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「………まさか、また泣いてんのか」

「………ッく、な、いて、ない」

「うそつけ」

「だ、だって…」

「あ?」




ミーシャはこみ上げてくる想いをポロポロこぼす




なんで、

そんなことが言えるんだろう







【家族】を知らない


それは、


今まで一人だったということではないのか




幼い頃から、ずっと


無条件で愛してくれる人がいなくて



周囲からの冷眼が当然だと


そう思うほどのことを



ずっと、一人で






耐えてきたのではないのか







なのに、『甘えていい』と言ってくれるの



自分は助けが必要な幼い時期に

【親】を知らないまま

一人で乗り越えてきただろうに




『あったかい』と言ってくれるの



【家族】を知らないのなら

自分の手の中にないものを

嘆いたり妬んだりしてもいいだろうに



『守る』、と…


そう、言ってくれるの







なぜ、



こんな人がいるんだろう






幼い頃から無条件の愛情ではなく


身勝手な価値観をぶつけられてきたのなら



優しさを向けられることも少なかっただろうに




ライは、


何度も何度も 優しくしてくれた





それはきっと

周囲から学んで得たものではなくて




本来の彼自身のもの




その、優しさは


理不尽な周囲の仕打ちにも

曇ることはないものなのかと







あぁ…



好き


大好き






この年になっても甘えている自分がひどく情けない


けれどライは『別にいい』と


『自分の年を知らない』と言っていたライは


そう言って




ミーシャを甘やかすのだ







「…っライ、が、私も、お父さん、もお母さんも……っく、だ、大事に想ってくれてる、のが嬉しくて」

「………ンなもん、世話ンなってんだ。当然だろ」


「うぅッ、ライ、好きぃぃぃぃ」

「っ、……だから、なんでそこは平気なんだ…」


「平気じゃ、ない………胸が苦しい…」



こみ上げてくる想いに胸を締め付けられるミーシャはライの身体に必死にしがみつく


少しでもこの想いがライに伝わればいいのにと


するとライは両手をそっとミーシャの背中と後頭部に添える



「………ンな、つれぇのか」

「…?」


そう問いかけたライの声音こそ僅かに辛さを滲ませている


だがミーシャは言われた言葉の意味がよくわからず喉をひくつかせながら涙で濡れた瞳を瞬かせた


まあある意味辛い

好きすぎて


想いが募ると幸せだけではなく切なさも伴いそのどうしようもない感情の渦を伝え切れないのは確かに辛いものだ


ライはそのことを聞いているのだろうかとミーシャが口を開けば先にライの美声が落とされた



「あんな奴でもか」

「へ?」

「あんな騒音野郎どうでもいーだろ」

「ん?」


騒音野郎とはまさか青髪のことだろうか

貢ぎ坊ちゃんと言いわかりやすい呼び名である


だがなぜ今その人物が出てきたのかやはりミーシャにはわからない


少し小さくなった嗚咽を深く息を吸うことで更に落ち着かせる、大好きな香りを過剰摂取し過ぎてクラクラした

微かに震える吐息を長く吐きミーシャは疑問を口に出した


「どういう、意味?」

「あ?」

「なんで、あの人が、でてくるの?」

「は?」


言葉を途切れさせながらもミーシャが尋ねればライの言葉が止まってしまう

ミーシャはライの胸に埋めていた顔で彼を見上げればライは眉を顰めて怪訝そうな御尊顔をしていた


ミーシャが更に首を傾げてライの返事を待てば益々ライの柳眉が寄る


暫くお互い何も言わずに見つめあいミーシャが御尊顔にウットリし始めた頃


ライは表情を変えずに僅かにその薄い唇を開いた、色っぽい


「……奥さんが言ってたことで泣いてたんじゃねぇのか?」

「え、ちがうよ。あ、さっきは確かにそうだったけど今はライのこと好きな気持ちが溢れたの」

「はぁ?」


寄せていた柳眉を片方だけ上げるとライは鋭い金の瞳を眇めジィッとミーシャを見下ろした


何か誤解をさせてしまったみたいだがスッと細められた金色がとてつもなくかっこよくて思考がうまく纏まらない

ミーシャが胸をときめかせ頬を染め始めるとライは苦虫を噛み潰したような顔で添えていた両手を離し前髪をガシガシと掻き始める


腕が離れてしまったことをミーシャが物寂しく思い眉を下げれば離れた腕はミーシャの頬へと伸びた


ぶにッと長い指がミーシャの頬を摘む


「くそっ紛らわしいんだよ、てめぇ」

ひぇ(えぇ)~、ひょへんひゃひゃい(ごめんなさい)

「……だが、」


僅かに目元を赤くし眉間に何本も皺を寄せていたライはすぐに手を離すと今度は真剣な表情でミーシャを見つめだす


ドキッと

また、心臓が大きく跳ねた



「…やっぱ、騒音野郎のことでも泣いてんじゃねぇか」

「……えーと、あれはあの人のことと言うより…」

「ちげぇのか?」

「あれは、今までの分が…浄化されたというか」

「は?」

「え、えーと…」


言い辛い


何故こんなことを聞いてくるのか、興味を持ってくれるのは嬉しいがこんなことに興味をもたなくてもいいではないか


ミーシャはいっそ視線を逸らして誤魔化したかったが真剣な表情で見つめてくるライから視線を逸せない

そんな大好きな人の鋭く真剣な御尊顔で見つめられてしまったら国家機密でさえ白状してしまいそうだ、知らないけど



「と、とりあえず立ちっぱなしもアレだし座ろう」

「はぁ?」

「居間に行こう、居間」

「そこでいいじゃねぇか」

「え、だって椅子じゃくっつけないでしょ?」

「ッ、アホか。ひっつかなきゃいーだろ」

「無理。今から話す話はライにくっついてなきゃ話せない」

「……」


なんとか誤魔化せないかと問題を先延ばしにしたミーシャだったがライは一度舌打ちをすると「だったら離れろ。歩けねぇ」と移動することを承諾した


何故そんなに気になるのかとミーシャは内心で頭を抱えたがライとダイニングの椅子ではなくソファでくっつけるという口実に


(これは、仕方がない)


とアッサリ折れることにした







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― 新着の感想 ―
[一言] ゆーくさんからコメントの返信が来てて私の方が嬉しすぎて失神しました(*´Д`*)笑 いつもいつも楽しませてもらってます!世の中はコロナコロナで精神的に疲れるものがあるのですが、その中で愛お…
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