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70

な、70話…⁉︎

まだ書きたいことが書けてないのに100話いきそうなことにも段々と指のノリ具合が遅くなっていることにも慄いておりますがここまでお付き合いいただけてることとても嬉しいです!

ブクマ評価感想がとても原動力になっておりますので本当に感謝ばかりです、ありがとうございます!

これからも楽しんでいただけたら幸いです。








少しでも話を先延ばしにできないかとミーシャは「何か飲む物も持って行こうか」と小さな悪足掻きを試みる


なんでも良いというライにならば温かくするのに時間がかかるものを、と小鍋を取り出したところで「ンな手間かかるやつじゃなくていい。果実水じゃダメなのか」と眉を顰めながら不思議そうな美声を落とされてしまいミーシャはその純粋な問いに「ダメじゃないです…」と答えることしかできなかった



居間へと移動し三人は腰掛けられるソファに二人は並んで座る

ライがミーシャから少し離れて座ったためミーシャはその隙間を埋めて寄り添いちゃっかり手も握った


ミーシャの腕に触れているライの身体がピクッと動くが先に宣言をしていたためか溜息一つで何も言わずにミーシャの行為を受け入れた


そのことにミーシャは喜びで胸が高鳴ると共に不安で鼓動も早くなる

これから話す内容でライがどんなふうに思うのかが怖い



ライの顔も見れずミーシャはただ繋いだ手だけを見つめて口を開いた



「じ、実は今日みたいなことって初めてじゃなくて…」

「みてぇだな」

「う、…ッそ、それで今日みたいに断るんだけど、その時に、ね…」

「あぁ」


ライの静かな相槌にミーシャの眉が下がる


想いを伝えてくれた相手の話を勝手に話すことへの罪悪感ではなく断ったくせに傷つく自分の身勝手さをライに知られたくない

それすらも己のことしか考えていなくてミーシャは知らずに顔を歪めてしまう


けれどライは眉を顰めながら真剣な表情でずっとミーシャを見つめていた

静かにミーシャの言葉を待つライの様子に俯いたまま口の中のものを飲み込む


ライは【恋愛】を知らないと言っているからその際に伴う心の機微も知らないだろう、なのに何度も陥落させてくるのだから本当に魔性の大魔神である

ならばここで【恋愛】について話をすることはライの中で何かが芽吹くきっかけになるかもしれない

そう思ってしまえば己の醜態告知など二の次である


ライに自分勝手な奴だと軽蔑されるか

ライの中に少しでも【恋愛】というものを見つけてもらえるか


ミーシャはグッと握った手に力を込めた



「……その、時…相手が、必ず辛そうな顔するの。青髪の人も、そうだったでしょう?」

「……」

「それだけ本気で想ってくれてるって、こと、なんだけどね。でも…、少しだけ、胸にトゲが刺さったみたいになるの」

「……」

「それだけだったら全然平気なんだけどね、偶に…怒る、人もいて」

「怒る?」


今まで黙っていたライが声を低めて問い返す

何か誤解させてしまったかとミーシャは慌てて声音を明るくするがやはりまだ顔は上げられない


「や、その人たちも想ってくれてるからこそだとは思うんだけどねっ!……自尊心とか、認めたくないとか、理由は色々だと思う。でも、怒る人はみんな私を許せないって顔をするの」

「……」

「自分の手を取ってもらえないんだからそう思っちゃうのも仕方ないんだろうけど、ね。……私は、悪くないって…わかってるんだけど、それがちょっと疲れちゃう、時も、あって…」

「……」


声が少し震えてしまった

慌てて口の中のものをもう一度飲み込み努めて明るい声を出す


「でも自分でもそんなに意識してないことだったからまさかお母さんにバレてるとは思わなくて。だから、さっきはびっくりして思わず泣いちゃったの。ほら、私よく泣くし」

「…あぁ」

「でしょ?だから、今日が特別だっただけ。あ、青髪の人が特別ってわけじゃないからね?」

「……」


ライが相槌を返してくれたことに少し安堵してミーシャはやっと顔をあげる

眉を顰めて真剣な表情で見下ろしていたライに向けて「だからあの人のために泣いたわけじゃないの」と笑みを浮かべたがその口元は少し引きつってしまった


その歪な笑みにライは益々眉間に皺を寄せるとミーシャに握られていた手を握り返した


ミーシャの鼓動が大きく跳ねるとライは徐に繋いでいる手とは反対の手をミーシャに伸ばす

息を呑んだミーシャの細い首にソッと手を伸ばしたかと思えばそのまま垂らしていた髪を触る


ー リンッ


ゆっくりゆっくり触れた手を下ろし結った髪の束を摘んだ


ー リンッ


音を鳴らしながらその結ばれた先にある鈴を見つめるライの近さにミーシャは心臓が壊れそうになる


顰めた柳眉の下の金の瞳を僅かに伏せている様子は普段よりも危うい色香を纏っている

その妖艶さにミーシャは本気で気絶するかもしれないと意識が薄っすらしてきたところで普段よりも低い低音が奏でられた


「うぜぇな」

「え⁉︎」


薄れかけていた意識がハッキリする

己の疾しさが口から出ていたのかと慌てて口を抑えるがライは視線を鈴に向けたまま「そいつら」と続けた

どうやら疚しい思考はしっかり胸の内だけに止めていたようだと安堵するミーシャに気付かずライは低めた声音のまま続ける



「俺は、そいつらがンなめんどくせぇツラした理由も、おまえが泣くほど溜め込んだ理由もやっぱわかんねぇが…」



ー リンッ


ライの瞳と同じ色の鈴が鳴る



ライは一度言葉を途切れさせるとゆっくりと目線を上げた


ミーシャを見つめる金の瞳が僅かに揺らぎスッと鋭さが増す


視線を逸らすことは許さないと言われているようで


その力強い金の瞳に魅せられ

ミーシャは何も考えられなくなる





「勝手に惚れた奴らがおまえを泣かせんのはクソ腹立つ」




ー ドクン


金の瞳の中で怒りの炎が静かに揺れる

よく怒声をあげるライだがこんな瞳は初めて見る


己を貶されても怒らないライが


ミーシャのことで怒っている




ー ドクン 


ー ドクン



心臓が痛い

息ができない

胸が苦しい



歓喜の涙が、

溢れた



彼は何度こうした涙を流させるのだろう


ライの言葉一つ一つに


ミーシャは何度でも


溢れる想いを涙に変えてしまう



涙を拭うこともせずその力強い金の瞳に魅せられていればその瞳がふと柔らかく細められる


そこでミーシャはやっと思い出したように息ができた


その柔らかい瞳にも心臓は大きく音を立てるが胸に伝わるのは強く締め付けられる想いではなく暖かさだった



ポロポロと涙を溢し続ける薄緑色の瞳を見つめながらライは息を漏らすように笑う


そして両手でミーシャの濡れた頬を包み込むといつもの聴き心地の良い低音に揶揄いの声音を混ぜた


「おら、おまえこうやってすぐ泣くんだから。ンなクソ野郎どもの分なんかねぇだろ。勿体ねぇことすんな」

「……ふふ、勿体ないの?」

「勿体ねぇだろ、そのうちおまえ泣きすぎて干からびんぞ」

「……確かに、喉渇いた」


ケラケラと笑うライはその口調とは裏腹にミーシャの涙を優しく拭っていく


ミーシャは濡れる薄緑色の瞳を眩しそうに細め今度は心からの笑みを浮かべた









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