第20話 セラフィーナ視点
一もニにもリルリルな私は魔法の箒にまたがり、魔法の水晶が映し出したリルリルのもとへ急ぐ。しかし、滅多にいないはずの商人が街道で盗賊に襲われているところを助け、森で負傷した狩人を助け、街に帰ると落とし物で困っている老人を助け…。なかなかリルリルに追いつけなかった。
私は他人より親切だという自覚がある。しかし、その親切の根本的な理由は、そこに可愛い女の子が居るか? ということだ。商人の馬車の幼女に、狩人の娘に、老人の孫に…可愛い女の子がいなければ、見てみぬふりをしただろう。
はぁ…。浮気をしてしまった罰だ。
もうすぐ森を抜ける。リルリルの姿はなかった。このままではステーンという宿場街に辿り着く。街に入る前に見つけなければ、また魔法の水晶を使わなければならない。水晶は回数制で非常に高価な魔道具なのだ。街が登場すると、その街に滞在しているのか、既に出発したのか、どの方角へ進んでのか、という具合に選択肢が増え、時間が経てば経つほど探すのが難しくなる。
ズゴォォォーーーン!!!
森の一角で凄まじい爆発音がした。
戦争でも始まったのかな? 魔女であるが油断は禁物だ。いつでも結界を張れるように準備して、箒の高度を下げる。
高度を下げていくと、不思議な格好の女の子と、町娘のような格好の女の子が目に入った。それともう一人…。
はっ!? 魔女の敵! 魔王の使徒!? 何でこんなところに!? いや、いや、そんな事より、女の子を助けないと!!!
私が助けに入るより先に、老人の魔法が、不思議な格好の女の子を貫いた!!
しかし、女の子は致命傷にも関わらず、また不思議な棒を召喚した!?
「お祓い棒です!!」
その可愛らしい声は、間違いない! リルリル!!
適当に振ったようにしか見えなかったが、何故か魔王の使徒が吹っ飛んだ!?
「リルリルゥ!!」
私はリルリルを守るため、地上に降り立つ。
「怪我は? 怪我は…。な、ない? なんで?」
「魔女のお姉さん!?」
そう、リルリルは、私の名前を絶対に覚えてくれないのだ…。悲しい…。いや、悲しいとか、再会の喜びよりも、今は…魔王の使徒だ!!
うん? 勝てるかって? まさか…無理です。足はガクガク震えているし、背中には嫌な汗がダラダラと流れています。ですが、リルリルが死んでしまったら、私は死んだも同然なのです!!
「あいつは…ボクでも…気配がわからない。読めない…」
振り返ると町娘風の女の子はボーイッシュな…ボクっ子!? やばい!! 可愛い!!
お姉さん、頑張っちゃうから!! もう赤字覚悟で魔導具を全力で使っちゃうぞ!!
と、背中に数人の…先輩が…転移してきました…。はい。魔女同士の秘術です…。
「セラフィーナ。よく持ち堪えた。これより、魔王の使徒の追撃に入る。お前も参加しろ」
へっ!? 待って!!
私は…ここに残って…あれ? 待って! 手を掴まないで!
連れて行かないでぇぇぇ!!!