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大変お待たせいたしました…!
諸事情により更新ができなかったためお詫びになるかわかりませんが活動報告にささやかながらSS載せました。
またもや会話形式です。今回は初日の手を繋ぐかどうかの攻防戦です。
本っ当短いですがよろしければご覧ください。
長々と失礼しました。
ブクマ評価感想ありがとうございます!
とても励みになっております!
今後も楽しんでいただけたら幸いです。
ありがとうございました…!
「やっぱ諦めねぇ!!!ミーシャ!!そいつが嫌になったらいつでも言えよ!!??」
「そんな日、一生来ません」
「そんなのわかんねぇだろう!!!」
「わかりきってます」
先程の言葉はなんだったのかこんなに早く前言撤回するなんて漢らしくない
ミーシャはライの背中に顔を埋めながら青髪に冷たく答える
苦手な瞳の熱が無くなったことでつい気が緩んでしまったことが今の現状の原因で完全にミーシャの落ち度でもあるのだがソレはソレ、コレはコレである
埋めている背中の持ち主も青髪の発言が気に入らないのか小さな舌打ちが聞こえてきた、好き
喚きながら新たな闘志を燃やしている青髪の肩に父であるカーターは溜息を吐きながら腕を乗せる
「テッド、おまえ今日休みか。そんなに元気有り余ってんなら搬入手伝ってけ」
「は?あ、おい!おっちゃん!!!!」
「そろそろダリオも荷物持って来んだろ。ミーシャ、ニナに俺はもう店に行くつっといてくれ」
「はーい。行ってらっしゃい」
「あぁ、行ってくる」
「待てよおっちゃん!!!俺は今日はミーシャと話そうと!!!」
「もう充分話したろ。おら、行くぞー」
「待てって!!あぁ!ミーシャぁぁぁぁぁぁあああああ」
最初から最後まで近所迷惑な人物である
ミーシャはライの背中から顔を出しカーターに向けて手を振ったつもりが引き摺られていく青髪が何を勘違いしたのか頬を染めて手を振り返してきた
(チッ!)
「チッ」
ミーシャが内心で舌を打てばライも同時に舌打ちしていた
あの変わり身の早さにはミーシャも辟易するためライもそうなのだろう
ミーシャは至極真面目な顔で頷いた
「漢らしくない」
「クソうぜぇ」
大分辛辣な言葉をお互い吐き捨てたがライの声が素晴らしく良い声だったのでミーシャにはなんら問題ない、耳が幸せなだけである
既に隠れたくなる客人はいないがこの体勢が許される時間を逃したくないミーシャはここぞとばかりにライにしがみつき直した
顔を埋め彼の硬く暖かい身体と大好きな香りを甘受する
(この人が好きだ)(幸せ)と胸の内で108回ほど繰り返した時点でライの反応がないことに気付いた
ミーシャがまわしている腕や手に触れないどころかいつものように『離れろ』とも言われない
しがみつくのを許してくれるのは嬉しいがどうかしたのだろうかとミーシャが恐る恐る顔をあげればライは後ろを振り向く姿勢でジッとミーシャを見下ろしていた
ドキッと
鼓動が一つ、大きな音を立てる
髪を短くしたことで僅かに顔を傾けただけでもその御尊顔がよく見える
金の瞳を細め横目で見下ろしてくる姿がとてもとてもとてもかっこいい
ミーシャが頬を染めて大好きな人に見惚れていればその美神は麗しい唇を小さく開いた
「………一生か?」
「え?」
「おまえ、一生俺に構うつもりなのか」
ライの言葉にミーシャは瞳を瞬かせる
何故そんな当たり前のことを聞くのかと思いながらも小声による掠れた美声にまず悶えるしかない
先程の青髪とは音量も声質も雲泥の差である、いや神と比べるのはさすがに無謀か申し訳ない
ライの美声にあわや思考が逸れ始めていたミーシャだったがジッと見つめてくる金の瞳に慌てて返事を返した
「えっと、勿論!こればっかりは例えライが嫌だと言っても譲れないよ」
「…すげぇ執念」
そう言って、ライは息を漏らすように笑った
言葉とは裏腹にライの表情がどこか嬉しそうに見えるのはミーシャの願望だろうか
ミーシャは全身から沸き上がる熱を感じながら
ライにしがみつく腕に力を込めて顔を埋めた
「おら、離せ。さっさと皿洗い済ますぞ」
切り替えが早い
未だ高鳴る鼓動に翻弄されているミーシャに構わずライはぐるっと方向転換をした
その突然の動きに引き摺られ「わわっ」とミーシャは足をもつれさせる
「ふぶっ」
「……何やってんだ」
ライの背中に激突するように鼻を打ってしまったミーシャに対して呆れを滲ませた美声が落とされた
大魔神め
「すごい声だったわね」
ライの先導でミーシャが鼻をさすりながらダイニングに入れば調理場には母であるニナが居た
ニナはライ達がやりかけていた皿洗いを済ませてくれていたようで既に食器類は綺麗に棚にしまわれている
「ごめんね、お母さん。やらせちゃって」
「悪い」
「ふふっいいのよ」
ミーシャとライが申し訳なさそうに謝るのをニナはいつもと変わらない柔らかい笑みで応えた
「カーターはもう店に向かったのかしら」
「うん、ダリオさんがそろそろ来ると思うから先に行ってるってお母さんに言っておいてって。あ、さっきの青髪の人にも手伝ってもらうみたいだよ」
「まぁ、そうなの。……ふふっ」
「?なぁに?」
父からの伝言を伝えれば母は愛用の若草色のエプロンで手を拭きながら突然笑いだした
理由が分からず首を傾げていればライも不思議そうにしている、そんな姿もかっこいい
ニナは不思議そうにしている二人の様子にまた「ふふっ」と笑みをこぼすと柔らかい手でミーシャの頭を撫でながら「良かったわね」と優しい声音を落とした
「え?」
「いつもならあなたもう少し暗い顔しながら何でもないようにしてるけど、今は無理してなさそう。ライくんが傍に居てくれて、良かったわね」
「ッ、…そう、かな」
「ふふっ、辛い役目だけど想ってくれた相手にちゃんと向き合って答えを返すミーシャは私の自慢の娘よ。よく頑張ったわね」
「…っ、」
(……ずるい)
それは反則だ、
よりによってライの前で言わなくてもいいじゃないか
そう頭では不満を述べているのに胸が閊えて声がでなかった
ミーシャは今まで何度も想いを断ってきた
好きでもない相手と付き合うことなんて考えられなかったため断ることに躊躇することも後悔したことも一度もない
けれど断る度に辛そうに歪められる顔や目を釣り上げて怒りをぶつけられることに小さなトゲが刺さったように胸がツキンと痛んだ
けれどそれだけ相手が深く想ってくれているのだからとミーシャは自分の気持ちよりも相手からの想いへの礼儀としてその度に誠実に返してきた
曖昧にせずハッキリと、受け入れられないと
ただ変に己を過信している人たちばかりだったので【自分を選ばないミーシャが悪い】と頭ごなしに責めてくるような言動には毎回ミーシャの心の柔らかい部分が鑢で削られていくようだった
自分は何も悪くなく寧ろ自分なりに誠実に答えたのだからと疲弊した心を鼓舞してきたが
まさか母に気付かれているとは思わなかった
いや、断った日は必ず父か母が近くに居てくれたかもしれない
己の疲弊した心に気付かれたくなくて気付かないフリをしてきただけかもしれない
それなら母だけではなく父にもバレていたのだろうか
……だからさっき、最後までその場に居てくれたのだろうか
(…でも、言い過ぎって言われたな)
父に関しては偶然なのか
いつもミーシャを想ってくれている父がどの意図をもっていたのかわからなくて少し苦笑してしまう
胸にこみあげるものが段々目の裏の熱へと変わり始めた頃
母であるニナは優しくミーシャを抱き締めた
「よしよし、良い子ね」と、
昔から変わらない優しい手に頭を撫でられて瞳から涙がこぼれ始めた途端
ー ぐるん
と、ニナに肩を掴まれ身体を90度まわされてしまった
「へ?」
「ふふっ」
ミーシャが間抜けな声を漏らせばニナの笑いと同時に背中をトンッと強めに押される
母に抱き返そうと広げた腕のまま突然の衝撃に足がもつれ(ッさっきもこんなことあった…‼︎)とミーシャが慌てて足に力を入れようとすれば聴き心地の良い低音で「は?」という大好きな人の声が聞こえた
ー リンッ
「ふぶっ」
「………おい」
またもや鼻を打ってしまったミーシャの上から美声が落とされ肩を大きな手で掴まれる
もしや、ここはとミーシャが涙も忘れて胸をときめかせればニナの楽しそうな笑い声がした
「ふふっ、じゃあ私はそろそろカーター達の手伝いに行ってくるわね。ミーシャ、お昼楽しみにしてるわ。ライくんあとよろしくね」
「おいっ」
「ふふふっ、行ってきまーす」
ニナはそう言うと軽やかな足音を残して部屋から出て行った
そして遠くのほうで扉を閉める音がした
ニナは本当に後はライに任せてそのまま店に行ったようだ
「……」
「……」
なんて良い仕事をしてくれたのか
やはり、母には敵わない
ミーシャは広げていた腕をソッと相手の背中にまわし
愛してやまない桃源郷を甘受することにした




