第23話 ミレナ視点
恐怖に震え上がり棒立ちになる冒険者たちを縫うように進むエデルトルートお姉ちゃん。右手には短剣?に似た不思議な武器を逆手持ちで握っていた。
左手をゴブリンロードに向け『雷電』と叫ぶと、エデルトルートお姉ちゃんの左手から、青白い稲妻が放たれ、ゴブリンロードに直撃した。
ゴブリンロードは、意識を失ったのか背中から地面に崩れ落ちる。ジャンプしたエデルトルートお姉ちゃんは、その更に上から短剣を喉元に突き刺そうとする。
しかし、意識を取り戻したゴブリンロードは、襲いかかるエデルトルートお姉ちゃんを左手で払った。
「キャァッ!」払われたエデルトルートお姉ちゃんは受け身も取れずに壁に激突する。
「不味いぞ、仕留められると確信してたから…全力で…」
「あぁ、反撃なんて考えてなかったんだろう」
孤軍奮闘するエデルトルートお姉ちゃんに触発されたのか、冒険者たちがゴブリンロードを取り囲む。大人と比べて初めてゴブリンロードの大きさがわかった。冒険者たちの二倍以上の大きさがある。そんな魔物の攻撃を受けたエデルトルートお姉ちゃんは、別の冒険者たちから治療を受けていた。
「リルリルお姉ちゃん…助けて…」
こんな化物に勝てるはずがない。このままではみんな死んでしまう…。ぎゅっとリルリルお姉ちゃんを抱きしめた。リルリルお姉ちゃんの衣装に目が行く。リルリルお姉ちゃんの衣装が透けて素肌が見えていた。確か空腹になると『巫女装束』透け始めると、前に説明されたことがあった。そう言えば、お祓い棒も使いすぎると眠くなと…。
リルリルお姉ちゃんは、無理をしていたんだ…。
冒険者たちは為す術もなくゴブリンロードに蹴散らされ、残るところ7名となっていた。
「へっ…。そんな顔するなミレナ。ボクが倒すって言っただろ?」
壁に持たれながら立ち上がるエデルトルートお姉ちゃん。
「頑張って!! エデルトルートお姉ちゃん!!」
涙がボロボロとこぼれ落ちる。恐怖ではない。感動の涙だった。すると耳元で「まかはにゃ!?」とか意味不明な事を口走り起きたリルリルお姉ちゃん。
「ふわぁぁぁっ…。ねみゅい…」と緊張感の欠片もなく、エデルトルートお姉ちゃんとゴブリンロードを交互に見た。
リルリルお姉ちゃんは、両手を胸の前で合わせ目を瞑った。するとリルリルお姉ちゃんの体から光の鎖が伸び、グルグルっとゴブリンロードの体に巻き付く。
「金縛りです!! ト、トイレに行きたくなるから…早めにお願い…です…」
フッと笑ったエデルトルートお姉ちゃんは、身動きの出来ないゴブリンロードに向かって走り出す。ゴブリンロードに近づくと、先程受けたダメージからか姿勢を崩すが、それでもゴブリンロードの首に向かって飛ぶ上がった。
「『忍術』!! 『鎌鼬!!』
短剣を振り抜くと、突風が舞い風の刃がゴブリンロードの首を切断した。
「「「「おぉぉぉっっ!!!」」」」意識のある冒険者たちは勝利の勝鬨を上げた。