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「何の形だ?コレ」

「ヒイラギだって。異国の地の植物みたい」



ミーシャが選んだのは黒色と生成り色の二種類

黒色の生地には金糸が生成り色の生地には薄緑色の糸が縫糸と刺繍糸に使われておりそれぞれ別の刺繍が入っている


それを三枚ずつ手に取りライに見せたところライは生成り色のバンダナには蔓のようにぐるっと周りだけ刺繍されていることに気付いた

そして四隅に同色の刺繍糸で刺繍されている見たことがない形に首を傾げている


ミーシャはそんなライの疑問に商品が置いてあった箇所に掲示されていた紹介文を思い出しながら説明していく




「このヒイラギの花言葉が素敵だったの」

「花言葉?」


初めて聞いたのかライはそのまま言葉を繰り返す

そんな彼にミーシャは笑みを深めて説明を続けた



「そう。植物にはね、それぞれ由来や形から模した言葉が当て嵌められたりしてるの。だからその言葉を直接伝える代わりに花を贈ったりもするんだよ」

「まどろっこしくねぇのか、ソレ」


「相手に言いたいけど言えない気持ちを花にのせて贈ることで気持ちを伝えてるんだよ」

「その花言葉つーのは誰でも知ってるもんなのか」

「知らない人のほうが多いと思うよ。だからこそのロマンだよ」

「意味わかんねぇ」



首を傾げて心底不思議そうに言葉を漏らすライにミーシャはクスクス笑い持っていたバンダナのヒイラギの部分を指し示す



「ヒイラギの花言葉はね、『歓迎』と『保護』だって」

「……『保護』?」

「『保護』っていうのは“弱い者を守る”って意味じゃなくて“何か悪いことから守ってくれる”っていう意味みたい」

「………」


一段低くなった美声に加えて黙ってしまったライだがミーシャは気にせずこの刺繍を選んだ意味を伝えた



「薄緑色の刺繍糸でヒイラギが刺繍されてて意味を知った時にコレだ、って思ったんだよね」



未だ何も言わずどこか不穏な雰囲気を醸し出しているライにミーシャは一歩近づきフードの中の顔を覗いた

見えた大好きな人に向けて心からの笑みを浮かべ言葉を続ける



「ライが私を守ってくれるって言ってくれたように私もライを守るからね」




ミーシャがライに言われた時の幸せと悶えを思い出しながら言葉を放ち彼にもその気持ちが伝わればいいとライの返事を待てば


ライは金色の瞳を満月のように丸くした



何度かその瞳を瞬かせ啞然としたようにミーシャを見下ろしていたが突然バッと顔を横に背けてしまうと大きな手でミーシャの顔を鷲掴むように視界を遮った


突然の行動にミーシャは驚いたものの過度な力が込められているわけじゃないため全く痛くはない

その手と視界が遮られる前に見えたライの赤い肌を思い大人しくしていればミーシャの大好きな人の声が小さく落とされた




「………恥ずかしい奴」

「フフッ、ライが守ってくれるって言ってくれて私本当に幸せだったの」


顔に置かれた手をミーシャはそっと両手で包み下ろしてから未だ顔を背けているライに向けて言葉を贈った



「ライが来てくれて本当に嬉しい。私もライを守るからね」


顔を背け手を包み込まれたライは暫く何も言わなかった

ミーシャが包みこんだ手の赤さをそっと指で撫でてみればライの腕がピクッと反応し長い長い溜息を吐かれる



「………おまえには花言葉必要ねぇじゃねぇか」

「そんなことないよ。コレを贈ることでより伝わるでしょ?」

「……くっそタチわりぃな」

「フフッ」



ライの暴言はミーシャにとって傷つく言葉ではない

顔を背けフードで隠し美声を低くしていてもミーシャが包んだ手を払わずミーシャの贈った言葉を拒絶しないライにはちゃんと伝わっているとわかるからだ



乱暴な言葉を放ってもニコニコしているミーシャに居た堪れなくなったのかライは溜息を一つ吐くと顔をもう一つのバンダナの方へと向けた



「それは?」

「え?」

「それも同じの三枚だろ。ンな気に入ったのか」



ライが顎で示した先を追えば一旦棚に置いておいたバンダナに視線が止まる


もう一種類のほうは黒い生地に金糸で縫われていて広げてみた時に右下の片隅に小さく刺繍がされているものだ

月をバックに座って月を眺めている猫のシルエットは全て金糸の刺繍糸で刺繍されている


ソレを手に取ったミーシャは嬉しそうに刺繍された部分をライに見えるように指し示した



「この月がライの瞳みたいだなって」

「は?」

「フードの中のライの瞳が暗い中で輝く月に見えたの」



ミーシャの言葉に身体を固めたライに気付かずニコニコしながら刺繍されている部分をソッと撫でていれば息が抜けるような笑いがミーシャの耳に届いた


何故笑われたのかわからずミーシャが首を傾げてライを見上げようとすると途中で節くれ立った手に刺繍の箇所を指差される

そのあとフードの中から美声に柔らかい声音を含ませた音が落とされた



「じゃあ、この猫はミィか」

「え、」

「おまえ猫っぽいもんな。目とか懐くとことか、俺の目覗き込んでくるとことか」



喉の奥で笑うように「ククッ」と声を漏らすライにミーシャは何も返せない



全身に湧き上がる熱とうるさいほどの鼓動を感じながら


とりあえず、





このバンダナは自分用にも購入しようと心に誓った












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