本がどんどん出来上がっていく
本がどんどん出来上がっていく。
綺麗な表紙がついて素敵な挿絵が添えられて。
文章だって一生懸命書いたし、見直したし、内容だって気にいっている。
……けれど読んだ人はどう思うだろう。
書き下ろしはともかく、なろうに掲載した内容は読者さんの反応もよかった。
大丈夫だと思うけれど、勝負はフタを開けてみるまで分からない。
発売日が近づくと、私はだんだん緊張してくる。
ふと気づくと、手足が冷たくなっていた。
……きっと冷えたんだな。お風呂であったまろう。
今までに書いたSSや外伝をリストアップし、どれを本に入れるか構成も考えて書き上げ、何ヵ月も頭の片隅にあった17万字を手放したばかりだ。
軽い虚脱状態に陥ってもしかたない。
……こういう時はチョコレートも食べよう。
お話を書くのは楽しい。どんどんキャラクターたちが動いて、いろんな場面が展開して万華鏡みたい。
本を作るのも面白い。
「文章を目で読むだけでなく、音読してリズミカルにテンポよく読めるか、意識するといいよ」と教えてもらった。
足りない表現を加筆で補っていく。けれど説明が多すぎてもいけない。
読むのにちょうどいい心地よさを目指して、文章をこねくり回して……結局、最初のがよかったって戻る時もある。
それでも本が完成すれば、キャラクターたちが元気に動き回って話が進んでいく。
書き出したからには、止まる訳にはいかないのだ。
本を売るのは苦手。
発売直後のAmazonのランキングは見ないし、本の売れ行きも聞かない。
本を出して新規の読者ひとりから感想を貰えばそれで十分。
自分の本が何冊売れたかも知らない。明細は送られてくるから、足し算すればいいのだけど。
深海魚みたいな気分でプクプクしながらコツコツ書いて、本の発売に合わせ、誰かの目に留まることを信じて、情報を発信していく。
作者にできることって実はそんなにない。何もしないよりはマシかな、といった程度。
本の読者さんはいつもどこからともなく現れて、「イマイチ」とか「面白い!」とか言って去っていく。
まぁ私も小説を読んでも、それを書いた人のことなんか、気にしなかったからそんなもん。
……書いているうちにちょっと落ち着いてきた。
今年は色んなことを我慢せず、楽しんでやっていこうと決めた。
3月は人に会う予定も多いし、旅行だってするつもり。なろうの自主企画にも2つ参加する。
初めて書いた小説が『魔術師の杖』で本当に一生懸命書いたから、「もうこれ以上の作品は書けないんじゃないか」と昨年不安になった。
でも自主企画に参加して、いろんな作家さんといっしょに書いて、とても楽しかったし、どの作品も気にいったからそんなことはない。
あと2年やればまた、いろんなことが変わっていくんだろう。





