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私は友達との付き合い方を知らない

「凪ちゃーん!」


 燐火ちゃんが学校に着くなり私にベッタリ抱きついてくる、この時期だとエアコンの助けがあっても暑苦しいのでやめて欲しい。


「燐火ちゃん、教室内で抱きつくのはやめてくれない?」


「だって! 私の友達なんだよ? 友達なら仲良くするのは当然じゃない?」


 友達……? でいいのだろうか? 私はアナタに忠告をしただけの人間のような気がするのですが……


「いいじゃない! 仲良しなのはいいことだよ?」


 子犬のように目を潤ませる燐火ちゃん、ここで友達じゃないなどと言えるような勇気は私にはありません。


「そうね……で、何の用事なの?」


「え……用事がないと話しかけちゃいけないの!?」


 マジですか……リア充やべーですね、え、なに、まさかあの陽キャの人たちって理由も無くあんなに長話してるの!?


 私の衝撃を他所に、燐火ちゃんは何の気にもせずスマホをいじり出します。つぶやいているのでしょうか? その時身分の格差というものに正直空恐ろしくなりました。目的のない行動ほど不気味なものは無いと思っていたのですが、どうやらこの手の人種はそう言ったことを平気でやるようです。


「あの……燐火ちゃん? アナタのつぶやきだけど……」


「見てくれた! 見てくれたんだよね! なんで写真のアップくらいそんなに渋るの? 別に写真を見られたからってどうこうはないでしょ?」


「あると思うのだけど……」


 特定やエゴサにとても役立つ、しかも整形手術でもしない限り大きく変更ができない確実な生体認証基盤として豊富な利用価値があるはず。私のようにアカウントを転生させるのが趣味だと変更不可能な要素は極力少なくしています。IPアドレスでさえもプロバイダーの特定を避けるためプロキシやVPNを使っているのですが、陽キャはそんな心配をしないのでしょうか?


「えー……いいじゃん写真、凪ちゃん可愛いから絶対好評だよ?」


「私はネットアイドルとか目指してないからね?」


 私は噛んで含めるように一から十までネットとの付き合い方を教えてあげないと、いずれこの子はやらかすんじゃないかと予想しました。


「でもさー、凪ちゃんって可愛いのになんでぼっちなんてやってるの?」


 いきなりビーンボールを投げてくる遠慮のない燐火ちゃんに私は恐怖さえしました。普通そんなデリケートな話題を日常会話の中にぶち込むものでしょうか? 会話のキャッチボールという言葉を知らないのでしょうか?


「私は好きでやってるから……」


 リアルとネットは分けて考えていて、私はネットに重きを置いているだけです。たまにレスバにも勝てますしね。


 そんな私の解釈は全く理解できないらしく彼女はスマホで私にリア充的なパリピ写真を見せてきます。眩しさで視力が低下しそうな明るさでした。


「カラオケとか、カバーで歌唱力を披露するのはVTuberくらいで十分でしょう?」


 言いませんけどインターネットカラオケマンとかたくさん動画サイトにいますからね。


 かくいう私もアップしたことがあるのですが、投稿したのが夕方で恥辱に悶えて削除をしたのがその夜でした。何あれ? 動画サイトって遠慮のないコメントが平気で来るはずなんですが……彼女は一体どの動画サイトを見ているのでしょうか?


 そんな私の疑問さえも全く気にしないようにあちらさんは構わないようです、こわい。


「ねえ凪ちゃん?」


「なに?」


「なんでぼっちなんてやってるの?」


 ド直球の質問が来ました。私の答えはシンプルです。


「人間関係リセットが趣味なので……」


 見知らぬ人と垢デリ一発で綺麗さっぱり人間関係を生産できる関係、炎上しても私がネットから離れないのはそう言った理由もあったりします。


「でも、残したい人間関係ってないの? 普通に生きてたら友達とわざわざ離れないでしょ?」


「だから私は切れない関係ができる前に綺麗さっぱりリセットしてるんですよ」


 私の人間関係ってネットだと特に碌でもないですからね。


「なんでそんなもったいないことするの? フォロワーさんとかが消えちゃうじゃない?」


「そのフォロワーが問題なんですよ……」


 私がアカウントを作るとシュババとウォッチャーがやってきます。私はもう諦めていますがまともなフォロワーが付くことは滅多にないので消えてくれても構わない連中です。


「凪ちゃん一体どんな使い方してるの!? 普通そんな問題のある人は寄ってこないよ!?」


「来るんですよねえ……それが……」


 炎上しようものなら大挙して押し寄せるので諦めている。ネット社会の闇などといわれることもあるが、多分ネットの闇というものは無く人間の闇がネットでは表出しやすいだけなのでしょう。


「凪ちゃん……大変なんだね」


「そう、有名人は面倒くさいのよ」


 こんな形で有名になんてなりたくなかったですがね……


「ところで凪ちゃん、アカウント教えて?」


「はいはい……ってなにドサクサに紛れてアカウント聞き出そうとしてるの!?」


「ダメか……」


 しょぼんとする燐火ちゃん。申し訳ないが彼女の方にまで私の炎上を広げるわけにはいかないし、そもそもアカウントを毎日のように一つは転生させているので教えたところで何時までそのアカウントが残っているか分からない、教えたとしてもすぐに途切れる細い関係にしかならないので教えることはない。


「ねえ凪ちゃん?」


「なあに?」


「私って炎上しやすいのかなあ……なんか昨日も友達ができたって信じてもらえなかったし……」


「そんなことはないと思うよ」


 アナタが炎上体質だったら私なんて何になると思っているでしょう? 常時炎上してからそんなことを言って欲しいものです。


「いつか……いつかアナタが公開してもいいって言ってくれたらいつでも私の友達って紹介するからね!」


「ハハハ……」


 私はしょっちゅうアップロードをストップする羽目になる予感を覚えながら陰キャから陽キャのグループへと向かっていく燐火ちゃんをみて不安になるのでした。

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