第13話 仁王視点
透明化出来ない飢えた狼を街の外に待たせ俺は一人で、リルリルの盗撮を続ける。もう正直に言おう、これは神々の命令による盗撮だ。
「カレルさん、どの神様が良い?」
「そ、その言い方は…不謹慎ですが…。『商いと幸運の神マチュヒナ』様でしょうか」
その男の言う通り、リルリル。不敬過ぎるぞ!!
いや、俺の中では、もう…神々の品位は地に落ちているからな…。
もう、どうでもいいか。
リルリルははそれっぽく、いつもの様に難解な手順で『お祓い棒』を召喚して目を瞑り…『商いと幸運の神マチュヒナ』、『旅と巡り逢いの神チェシェンコ』、『健康と喜びの神エローヒナ』に神楽の『歌舞』で歌って踊って、『祈祷』で祈りを捧げる。
ピカーッ!! と、体が神々しく光りだす。人間どもは驚愕し、俺は嫌な予感がした…。
予感は的中する…。
リルリルの背後に『商いと幸運の神マチュヒナ』、『旅と巡り逢いの神チェシェンコ』、『健康と喜びの神エローヒナ』が一瞬だが降臨し、リルリルの体に何かを注ぎ始めた。
神々は、各々口に指を当て、黙っておれと…俺と人間たちにジェスチャーを送った。
すると人間たちの体も光だし…恩寵を与えられたのがわかった。
もう…いい加減にしてくれ!! 俺は心の中で叫ぶ。
「ふーっ。こんなことしか出来ないけど。商売繁盛すれば良いね」額に汗をかいたリルリルがあっけらかんと言い放つ。
人間達は、何と言っていいか理解らず、「あははっ。素晴らしい祈祷でした」と感謝する。
「そんなに喜ばれると嬉しいな。ガンガン街の人にもしちゃおうかな?」
「それは駄目ー!!」
神々の降臨は口止めされているため本当のことは言えないが、人間たちは、「街中で『祈祷』すると大変なことになるから!!」と、必死に止めていた。
「何が大変なんだろう?」リルリルは呟く。
そして女の子が「ま、街中の人が集まって来て、大混乱になちゃうからだよ」と説明する。
すまんな…人間たち、神々が愚かで…。
俺は人間たちに謝罪した。
しかし…。
リルリルがやたら可愛く見えるのは何故だ?
俺はリルリルの神具を再度確認する。
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神具:巫女装束(緋袴)
贈主:衣装と装飾の神ゼレーニン
加護:恥じらうほどに見るものを魅了する。しかし、
相手の感情が一定以上に昂ると効果は消えてし
まう。
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これか…。
滅茶苦茶すぎて、もう手が付けれられんな。
俺は諦めた。
しかし、神々をここまで熱狂させるリルリルトは一体何者なのだろうか?
いや、調べたのだ。
結果は普通の街娘なのだが、それでは納得がいかないのだ。
リルリルが人々を魅了する要素とは何か?
愛くるしい顔立ちに、憎めない行動、可愛い動作だろう。
そして『巫女装束』の効果で、それらを底上げしているのか?
んっ!?
もしかして…。
神々が一致団結して…リルリルを作りやがったのか!?
そんな馬鹿な事を…奴らならやりかねない…。
仁王の額から汗が零れ落ちた。