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ーーGishüーー  作者: 炉鈴途 絢慈
第一章 地獄に堕ちた人たち
3/3

第一章2 『無力な無能』

 

 ーー助けないと…助けないと…助けないと…


 僕の身体は脳は心は目の前で起こってる、

 初めての出来事に動揺が隠しきれない…。


 なのに、こんな時に僕は

 幼き日にTVで見たことのある。

 ヒーローアニメを思い出していた

『正義は必ず勝つ!』そんなよく聞くセリフを

 頭の中で幾度も連呼する。


 しかし、世の中そんな、アニメや特撮みたいには

 上手くはいかない、正義だって負ける時もあれば…

 大事な存在を守れない時だってある…


 …それも、残酷な1つの真実だ…。


 でもこの時、僕の頭にそんな事を考える

 キャパなんてない。そしてそんな発想もなかった


 ただ…ヒーローみたく助けて

 怪我は無かった?無事で良かったねと

 笑い合いたかっただけなのだから。


 他の人なんて呼ぶ必要なんてない、

 1人でやる、これでも体力には自信はある、

 そう思い彼を助けようとしていた。


 黒衣を着た身長約180cmの大人2人に対して

 こっちは165cmの精神年齢甘めの子供1人

 だというのに…


 今思うと少し厨二だったのかもしれない…

 何故なら、少し冷静になれば

 多勢に無勢の状況で、勝つ見込みなんて

 無いのだから、根拠のある戦なら大いに結構だが…

 根拠の無い戦はただの無謀だ…。


 それでも、その時は無策と言われようと

 無意味だと言われようと止まれなかった。

 屈強な全身黒衣の男たちに向かって…


 …僕の足は駆け始める…


 生まれて初めて出した事のない様な

 大声を発して、荒げて、相手を威嚇する。


 そして、物陰に落ちていた鉄パイプを

 強く、強く、これでも、かと言うぐらい握りしめ


 少年を黒ワゴンに無理やり押し込んでいる

 黒衣を身に纏った、男の背中に


 思いっきり、鉄パイプを叩き込んだ…!!


 男は一瞬のみ、世轟よどめき…そして直ぐさま

 こちらを振り向き、

 僕を見下ろし黒衣の男はこう言った…。


 ……やぁ……こんにちわ……


 にやりっと頬の肉を上げ、笑みを惜しげもなく

 零す(こぼす)黒衣の男、その時

 鼓動がとても、強く…速くなるのを感じた…

 手をあてなくても聞こえるくらいに。



 ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ!ドクンッ…!!



 先と変わらぬ、目の前の現状に自分のした事の、

 危うさと愚かさに気づく、逃げなければという

 気持ちが頭の中を何度も何度も過ぎる


 そして緊急事態は告げていた…もう遅いと…



 1人の黒衣の男が(おもむろ)に近寄り…勢いよく

 僕の腹部を思いっきり、蹴り上げた。


 空を舞う僕の身体はこの状況の意味も理解も、

 追いつかずに焼ける様な、固いアスファルトの上に

 叩きつけられた…


 そして…黒衣の男は執拗(しつよう)

 顔から背中、腹部、太ももに

 足先を鋭く尖らせ的確に蹴り始める


 何度も…何度も…何度も…何度も…


「グウゥゥッ!ゲェッッッッ゛…!!」


 身体中が痛みに侵されていくのを感じる

 夏の猛暑で熱を帯びているはずの、

 身体の体温が急激に冷え切っていく…


「た、た゛…助゛け…っ…おっゔぇッッッ!!!」



 僕は嗚咽と共に吐いていた

 褐色かっしょくに鮮明な赤い血を混じらせながら、

 青く腫れた顔を涙と体液そして血で歪めながら…


「コイツも連れてく、そのくらいにしとけ」


 朦朧(もうろう)とする意識の中、もう1人の黒衣の男は

 僕を執拗(しつよう)に蹴ってきていた男に対し

 何かを喋っている、そして男は蹴るのを止め…


 僕を荒々しく担ぎ始め、黒のワゴン車に

 向かい歩いていく、先にワゴン車に居た少年は

 僕に泣きながら…


『ごめんなさい』と連呼していた…。





「…そうか、負けたんだ…僕…」




 ーー僕の中で…何かが…

 急激に冷め消えていくのを感じた…。



 ※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ 



 『時は廻り季節は巡り人は変わる』



 そして今…5年の歳月を目の前に

 僕は20歳を迎えようとしていた…。


読んで頂き有り難うございます〜!

次話はもっと書きます〜!^o^

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