第14話 エミー視点
「お、おはようございます!」
まずは自己紹介からさせてください。私は宿屋の娘エミーです。この宿は、ステーンという宿場街にあること、冒険者ギルドに比較的近いことで、大半のお客様が冒険者です。お客様は神様ですので、文句はありませんが、体つきが大きく体臭のきつい方がほとんどです。
それでもカレル商会のミレナ様のような可愛いお嬢様が、半年に一度でも泊まりに来てくれるだけで、心が癒やされるのです。もうミレナ様が宿泊する予測を半年前から考えるのが日課になってるくらいですから。
そして、待ちに待ったミレナ様が、宿泊されているのです!! ベッドメイキングが待ち遠しい。ミレナ様の使ったシーツをクンカ、クンカと…。ぐふふふっ。
それに!! ビッグニュースがもう一つ! よくわからない格好をした可愛い女の子がもう一人!! ミレナファンクラブの会員として、浮気心は絶対に駄目なのですが…も、もしかしたら…ですよ…? ミレナ様よりも…か、可愛いかも…。
「掃除してきます」と父親に言い訳をして、宿泊台帳…宿泊者の名前をチェックして…リルリル!! そうか、あの子の名前はリルリル!!!
名前:リルリル 種族:人間 性別:女性 年齢:13歳 職業:巫女
あ、あの姿で13歳!? 私と同い年? 巫女って何? もうなんでもいいかな!? 可愛いし!!
と、私が勝手に興奮していたら…リルリルが真後ろに立っていた。
「あの…これ…」
リルリルは、この宿ご自慢のモーニングミルクの無料チケットを持っていた。
「あ、はい。モーニングミルクですね。今すぐご用意いたしますので、あちらの大食堂でお待ちください」
私はリルリルの分と自分の分のモーニングミルクカップを両手で持ち、リルリルの待つテーブルに座った。
「へっ?」とリルリルは驚いていたが、気にしたら負けなのだ。
「あ、あの…。私ね。宿屋で働いているでしょ? 同じくらいの女の子と…話す機会が無くて…もし、もし…よかったら…少し話せないかなって…」
もう心臓バクバクですよ。本当に!! リルリルから「お断りします」とか言われたら立ち直れない!!
「うん…。いいよ」その返答に飛び跳ねたい気分だった。ふふふっ。宿屋の客相手に鍛えたトーク術で、リルリルの個人情報をアレヨアレヨと引き出すことに成功する。
「リルリル…内緒だけど、もう一杯、モーニングミルク飲む?」
「うん…。飲みたい…」
厨房でミルクをミルクカップに注ぎ、私は自分が使っていたミルクカップとリルリルのミルクカップを内緒で交換する。そして、リルリルが、私の口付けた部分に、その可愛い唇を重ねる瞬間をジッと見つめた。
よしっ! バレてない!!
急いで、私もリルリルの口付けた部分でミルクを飲む。
うん、間接キス成功!!
話によると、リルリルは、冒険者ギルドに登録に行くらしい。えっ!? どう考えても魔物と戦えないでしょ!? と驚く。しかし本人曰く、狼や盗賊と戦っても無事だったらしい…。だ、大丈夫かな…いや、絶対ダメでしょ!?