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突然の裏切り
「俺、朱莉さんと付き合うことになったから。ごめん、別れよう。」
(一体どういうこと?
付き合う?私の親友と?)
まるで後頭部をいきなり鈍器で殴られたかのような衝撃が美琴の心を強く打ちのめした。
放心する美琴をよそに、蒼穹はその言葉だけを残して去っていった。
遠くに見える蒼穹に走り寄り、こちらを振り返って見せつけるように腕を組んでいる女性は朱莉だろうか。
遠すぎて見えないはずの表情は心なしか笑って見えた。
美琴はしばらく動けなかった。
いつの間にか雨が降り始め、空色のシャツを重く深い海の色に染めていく。
まさか蒼穹と別れるなんて想像もしていなかった。蒼穹は美琴のことを愛していたし、来月には両親に挨拶もする予定だった。
(なのに蒼穹が浮気をした。
それも私の親友と。)
いつも私の隣で純粋そうに笑っていた朱莉と、さっき蒼穹の腕を取りこちらを見て笑っていた女は本当に同一人物なのだろうか。
そんな疑問さえ浮かぶ。
今までの友情は全部演技だったのか。
親友に裏切られて、最愛の彼に捨てられた代弁をするかのような雨が美琴の涙を洗い流す。