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「………っく、ははッッぐッ」



腹から湧き上がってくる衝動をそのまま口からだせば笑い声としておとされた


衝動は底を知らないかのように湧き上がってくるのにそのまま笑おうとすると腹の傷が痛んでうまく笑えない

腹を押さえ蹲り膝を立てる


衝動を抑えようと腹を押さえているのに身体は変わらず痙攣したかのように震え続けた

その度に傷口が痛み、今更ながら傷をつけてくれた奴を恨む



(………これが【笑う】か。クソがッ)



初めて笑えるというのに痛みのせいで思う存分解放できないのが情けない


未だ湧き上がる衝動のせいで笑いと痛みが交互に押し寄せ、まるで拷問だ





「お、お兄さん⁉︎」



女が驚いたような声をだすが返事をする余裕もない


すると今度は「笑っ……〜ッかわッ心臓、痛いッ」と意味の分からないことを言っている









今まで会ってきた全員に嫌われたこの顔を「好きだ」と嬉しそうに肯定する女の笑った顔を思い出すだけで、衝動は次から次へと湧き上がる





【笑う】というのはどうやら目の裏にも熱をもつものらしい


その熱を冷ますことも抑える方法も知らないからそのまま放っておけば、今度は頬が濡れだした



(ンだこれ…)



顔に手を当てると自分の目から水が流れていたことに気付く


【笑う】と【涙】がでてくるらしい



自分にも【涙】があったのかとライは思わずその濡れた手を凝視した






「お兄さん、大丈夫ですか?」



笑いが少しおさまり身体の震えも無くなったからか目の前の女が再度声をかけてくる


だが、何故か泣いていることを知られたくなくて「うっせぇ、コッチ見んな」と突き放せばその声が驚くほど掠れていて声を出したのは失敗だったと内心で舌を打った




けれど女はその後、何も言わず暫く沈黙が流れた







「あーぁ、」と小さく声をもらし顔を掌で拭う


項垂れていた首を戻し頭をあげれば女は背中を見せるように座っていた


何をしているのかと思ったがすぐに自分の発言のせいだと気付き思わずまた笑いがこみあげる



今まで笑ったことなどなかったのに



この短時間で随分と引っ掻き回されたもんだと自分の驚くほどの変化に呆れるしかない









「なぁ、」と声をかければ


「はいっ!」と弾けたように振り返る








「あんた、趣味くっっっそわりぃな」

「そんなことないっ!」



眉間に皺をよせて怒りだす目の前の女の薄い緑の瞳が、太陽の光を含んでいて


なんだかひどく眩しく見えた






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