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バーチャルネットバトラーもゆる! ~炎上女子とバーチャルアイドルのラブコメの行方~  作者: にとろ


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案件に悩む燐火ちゃん

「ううん……」


 何やら燐火ちゃんが考え込んでいます。私としては気にしない方がいいと思うので隣で大いに悩ませてあげました。私の方へ飛び火してこなければ問題無い……


「ねえ凪ちゃん!」


 おやおや、どうやら私の方へも話題が飛んでくるのは確定のようです。どうしてわざわざ私に振ってくるのでしょうか?


「何ですか? 配信ならしませんよ?」


「そうじゃなくてさ……その、案件が来てね」


 案件、つまりはシスイにプロモーションをして欲しいと言うことなのでしょう。羨ましい話ではありますが私には関係ないでしょう。ちなみに私のアカウントに案件の依頼など来たことはありません、賢明と言えるでしょう。


「羨ましいですね、頑張ってくださいね!」


 私は適当に突き放しました。人の案件動画に関わったって良いことはないじゃないですか。正直そんな話持ってこられても困るんですよね。


「まあまあ、実は案件っていうのがPCでね、私は配信用以外に詳しくないから凪ちゃんに評価をお願いしたいなあって」


「私が評価したら大抵ボロクソになるのでやめておいた方がいいですよ? PCで案件を頼むメーカーってそういうの多いですからね」


 しかしめげることなく燐火ちゃんも退きません。


「私じゃゲーミングマシンのレビューとか出来ないからさ、ね、お願い!」


 ここで断るとどうなるでしょう? 友情にヒビが入る? きっとそんなことはないのでしょう。でも現に困っている友人を見捨てるのも後味が悪いですね。


「分かりました……アドバイスはしますよ」


「ありがとね!」


「はいはい」


 ――そうして放課後


 二人して燐火ちゃんの配信部屋へ向かいながら案件PCのスペックを聞きます。CPUはミドルレンジモデル、RAMは人権がギリギリ与えられるくらいの量、ストレージはeMMC……これを褒めろって難易度高くないですか?


「何を褒めればいいのかなあ……」


 褒めるところが無いというのは簡単ですが、ここは何とかいいところを見つけ出さねばなりません。


「そ、そういえばサイズとかってどうなってるの?」


 それだけスペックを削ったならさぞ小さいのでしょう。


「両手で持ってキーボードが使える感じかな、一応ジョイスティックとボタンもついてるよ」


 確かにインターフェースは優秀なのかもしれません。しかしそのインターフェースを使って出来るゲームがあるのでしょうか? もちろん小さくしている以上グラフィック機能はオンボードでしょう。まともに3Dゲームが動くスペックとは思えません。


 ならばいっそエロゲ……やめましょう、コレは動くでしょうが、紹介に使うにはリスクが高すぎます。


「何かいいところってありそう?」


「コンパクトって事くらいですかねえ……」


 マジでそのくらいしか褒めるところが無いですね。


 そんなやりとりをしていると配信部屋につきました。無造作に放り出されているのが案件用のPCでしょう。


「あれだよね? 見ていい?」


「うん! 全然いいよ!」


 ベッドの上に投げてあるPCを起動させてみます。まず起動が遅いです。HDDほど絶望的に遅いわけではありませんがeMMCというSSDにはおよばないストレージを積んでいるため起動に時間がかかっています。


 しばし待つとようやく起動画面になりました。


「パスワードって何?」


「****だよ」


 安直にパスワードをばらすのはどうかと思いますが、とりあえずログインできました。褒められるところとしては余計なソフトが入っていないのでパスワード画面から操作可能になるまでがそこそこ早いです。


 よく見るとカメラもついていますね、ここは好みの分かれるところでしょうが、配信に使えなくも無いので悪くないでしょう。


 ついでにファンレスでした。ゲームをやるならファンは必須だと思うのですが、このPC、冷却機構はヒートシンクのみのようです。


「凪ちゃん、どんな感じで紹介しよっか?」


「そうですね、小ささを売りにするのはどうです? あと起動が速い」


 もっとも、ストレージのサイズでOSのアップデートすらままならないのは伝える必要は無いでしょう。


「あと、ゲームやるには重いのでプレイするなら軽いゲームの方がいいですね」


「軽いっていうと建築バトルみたいな?」


「あれは動きませんね、というかストレージが小さいのでインストールしたら何も出来なくなりますよ」


「なんだか褒めづらいような気がするんだけど……?」


「放っておいても売れるものは配信者に案件を出したりしませんよ」


 世の常です。


「じゃあ配信始めるね」


 配信用PCの準備を済ませ、オーディオインターフェースとマイクの準備もテキパキとこなしていきます。


「じゃあ始めるね?」


 私は手でオーケーと示しました。


シスイ:ハロー! みんな元気ー? 今日は頂いたPCのレビューをするよ!


『案件か……』


『案件やね』


『シスイちゃんまだ案件やってなかったよね?』


『してないで、これが最初や』


 こうして案件PCの画面を表示しながら操作をしていくことになりました。


 マウス代わりのトラックパッドが非常に小さく、操作がしにくそうです。


『あー……これかぁ……』


『知っているのか雷電!』


『クソスペで有名なPCだぞ』


『褒めるところが無い』


シスイ:こうしてちゃんとファンレスで動くんですねー


『そりゃ動くだろ』


『CPUが悲鳴を上げてそう』


『そのチップでファンレスとかヤバくね?』


シスイ:何と! 友達と通信対戦ができるんですよ!


『対戦(2Dゲーム)』


『嘘は言ってない』


 まあまあシスイちゃん自身はともかくPCの方への悪評が止まりません。そりゃあ無理もない話なんですが、無理矢理いいところを引っ張り出したのにこれは心外ですね。


シスイ:ほら、クラフトゲームだって完璧!


『あれが動かない環境ってよっぽどだろ』


 私はシスイちゃんにカンペを出しました。見ていられません。


『まいて配信終了しましょう』


シスイ:こんな感じでいいものだから良ければ買ってねー!


 一応こうして配信は終了したのでした。


「まさかこんなに難しいなんて思わなかったよ」


「スペック表見れば分かるんですけどね……」


「ああ、そうそう、凪ちゃんへの協力代ね」


 そういって箱にしまっていた案件PCを私にくれました。あまり使い道がないのですが一応もらっておきました。


「ありがとうございます」


「あんまり嬉しそうじゃないのが分かっちゃうね……ははは」


「それでは私はお暇しますよ。明日の課題もあるんでね」


「そう、じゃあまた明日」


「はい、また明日」


 こうして私の部屋にはPCが一台増えたのでした。

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