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第15話 エデルトルート視点

 ボクはとある有名な暗殺者と女盗賊団の団長の間に生まれた娘でエデルトルートという。なので幼少の頃から暗殺や盗みの技術を叩き込まれた。それなのに物好きな貴族が、ボクを妾兼護衛にしたいと言い出したら、それがボクの幸せのためだとか言って、両親は喜んでボクを差し出そうとしたのだ。


 そして、花嫁修業だとか言って、兄妹のように育てられた幼馴染のエルランドと…兎に角、男のアレがあんなふうに…。無理やりじゃなかったら…もしかして…。だから手当り次第半殺しにして、湖の街カールグレーン付近ある盗賊のアジトから逃げ出してきた。そして、たどり着いた冒険者ギルドで、喧嘩を売ってきた冒険者から金を巻き上げて朝食を食べている。


 ギィィィっと、冒険者ギルドの扉を開ける奇妙な格好をした少女。威嚇するように目を向けた飲んだくれ冒険者たちは、ボクと同じように目を点にする。


 奇妙な格好としか言いようがないが、心の奥底から本能的に可愛い…守ってあげたいという抗えない感情が湧いてくる。そして、その少女の一挙手一投足から目が離せなくなった。


 奥の受付カウンターに向かう少女は、恥ずかしそうに小走りで…コケた!? 


「イテテ…テヘッ!?」と恥ずかしそうに舌を出す。すると、バタバタと冒険者たちが椅子から転げ落ち痙攣する。異常だ。何か摩訶不思議な妖術でも使っているのか!? 冷静に分析すると、どうやら屈強な男ほど、あの少女の魅力に影響を受けやすいらしい。


 受付カウンターに椅子を勝手に持ってくると、「ウンショッ」と不思議な掛け声で座る。


「冒険者になりたい」


 ボクも冒険者の男たちも、少女と受付嬢の会話に耳を傾ける。少しでも情報が欲しいのだ。『巫女』とか『神具』とか、受付嬢が何故か叫んでいるが、意味が理解らなかった。


 冒険者ギルドには暗黙の了解がある。新規登録した冒険者には、喧嘩を売るという洗礼の義があるのだ。それでボクはひと儲けさせてもらえて、朝食を食べているわけだが…。


「次の担当は誰だよ」「お、俺だが…嫌だよ」「仕方ねーだろ、ルールなんだから」「だからってよ…」


 そんな冒険者たちの動きを察知した受付嬢は、今回ばかりは注意するべきが悩んでいる様子だ。ボクのときも注意して欲しかったけどね。まぁ、最悪、ボクが助けてあげるけど…。


 少女は登録が終わり、クエストボードで依頼内容を確認していた。あまり読み書きが得意でないのか首を傾げたり腕を組んで唸っていたが、顔はニコニコ楽しそうだ。


「お、おい…こ、こ、ここは…ガキのあ、遊び場じゃねーんだ。と、ととっと家に帰りな」


 当然、少女は男を一瞥したが無視する。


「おい! 聞いてるのか!!」男は無視されたことに怒り始めた。


「煩い!!」楽しい気分をぶち壊されたからか少女は叫ぶ。そして、ドンっ! と少女は怒りに任せて、何かを床にぶっ放した。


 耳を劈く爆音が冒険者ギルド内に響き、周囲のテーブルや床の残骸がロックバレットの魔法の様に散弾する。そして、石造りの床は、轟音と共に崩れ落ちる。冒険ギルドの壁は傾き、少女も周囲の冒険者も巻き込み全員が、床に吸い込まれるように消えてしまった。


 なっ!? 何が起こったんだ!?


 ボクは散弾する破片をフォークで弾いていたため無傷だ。椅子から立ち上がり臨戦態勢を取る。そして、砂煙が収まるのをジッと待つ。


 視界が戻ると冒険者ギルドの床に空いた巨大な穴に近づく。同じように他の冒険者も恐る恐る穴の周囲に集まって来た。


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