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「もういーだろ」
「……時って残酷だよね」
「わけわかんねぇこと言ってねぇで離せ」
未だ幸せが詰め込まれているライの懐を甘受していたミーシャにとって時間の流れほど残酷なものはなかった
そろそろ買い出しに行かなければ本格的に時間がなくなってしまう
離れ難い想いを必死に抑え込みミーシャは最後の懇願をしてみる
「最後にギュってして?」
「はぁ?」
「そしたら離れる」
大変諦めが悪い
そんなミーシャの眉を下げた必死の懇願顔にライは眉を顰める力を強め容赦なく舌を打った
流石のミーシャもコレにはダメか…と諦め、まわしていた腕の力を緩める
掌一枚分の距離をあけミーシャが名残惜しげにライの胸板へ手を置きつつ一歩下がればグイッと強い力で頭を胸に押さえつけられた
ミーシャの背中にも痛いほどの力が加わる
「え、え?」
「てめぇ…そのツラわざとか」
「え⁉︎」
ミーシャの耳元で美声が唸るように落とされる
腰に響く程の重低音に立っていられなくなりそうだ
「ッざけんなよ、このクソ女」
「えぇ⁉︎ライ⁈」
「るせぇ。おら、もういーだろ」
途端にその腕が離される
一瞬の出来事にミーシャは結局足から力が抜けてしまい崩れ落ちそうなところを慌てたライに支えられた
「おい⁉︎」
「う、うぅ~ッ」
「何してんだよ…」
「いやっ完全にライのせいだよ⁉︎」
「あぁ⁉︎」
「ライがギュってするから立てない‼︎」
「ッ!ってめぇが言ったんだろうが!!!」
狭い建物の隙間からは暫く二人の言い争う声が響いていた
「いらっしゃーあ!ミーシャ!」
「こんにちはーエイミー」
「いらっしゃい!引越しはもう落ち着いたの?」
「うん、もう少しで改装の方も終わるからお店も来週には開けそう」
「本当⁉︎良かったー!ミーシャんちのパンが無いとひもじくてひもじくて」
「大袈裟!」
服屋の扉を開ければ見慣れた笑顔が迎えてくれる
高い位置で結ってある赤毛混じりの茶色い髪を揺らしながらわざとらしく嘆く友人にミーシャも自然と笑みが浮かんだ
彼女の魅力の一つであるそばかすが笑い顔を更に親しみやすくさせる
ドングリのような丸い瞳を可愛らしくクリクリさせながらもミーシャに負けず劣らず歯に絹着せぬ発言をする彼女、エイミーはミーシャの大好きな友人の一人だ
因みに昨日ライに好意を説明する際にミーシャが用いた持論は彼女のものである
「それで?いい加減突っ込んでもいいのかしら」
「何を?」
「何を?じゃないわよ!その腕を組んでる人は誰よ」
足の力が抜けて立てないのをいいことにミーシャはライに抱っこを要求したのだが即却下されてしまったため腕にしがみつくことを許してもらっていた、もちろん足に力が戻ってもしがみ続けている
ご機嫌なミーシャに対するライはウンザリとした疲れた雰囲気が漂っていた、きっとフードの中の顔は赤く染まりながらも疲れ切っているのだろう
しかしご機嫌なミーシャはやはりソコを配慮することができない
エイミーからの質問に頬を染めて高らかに友に報告した
「紹介するね、エイミー‼︎私の運命の人、ライだよ!!!」
「は?」
「ハァ」
エイミーとライの似てるようで全く似ていない声が重なった瞬間である
状況を把握できないエイミーと把握しきっているうえで疲労を理由に反抗しないライ
二人を置き去りにしてミーシャの暴走特急が火を吹いた
「あのねあのね!昨日も私、買い出しに出てたんだけどその時に偶然ライと会ったの‼︎ライったら襲ってくる男たちを簡単に気絶させちゃうほど強くって!気になって声かけたらもうほんっっっっっっっとにかっこよくっっって!!!私史上最大最上級の奇跡に巡り会ったってその時気付いたの!!!!!しかもライったら見た目だけじゃなくて中身までほんっっっっっっっっっっとぉーーーーに!!かっっこよくッッッッッて!!!!!!私が何回も「黙れ」「キャンッ」
暴走特急の額からバチンと良い音がして思わずミーシャが犬のような叫びをあげたことで無事特急は停止した
「~~~ッッ、今までで、一番痛いぃぃぃ」
「イラついたら弾くつったろ」
「え、うそ!怒ったの⁉︎ごめんね、ライ‼︎」
「………いーから、おまえちょっと黙っとけ」
痛みで滲んだ涙を薄緑色に浮かべながら慌てて謝罪するミーシャにライは大きな溜息を吐く
そんな二人のイチャつきに幼い頃からのミーシャの友であるエイミーはどんぐり眼をこれでもかと見開き口を大きくあけ唖然とすることしかできなかった
やっと友人一人出せて作者万々歳!
まさかの50話が目前でこんなに長くなると思ってなかったためサブタイトルちゃんと考えたほうがいいのか悩み中…。
ブクマ評価感想、本当に嬉しいです!
ありがとうございます‼︎
ミーシャがすぐに悶えるため中々話が進まないなかお付き合いいただいて本当に皆さまお優しい…泣
今後も楽しんでいただけたら幸いです。
本当に本当にありがとうございます!




