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75°








「…何してんだ?」


居間の扉を開き目に飛び込んできた光景にカーターは思わず硬い声を出してしまう


愛娘が髪をボサボサにし自分と同じ色の瞳に涙を滲ませ弟子にと迎えた筈の青年が顔を赤く染め険しい顔でその愛娘の頭を掴んでいる


側から見たら完全に愛娘が暴行を受けているように見受けられるのだが当の本人はこちらに気付くと「あ、おかえりなさい」と平然と声をかけてくるし加害者に見える青年は手を離さないまま「おいっ師匠‼︎あんたの娘には恥じらいってもんがねぇのかッ!!!」と怒鳴りつけてくる始末だ


益々困惑しながらカーターが眉を顰めれば青年であるライはカーターの後ろから入ってきた彼の愛妻であるニナに気付くと今度はニナにも怒鳴りつけた


「あんたもだッ!朝あんなこと言っといて奥さんがミィを助長させてんじゃねぇか!!!」

「あらぁ?なんのことかしら?ふふふッ仲良しね」

「えへへへ」

「あんたらなぁ…ッ!!!」


どうやらニナは何か心当たりがありそうだし娘であるミーシャも頭を掴まれながらも何やら嬉しそうにしている

何となく事の次第が予想できたカーターは額を指で掻きながら「あー…」と申し訳なさそうにライに声をかけた


「まぁ、その、なんだ。悪かったなぁライ。ミーシャが暴走でもしたか」

「わかってんならどうにかしろよ‼︎」


ライの怒声にカーターは少なからず驚いた

なんだかんだと娘の駄々や好意を受け入れていたライがこうも声を荒げ雇い主である自分にさえ訴えてきたのだ


ミーシャに対しては心を許しているかのように怒声も辛辣な言葉も隠していなかったライだが雇い主であるカーターやニナのことは信頼し力になりたいと思ってくれていてもどこか線を引いているようでもあった


そんなライがそれをかなぐり捨てているのだ

ミーシャの滲んだ涙とボサボサの髪を見ればやりすぎじゃないかとライを非難したくもなるがそこまでのことを自分の娘がしたのかと思えば非難より先ず申し訳なさが募る


「あー…、ミーシャ。おまえがライに惚れてんのはわかるがライの気持ちも考えてやれ」

「………はぁい」


父であるカーターにまで窘められたことで渋々ミーシャも己の欲求を反省したがやはりもう二度とやらないとは約束ができなかった

その言質を取れていないことに気付かなかったライはこれでミーシャが諦めたと思い安堵の溜息と共に手を離す


「ごめんね、ライ?」

「…わかったなら、もういい」


ミーシャがソッと謝罪をし溜息を吐きながら許すライを見てカーターは(……逆じゃねぇか?)と思ったがライの名誉のためにその疑問はソッと胸に閉まっておく事にした















「おー、コレ全部ライが下処理したのか」

「まぁ」


ダイニングテーブルに所狭しと並べられる野菜料理の数々に感嘆の声が上がる

席につき少し冷めてしまった料理にそれぞれ手を伸ばしながらカーターがライに声をかけた


「こんだけ処理すんのは大変だったんじゃないか?」

「すげぇめんどくさかった。奥さんよくあんなの毎日やってんな」

「ふふっ慣れればあっという間よ」

「確かにミィも早かったがこいつもめんどくせぇつってたぞ」

「ぶわっはっはっ‼︎ミーシャは大雑把だからなぁ!」

「あら、でも今日のご飯はちゃんと均等に切れてるわよ。ライくんのためにしっかり教えてあげたのね?」


仲良く親と会話をするライに胸が暖かくなりニコニコしながら話を聞いていたミーシャだったが矛先が自分に良くない形で向いてしまい慌てて母のフォローにのった


「私だってちゃんとやろうと思えばできるよ」

「あ?おまえいつもはちげぇの?」

「そ「ミーシャは店に出すやつはしっかりやるんだが家で作ると切り方や味付けが大雑把になるんだ」

「ちょっとお父さん‼︎」


そんなことないと誤魔化そうとしたミーシャの言葉はカーターの暴露によって掻き消えてしまう

「へぇ」と口角を片方上げながら笑うライの姿に(だからその顔かっこいいんだってば‼︎)と憤りながらミーシャは話を変えようと試みた



「それよりッお父さん達遅かったね?料理の数増えたから作ってる途中で帰ってくるかと思ったのに」

「あー、ダリオがしつこくてな」

「ダリオさんが?」

「誰だ?」

「カーターの古い友人でね、商会長さんをやっていらっしゃる方よ。店の荷物をあちらのご厚意で商会の倉庫に置かせてもらっていたから今日の搬入も手伝っていただいてたの」

「ほらライ、昨日一緒に行った商店の」

「あぁ…」

「そうそれだ、昨日おまえらあいつの店で買い物したんだろ?」


ニナとミーシャの説明にライが納得し思い出したように声を漏らせばその会話にカーターはポトフを食べる手を止めウンザリという顔をして言葉を続けた


「あいつが言うには昨日おまえらの接客をした従業員の話を聞いてライに興味をもったらしくてな」

「は?」

「根掘り葉掘り聞いてきてめんどくせぇから良い奴でミーシャが骨抜きだっつったんだよ」

「はぁ⁉︎」

「したらおまえに会わせろっつってしつけぇし搬入中もずっとうるさくてな。終いにはミーシャにも昨日会えてねぇから会いたいっつって家に来ようとするダリオと残ってる仕事をやらせたいあいつの部下との口論が始まってな」


ウンザリという顔で話すカーターだが好き勝手に話題にされたライも眉間に皺を寄せ溜息を吐いていた

そんなウンザリ顔の男共の横でミーシャとニナはのんびりと会話を繰り広げる


「私、一昨日もダリオさんに会ってるよ?」

「あの人はいつでもミーシャに会いたいのよ」

「ふふっ、私にとってもダリオさんは親戚のおじさんみたいなものだから嬉しいな。部下の人も来てたの?」

「搬入をお手伝いしてくださったのよ。…例の商会のご子息の家具もあったもの、助かったわ」

「あー…」


慣れ親しんだ熊みたいな知人を思い浮かべ笑みが浮かんでいたミーシャの脳裏にみどりの髪が過りその表情は苦々しいものへと変化する

ニナも僅かに吐息を溢すと切り替えるように話を続けた


「手伝ってくださる方が多かったからその家具ももう部屋に運び込んでもらえたのよ」

「おー、そうだ。テッドもいたしな、わりかし早く終わったっつうのにあんの馬鹿が、」

「…誰だっけ?」

「………ミーシャ…」


今朝会ったばかりで尚且つ告白されたというのにミーシャの記憶からは既に名前が抹消されていた

そんな娘の無情さにカーターは僅かに溜息を吐くがまぁいいと諦め話を戻した

哀れな騒音野郎である


「あまりにもしつけぇから飯食いに来いって誘ったんだよ。昼飯はもうミーシャが準備してただろうからダリオの分はねぇっつって夕飯にしたけどな」

「あ、じゃあ今夜ダリオさん来るんだ?」

「おう。っつう訳で悪いな、ライ。ダリオの奴来たら適当に挨拶だけしてくれるか」

「……俺は、別にかまわねぇが」

「あン?なんか気になるか?」

「………」


カーターの疑問にどこか言いにくそうにしているライを他所に母であるニナは「ミーシャ達が沢山お昼作ってくれて助かるわ。お夕飯にまわせるわね」と嬉しそうに話すのでミーシャも笑顔で「私もそう思った!」と同意した

そんな二人の様子を黙って眺めていたライはその視線をスッとカーターに戻し真剣な表情で寸の間黙る

そしてその表情を崩し息の抜けるような笑いをこぼした後「いや、なんでもねぇ」と止めていた手を再び動かし始めた


その様子にカーターは一瞬眉間に皺を寄せるもすぐに鋭い瞳を和らげいつもの調子で言葉を続けた


「ダリオの奴がうるさかったら放っといていいぞ」

「今朝の奴よりもか」

「あいつは規格外だなぁ。そういやぁダリオを飯に誘った時あいつも来たそうだったな」

「げぇっ!」

「コラ、ミーシャ」

「ママ私イヤ」

「…あの騒音野郎も来んのか」

「おまえらな…」

「心配しなくても彼にはお断りしておいたわ。御近所さんとのお付き合い方も考えられない方をお招きすることはできませんって」

「ニナ…」

「「……」」


ニコニコといつもと変わらない笑みを浮かべるニナの言葉に三人とも何も言えなくなってしまう





そして、





気付けばライが今まで入る隙がないと思っていた【家族】の会話に当たり前のように自分が加わっていたことを


ライ本人も気付いていなかった











まさかのブクマ数200越え…‼︎

とても嬉しいですっありがとうございます!

今回固定の視点ではない気がしたため新たに「°」を付けてみました、今後もあるかわかりませんが覚えていただけたら混乱もないかと思いこちらに記載させていただきました。

ここ最近更新が滞ってばかりで申し訳ありませんっ!

変わらずお待ちいただけている方には感謝しかありません、本当にありがとうございます。

今後もお楽しみいただけたら幸いです。

ブクマ評価感想読了も本当に励みになっております、皆さま聖人ですか、本当にありがとうございました!

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