きっかけのひと言
小説書くのだって大変なのに、書くことから離れればいいじゃん、そう思うでしょ。
だけど出かけたって目にはいるもの何かしら、気づけば頭の中で文章化しようとしている。
なろうでキョロキョロしたら、皆さんけっこう日常のひとコマを書いてらした!
あら、もしかしてアリ?
ジャンルは『エッセイ』とかにしておけばよさそう。
よし、書いてみよう。
四年前の今頃、職場の同僚の何気ないひとことがきっかけで転職しました。
それまでは必死に働いて、分刻みどころか秒刻みで動いていました。
やりがいのある仕事だったし……まぁ単純に、一生懸命やるのが好きでした。
ところが忙しさがひと段落したとき、何だか急に心にぽっかり穴が開いたような虚しさを感じまして。
「このまま頑張り続けるか、転職すべきか迷っているんですよね」
たまたま仕事が落ちついた午後、職場の雑談から人生相談のようになり、私がぽつりとこぼすと同僚から言われました。
「粉雪さん、もう少し自分が楽になることを考えたっていいんじゃないですか?」
そのとき私は「そうですねー通勤が楽なトコに転職して、時間ができたら小説でも書こうかな」と軽口を叩きました。
同じようなこと、前にも言ったことがありまして。
そのときの話相手は私よりひとまわり上のオジサンで、「へぇ?」と冷笑されて終わりでした。本気にされなかったんでしょう。
ところが今回はちがいました。
「あら、いいじゃないですか!」
明るく答えた彼女のおかげで、今小説を書いてます。
それまで楽をしよう……という発想がなくて、どんどん自分を追いこんでいました。
無理矢理しょいこもうとしていた荷物を下ろしたら、ふっと体も心も軽くなりました。
仕事でだいぶ気力がそがれていたのでしょう、書く時間を作れるように転職して自分の生活サイクルを見直し、それから半年たってようやく『魔術師の杖』を書き始めました。
本が出た後、一年ぐらいしてから彼女も転職するというので、前の職場に挨拶にいきました。
「〇〇さんのひと言がきっかけで、今こうして小説を書いて本まで出たんですよ!」
そんな話をしたら。
「私の言ったことがそんな……だれかの人生に影響を与えるなんて、夢にも思わなかったです」
うるっとされました。