第12話 ミレナ視点
馬車の外は日が落ち始め、森ではなく建物が見えていた。「リルリルお姉ちゃん! 起きて!!」と、私はリルリルお姉ちゃんを起こす。
「うん? えっと…カールグレーンだっけ? もう着いたの?」
「違うよ。ここはステーンという宿場街。今日からしばらくここに滞在するの」
馬車が停車するまでの間、揺れる馬車でぐっすり寝る人なんて始めて見たよと教えてあげた。
すると、リルリルお姉ちゃんは、「この白衣のおかげだね」と神具を説明してくれました。
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神具:巫女装束(白衣)
贈主:衣装と装飾の神ゼレーニン
加護:暑さ寒さ衝撃など肉体的が不快と感じる環境か
ら身体を守ります。
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商人である私達は、領都ベントソンや森の街ヤノルスで仕入れた商品をこの街で、売り捌く。
リルリルお姉ちゃんは、一人で湖の街カールグレーンに向かっても良いけど、急ぐ理由もないし、この街も楽しみたいと、一緒に滞在してくれることになりました。
宿代と食事代はお父様が支払います。
盗賊を追っ払ったお礼と、カールグレーンへの道中、『ロールプレイングゲーム』該当者のリルリルお姉ちゃんがいると安全だからだって。私もそう思う。
そんな内容が夕食の話題だった。
夕食の後は、リルリルお姉ちゃんと別室だったけど、私はリルリルお姉ちゃんの部屋に遊びに行く。
殆ど友達のいない私は、嬉しくて仕方がない。
でも、それを表情に出すのは恥ずかしいから、廊下で深呼吸する。
リルリルお姉ちゃんとの会話は、不思議なくらい自然だった。
私…そんなに、おしゃべり得意じゃないのに?
「お嬢様で大きな街育ちのミレナは、私の知らないことを沢山知ってるね」と驚いていた。
一番驚いていたのは、2年後の洗礼式後のまた1年後に学校へ通うことだった。
「洗礼式後の一年間って何してるの?」
「えっと、洗礼式の後は魔法が使えるから、家庭教師を雇って入学の準備って言ってた」
「ま、魔法?」
「え!? リルリルお姉ちゃん魔法使えるよね?」
「魔法って選ばれた人だけのものじゃないの?」
「魔力があれば誰でも使えるはずだけど…」
リルリルお姉ちゃんが、ステータスを表示させると、ほっぺたとほっぺたがくっつくぐらい近づいた。リルリルお姉ちゃんの近くにいると、頭がぼーっとして…抱き着きたくなる。
リルリルお姉ちゃんは、私の首筋の匂いをクンクンと嗅いだ後、ハッとした表情で、自分の『巫女装束』を引っ張り、クンカクンカと自分の体臭を確認する。
「リルリルお姉ちゃん!?」
「ご、ごめん!! やっぱり臭いよね!!」
「へっ? 何のこと?」
「いや…ミレナは良い匂いなのに、私が臭いかなって…」
突然何を言い出すのか!? びっくりしてしまった。
「そんなことないよ。全然臭くない!! それよりも、念仏、合掌、神楽って何!?」
私は眼前の空間に投影されているステータスを指差して興奮している。
「えっと、踊ったり、『お祓い棒』を召喚したりするの」
「普通は、ここに…魔力って項目があるんだよ?」
「ほら、やっぱり魔法使えないんだ…」
「違うーっ! 魔法なんかより凄いでしょ、絶対!!」
「でも…魔法って見たことないから、どっちが凄いかわからないよ?」
「そうなんだ…」
「あっ、そうだ! 商売繁盛の『祈祷』してあげるよ。巫女ってそれぐらいしか出来ないし」
と言う訳で、お父様と使用人たちを連れて来ることのになったのです。