AM 3:42
…眠れない。
ベッド横の窓から見上げる黒色は、徐々に溶けていって淡い藍色になってきた。
「…外に出よう」
このまま悶々と過ごすのも些か味気ない。特に行く宛もなくまだ暗い街へと駆けていく。
街へ出るとほとんどの店は閉まっていて、閑散としていた。
…ここにいてもただただ虚しい。
「もっと遠くに行こう」
家に戻って車に乗り込む。キーを回すと、静寂にただ一つ、エンジンの機械的な音が響く。
再び、行き先のない小さな冒険が始まった。
車の窓を開けてみる。少し肌寒いながらも心地よい夜風が、夏が終わってしまったことを告げているようで、また少し虚しくなる。
少しブルーになった気分を変えるためにスマホから音楽を流す。
そしてただ、走り続ける。
気づけば、何処かの山道へと辿り着いていた。近くの看板には、「この先1.5km、展望台」と書かれていた。
その文字に引き寄せられるようにして展望台へ車を走らせる。
夜がかなり更け、藍色の淡さが増してきた。
進むうちに前方から眩い光が差し込み始める。
展望台の少し寂れた駐車スペースに車を停め、外に出る。
風はそこそこ強く、髪が舞い上がる。
髪が目に入らないように上げながら、眩さに目を向ける。
太陽を中心に橙色の光が溢れ出す姿は、圧巻の一言だ。
しばらく呆気に取られていたが、ハッと気付くと車に戻り、家に向かって車を走らせた。
虚しさはもう、なかった。