹴っていた。
「いたー」
「うー」
「ああ、やっぱり」
「頭がいいからって、
意地悪するからだぞ、
これはカミサンのバチだ」
みはるはそう言って、笑う。
「ごめんだすよ」
「もう言うから、
凶暴だなあ」
たまおとふうたは
まだ痛そうにそれぞれ、
右と左のスネを押さえている。
「さあ、早く言え」
「まいっただす。
ちょっと痛みがひくのを待ってくれだすよ」
「たまお、まかせたぞ」
「ふうた、汚いだすよ。
オタクが余計なこと言うから、
こうなったんだすよ」
「もう、ちゃんと話せるじゃないか」
みはるがまた蹴るフリをした。
「わかっただす。
話すだすよ。
答えは単純だす。
サヤちゃんの話しはあまり怖くないわりに、
後味が悪くてだすなあ」
「うん?」
みはるが首を捻ると、
「バーカ、
単純に賢明の方が聞いてて、
後味いいでいいんだよ」
「同じことだすよ」
「おい、
そんな単純なことでいいのかよ。
だから僕は自信ないって言っただろう」
みはるが、
もう一回二人のスネを順に蹴る。
「うー」
「あー」
たまおとふうたの両スネを交互にさするマヌケな姿に
他の生徒は大笑いする。
「オタクら、
そんな単純なことなのに、
もったいぶって偉そうに意地悪するからだよ」
永久が笑いながら言う。
「永久、
そんな笑ってられないだすよ。
このままだと、
オタク、
コンクール出られないだすよ」
「そうだぞ。
サヤちゃんがうまく賢明をやりこめないと賢明に決まるぞ」
二人はマヌケな姿のまま永久にそう言うが、
「何故なんだ?」
「どうしてですか」
みはるとひさめに交互に訊かれて、
また、ビクッとする。
「もう、蹴らないで」
「ちゃんと話すだすから」
「わかったから、説明しろ」
「えーと、だすなあ。
それはもとめ先生が休憩入れたからだす」
「何言ってんだよ」
みはるがたまおをまた蹴ろうとする構えを見せる。
「やめてくれ、みはるちゃん、
たまお、オタクがまたわかりにくいことを言うからだぞ。
えーと、
どうやら、
もとめ先生はサヤちゃん以外なら
永久でも賢明でもいい
と考え直したようなんだ」
「あのまま、
もとめ先生が休憩をいれなければ、
サヤちゃんが見えない像の弱点を
ひとつ攻撃すれば引き分けのはずなんだすよ」
「なんだ、
まったくわからないぞ」
みはるがまた蹴る構えを見せる。
「たまお、ちょっと黙ってろ。
えーと、
実は賢明は、
最初はサヤちゃんの罠に気づいてなかったから、
余計な妹の話を攻撃したんだ」
「罠?」
「妹の話は、
サヤちゃんが賢明をひっかけるために、
変えた話なんだす」
「ちょっと、たまお、黙ってろよ。
えーと、
要するに、妹のしたことが、
カミサンをバカにしたかどうかは、
人によって、
受け取り方が違うだろう」
と
ふうたが言うと、
また、
みはるが首を傾げた。
そのとき、
やっと二人の言いたいことを理解しかけてきた
永久が、
「そうか、
カミサン人形編の弱点は
サヤちゃんが変えた話でも消えてなかったのか。
サヤちゃんは賢明に話しを変えたことによって
弱点を補強したように思わせよう
と罠を仕掛けたのか。
それで、
賢明はその罠にまんまと最初はひっかかった訳だ」
「少しわかったような気もするが、
そうなのか」
「そうだす」
「そうでは、わからないだろ!
永久みたいにもう少しわかるように、説明しろよ」
「すまんだす」
「で」
みはるに睨まれた、
たまおとふうたは、
永久の方を見た。




