表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第4話 沙也加は想いを秘めている

「私彩音嫌い」

 突然意味の分からないことを言い始める。何を言ってるんだ? ここで言うことでもないし、聞きたくもない。

 俺はこんな話を聞くために遊んでいるんじゃない。

「なに言ってるんだよ?」

「だって、裕也もそう思うでしょ? なんか自分がこの世で一番綺麗ですよーみたいなアピールきつすぎて嫌い」

 沙也加は悪口を言い始める。

 何を語ってるんだ? まだ知り合って二日目で何を知れるんだよ。まして仲良くもないし、ちゃんと話したこともないだろ。

 それなのにどうしてこうも、こんな酷いことが言えるんだよ。

「本当にそう思っているのか?」

「そうだよ、裕也もそう思うでしょ」

「沙也加、君は間違っているよ」

「何が?」

「全部だよ」

「だって、彩音ってあんまり愛嬌もないし話しててつまらいないじゃん」

「誘ったのも、彩音の悪口を聞いてもらうためか?」

「そうだよ、裕也は隣の席だから共感してもらえるかなって思って誘ったの」

 そうか、そうだったのかよ。くだらない。

「もう、帰るよ」

「え?」

「じゃあ、明日」

 俺はそれだけを言い、立ち上がり歩き始める。

 なんも楽しくない。

 太陽は沈み、俺の心も完全に沈んでいた。

 沙也加は間違ってるよ。そう思いながら家に向かって歩き始めた。



 ※沙也加視点

 裕也がいなくなってから、もう十分以上が経過していた。

 私何も間違ったこと言ってないよ。

 だって、愛嬌ない人とかつまらないじゃん。

 それに、私が一番綺麗ですよーアピールとか絶対にしてるし。

 さっき撮った写真を眺める。

 裕也ならわかってくれると思ったんだけどな。

 でも、裕也はきっと忘れているんだろうな。

 私も変わったのに、なんで気付いてくれないのかな。

 風が吹き、髪が私の視界を邪魔する。今日のために整えた前髪が崩れていく。

 もー私ってバカ。本当にバカ。バカ、バカ。

 自分に言い聞かせる。

 私のことを気付いてくれなくて八つ当たりしたんだ、それに、あんなに綺麗な人が隣に居たらきっと裕也は彩音を好きになってしまうから。

 なんであんなこと言ったんだろう。

 昔の頃を思い出す。小学生の時結婚しようって約束したのに。

 風の音がうるさく感じて、足音が聞こえてくる。走ってる足音が。

 その足音は、私の前で止まる。

 「観覧車乗るぞ」

 私の手を握り引っ張る。

「どうしているの?」

「なんとなく」

 あの時を思い出す。

 あの日私の手を握ってくれたあの日を。

 やっぱり私のヒーロだ。



 ※裕也視点

 沙也加は間違っている、だってまだ知り合って二日でその人の何がわかるんだよ。

 遊園地を出てから十分以上経っていた。

 だいたい、悪口を聞くために来たわけじゃない。

 けど、沙也加は悪口を言うために俺を誘ってきた。なんだよそれ、俺だけが浮かれていたやん。

 てか、悪口いうだけなら遊園地の意味ないじゃん。

 少し違和感を覚える。

 彩音より、俺の方が愛嬌なさそうじゃね。

 それに、俺じゃなくて友達に言えばいいだろ。

 お化け屋敷での沙也加を思い出す。楽しそうにしていて、ずっと笑っていた。

 それに、クレープを美味しそうに食べていて、幸せそうだった。

 そんな彼女が、突然悪口を言い始めた。

 なんかおかしいよな。

 それにデートも急だったし。俺の写真も撮っていたし。

 もしかしたら過去にいやな体験したのかもしれない。

 はあ。俺も感情的になっていたな。

 スマホで時刻を確認する。

 19時30分。外も完全に暗くなっている。

 危ないよな。

 俺は遊園地に向かって走り始める。

 沙也加はまだ座っていた。頭の中で考える。こういう時なんて言うのが正解なんだ。

 ふと、観覧車に目が行く。

 そして沙也加の前で、止まり俺は言う。

「観覧車乗るぞ」

 俺は沙也加の手を握り引っ張る。

「どうしているの」

 後悔している顔をする。

「なんとなく」

 沙也加は立ち上がり、一緒に歩き始める。

 そして、今まで一番の笑顔で言う。

「ありがと」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ